煮る、焼く、蒸す、揚げる、さまざまな料理に使われるじゃがいもは、家庭料理の定番野菜です。デンプンを主成分としているため、穀物として摂取する国もあります。
しかしサツマイモと比較すると、カロリーは低く、加熱しても壊れにくいビタミンCや、妊娠中には特に重要な葉酸、血圧を下げる効果があるカリウムを多く含んでいます。
機能性と使い勝手を併せ持つ、ジャガイモを、自分で栽培してみませんか?支柱やマルチも必要なし、初心者にぴったりの野菜です。
掘り出したばかりのジャガイモは、水洗いでするりと皮が剥けます。料理がいっそう楽しくなりそうですね!
Contents
ジャガイモの育成条件と栽培時期
- [寒冷地]植え付け4月~5月→収穫期7月後半から9月半ば
- [中間地]春作:植え付け2月後半~3月半ば→収穫期6月初旬から7月末
- [中間地]秋作:8月末~9月初旬→収穫期11月後半から12月半ば
- [暖地]春作:植え付け2月上旬~3月上旬→収穫期5月初旬から6月末
- [暖地]秋作:9月初旬→収穫期12月
- 茎葉の生育適温15℃~20℃
- イモの肥大適温15℃~18℃
ジャガイモの原産地は、南米のアンデス山脈です。標高3000m以上の環境に適応していたため、冷涼な気候を好みます。アンデスのような、昼夜の気温差が大きく、降雨量の少ない地域ほど収量がアップする傾向にあるようです。
生育開始温度(地温)は10℃と低く、平均温度が10℃になれば植え付け適期です。春作の場合、収穫期と梅雨が重なります。病気が発生する前に収穫できるよう早めの植え付けを心掛けましょう。
若い芽が霜に当たると黒く萎れてしまうことがありますが、1~2回程度の霜ならば、あまりその後の生育に影響しません。また20℃を越えるような高温の状況では茎や葉の生長にばかりエネルギーが使われ、徒長します。
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ジャガイモの品種
ジャガイモは品種によって、味が異なるため、品種ごとに紹介します。
キタアカリ
ビタミンCが豊富で、多収が見込める品種です。イモの表皮はよく見かける男爵イモよりもざらつきがあります。
煮あがりが早く、肉質はやや粉質で、煮崩れしやすいです。レンジで加熱すると香りを残すことができ、ポテトサラダに最適です。
メークイン
食用品種のジャガイモの中で、もっとも緑化しやすい品種です。
イモの形は、下が膨れた楕円形です。縦に成長すると地表に露出することもあり、こまめに土寄せを行います。表皮がすべすべで、芽の窪みが浅く皮は剥きやすいです。
男爵と比較し、煮崩れしにくい粘質が特徴です。じっくり煮込むおでんなどに向きます。
インカのめざめ
原産地のアンデス地方で、高値で取引されている小粒種を日本でも栽培できるように品種改良されました。地上部の生育はほかの品種に比べ全体的に小ぶりで茎も細く、極早生のため収穫期は他の品種より早めです。
イモは1個当たり平均50ℊ程度とごく小さいですが、だいだい色に近い濃い黄の肉色で、風味は栗に似ています。煮物や、甘みを生かしたスイーツに向きます。
【種芋 インカの目覚め】
*季節により、売り切れ、もしくは入荷準備中の場合もあります。
タネイモを準備しよう
植え付けの約1月前から日光に当て、発芽を促します。白くて小さい芽も日を浴びることで緑化します。
タネイモをカットする場合は、植え付け日前日に。断面を乾かしてから植えます。
春作の場合
Sサイズ(~50ℊ)そのまま植える
Mサイズ(50ℊ~150ℊ)なら縦半分
Lサイズ(150ℊ~250ℊ)以上の場合は三等分も可能
秋作の場合
断面から腐る可能性があるため、カット厳禁。
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タネイモを買う理由
スーパーで買ったジャガイモに芽が!という経験はありませんか?
