はっさくは1860年頃(江戸時代)に広島県因島市の恵日山浄土寺の境内で偶然発見された柑橘です。ブンタンの雑種と考えられていますが、親品種ははっきりと判明していません。
八朔(はっさく)は旧暦の8月1日のことを指し、発見されたお寺の住職である小江恵徳が「八朔の頃に食べることができる」と発言したことから、この名前が付いたとされています。
少なめの果樹と肉厚のある食感が特徴、程良い甘さと酸味が爽やかな果物です。初心者にとって育てやすく、鉢植えでの栽培も可能です。
今回は、「はっさく」の栽培方法についてお話したいと思います。
Contents
はっさくの栽培時期と育成条件
日当たり:日なた
育成適温:15~16℃以上(平均気温)
冬期の最低気温-5℃まで
1・2月の月平均気温5℃以上
用途:地植え・鉢植え
耐寒性:やや弱い 耐暑性:強
樹高:1.5m以上
収穫期:12月下旬~6月中旬
受粉樹:必要(不要な品種もある)
はっさくの栽培適地
はっさくは、地植えでも鉢植えでも育てることができます。樹勢が強い果樹な為、大きく育ちます。地植えで栽培する時は、ある程度広さを確保できる場所を選ぶようにしましょう。
また、1本だけでも実はなりますが、自家結実性が弱いので近くにアマナツやナツミカンを植えると結実しやすく、甘くて大きな実を収穫することができます。
はっさくは、関東地方南部より西の暖かい地域が栽培に適しています。植え付ける場所は南向きの日光が良くあたり、冬の冷風に当たらないような場所を選びましょう。
はっさくの土作り
特に土を選ぶことはありませんが、水はけと保水性の良い環境を好みます。
土を自作する時は、赤玉土と腐葉土を7:3位の割合で混ぜて作りましょう。
はっさくの植え付け・植え替え
冬の寒さが過ぎ、暖かさが増してきた3月下旬から4月上旬が適期です。
苗木を選ぶ時の注意点は次の通りです。
- 病気や害虫がついていない
- 育成状態が良好で、芽と芽の間(節目)が詰まっている
- 細かい根がたくさん生えている
良い苗木を購入したら、早速植え付けを行いましょう。
地植えの場合
- 深さ、直径共に50㎝の穴を掘る。
- 掘り上げた土の半分に、腐葉土、堆肥、鶏糞を混ぜ穴に戻す
- 残りの土を穴に戻し、苗を植える
この時、苗が深植えにならないように気をつけてください。植樹した苗は、50~60㎝位の高さで切り返しましょう。
また、苗木の横に支柱を立てて、転倒を防止します。植え付けが終了したら、充分に水をあたえるようにします。
鉢植えの場合
基本的に、地植えの場合と同じです。苗木よりも一回り大きな鉢を用意して植え付けを行い、切り返しは鉢の高さと同じ高さで行うようにします。
成長度合いにもよりますが、鉢植えの場合は植え替えが必要です。病害虫や根詰まりを防ぐため、様子を見ながら2~3年に1回位の割合で行ってください。
適正気温に満たない環境の場合は、室内で栽培するようにしましょう。
スポンサーリンク
はっさくの水やり
地植えの場合
基本的には水やりの必要はありません。
夏の強い日差しと雨が降らない状態が続いた時は、水をあたえます。
鉢植えの場合
鉢植えの場合は、適宜水やりが必要になりますので、注意が必要です。
表面の土が乾き白くなってきたら、鉢底から水がでるくらい充分に水分をあたえます。
はっさくの受粉
春に植え付けたはっさくの苗木に白い花が咲き出すのは5月頃です。
1本だけでも実を付けることは可能ですが、自家結実性が弱いのであまり大きな実は期待できません。
はっさくの近くにアマナツやナツミカンを植えることで、甘さのある立派な実が付くようになります。また、人口受粉することで、その確実性が高まります。
はっさくの肥料
地植えの場合
3月と10月中旬の2回、有機肥料や速効性の化成肥料をあたえます。
根張りが強くなる・樹勢の回復・花芽や新芽の増加・果実の着果や結実の促進に効果的です。
鉢植えの場合
3月・6月・10月中旬の3回肥料を施します。
与える肥料やその効果は地植えと同様です。
はっさくの栽培管理
摘果
摘果とは、不要な実を取り除くことです。摘果によって、栄養分の行き渡った良い実を育てることができます。
はっさくの場合は、7月から8月に行います。1か所に実が集中しているところがあれば、小さい実、傷がついている実を間引くようにしましょう。80~100枚の葉に1つの実が丁度良い割合とされています。
剪定
剪定は3月に行います。はっさくの枝は春から秋にかけて伸び続け、前の年に実の付いた枝に花芽がつかないのが特徴です。
剪定時期がきたら、風通しを良くするために、伸びすぎた枝や混み合っている枝を切り落としましょう。はっさくの剪定はあくまでも、間引き剪定が主体ですので強い剪定は避けるようにしてください。
また、鉢植えの場合は樹高が鉢の高さの3倍くらいまで成長したら、芯を止