つい植えたくなる気持ちもわかります。しかしお待ちください。せっかく耕した畑にウィルスを持ち込んでしまう可能性があります。ジャガイモのウィルスは人体には無害なので、食用ジャガイモのなかには、ウィルスに感染したジャガイモも混ざっています。
一方タネイモは、栽培中に何度もウィルス検査を受け、食用には使われない農薬を使用し、タネとなるべくして管理されています。せっかく植えたのに、病気で……と、がっかりしないよう、きちんとタネイモを用意しましょう。
土づくり-植え付け約2週間前-
参考動画:Tomi農園2017年度じゃがいも栽培
ジャガイモは弱酸性の土壌を好みます。日本の土は雨によってやや酸性になる傾向があり、とくに計測の必要はありません。土づくりでは苦土石灰施肥を控え、アルカリ性に傾かないよう気をつけます。
またジャガイモは連作すると連作障害が起きることがあります。前年に、トマトやピーマンなどを含むナス科を植えた場所も避けましょう。
元肥は堆肥2㎏/㎡、油粕200ℊ/㎡を散布し、よく耕します。土の状況にもよりますが、畝は立てないほうがよいでしょう。理由は栽培管理にて説明いたします。
ジャガイモの栽培管理
植え付け
畝にしたい場所に、深さ約10センチの溝をまっすぐ掘ります。タネイモの間隔を30cm~40cm程度空け、溝の底にタネイモの断面を下にして置いていきます。タネイモの間に油粕をひと掴みずつ施肥していきます。
植える間隔が狭いと、成長した葉や芋がぶつかることになるため、注意しましょう。掘り起こした土で埋め戻して、植え付け終了です。
土寄せ
畝を作らないことを勧めた理由は、浅く植えて成長に合わせて土をかぶせるためです。ジャガイモのイモ部分は、根ではなく、肥大化した茎(根茎)です。茎から地中に広がるへその緒(スポロン)の先端で育ちます。
よってタネイモよりも上部にジャガイモが形成されます。深い溝にタネイモを埋めてしまうと、地上茎の発達が遅れ、ひいては収穫に影響が及ぶことも。また肥大化したジャガイモが日光に当たると緑化してしまいます。生育後期には根元周辺に注意が必要です。
土寄せには、中耕の効果もあります。土寄せ前にはリン酸主体の肥料を少量施しましょう。この際、葉に肥料が触れないように気をつけます。二回目の土寄せでは富士山型の畝になるよう高さ30センチを目安にします。
芽掻き
一個のタネイモから数本の芽が伸びてきます。芽が多いほどイモの数は多くなりますが、イモは小粒になります。
芽の葉に勢いがあり、茎が太いものを1~2本残しましょう。
花摘み
温暖な地域では、伸びた茎の頂点に薄紫や白色の花をつけることがあります。放置すると小ぶりのトマトのような実がつくのですが、残念ながら食べられません。
花を摘んだ傷口から病気に感染する恐れもありますが、ジャガイモの体力が開花や結実に奪われてしまうため、花を摘むという方もいらっしゃいます。
探り掘り
栽培カレンダーの収穫期が近づいたら、探り掘りをしてみましょう。
畝の側面から手でやさしく土を崩し、タネイモより少し上についている一番大きなジャガイモを収穫します。そうすることで、まだ小さいジャガイモへも栄養がいきわたるようになります。
また本格的な収穫の前に新ジャガを楽しむことができ、一石二鳥です。
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ジャガイモの病気
そうか病
ジャガイモの表面にぼそぼそしたかさぶたのような病斑ができます。
石灰や鶏糞などを施肥した畑で発生しやすく、治療法はありません。
軟腐病
カビによって感染し、株の地際が腐敗します。高温多湿の状態が長引くと発生しやすくなります。
発症した株は畑の外で処分し、感染拡大を防ぎます。
黒あざ病
主な感染経路はタネイモと考えられ、新芽が伸長する初期段階から発生する可能性があります。
茎やイモに黒や褐色の病斑が現れます。葉が黄色くなり、葉の先端が巻きあがって、黒っぽいクズイモや緑化したイモが増えます。
じゃがいもの収穫時期
葉が黄色くなり、倒伏し始めると収穫適期です。
ジャガイモを傷つけないように、畝の外側からスコップを入れ、株を持ち上げつつ、掘り起こしましょう。
じゃがいもの貯蔵方法
収穫後のジャガイモは、日陰で半日ほど乾かしましょう。調理の直前まで、水洗いをしてはいけません。
カゴや採集用コンテナなどに入れ、暗くて涼しい場所で保管します。貯蔵に段ボールを使用する場合は、詰め過ぎないようにし、側面に穴を空けて通気を改善します。
収穫後まもないジャガイモは呼吸が盛んなため、呼吸熱を冷ます必要があります。とくに保管場所の風通しと日照には気をつけましょう。
ジャガイモの皮が緑色になってしまったら
品種にもよりますが、収穫後約2か月間はジャガイモの休眠期です。発芽に適した条件下であっても芽は出ません。
しかし日に当たると、皮が緑色に変色ます。緑色の部分にはソラニンやチャコニンというナス科特有の天然毒素が多く含まれており、苦みが出ます。ソラニンやチャコニンの主な中毒症状は吐き気、おう吐、下痢、頭痛、めまいなどです。
緑色の変色部分がない、未熟な小さいジャガイモをたくさん摂取した場合も注意が必要です。「小さいから皮ごと食べられる、新鮮だから大丈夫」と考えず、きちんと皮をむくように心掛けてください。
またジャガイモを加熱してもソラニンやチャコニンの量を確実に減らすことはできません。
舌が痺れるような苦みを感じたら、食べないようにしましょう。
ジャガイモは熟成させると甘くなる!
冷蔵庫のチルド室に空きがあれば、ぜひ低温熟成をお試しください。
湿度を保ち0℃状態を維持すると、ひと月程度でジャガイモの可溶性糖成分が増加します。食感がややねっとりし、まろやかな甘みが生まれます。水分が直接ジャガイモに触れないよう、新聞紙で包み、その上から濡れタオルを被せることがポイントです。
うっかり乾燥させないよう、3日に1回はタオルをチェックしてみてくださいね!
おわりに -ジャガイモは観賞用だった-
今回はジャガイモの栽培についてお話ししましたが、いかがでしたか?
ジャガイモはトマトやピーマンに並ぶナス科の一員で、星型に開く花弁はナスに良く似ていますが、フランス女王マリーアントワネットはその美しさに感銘を受け、胸飾りにしたという話が残されています。
菜園の隅に一株、花を残して、楽しんでみてはいかがでしょうか?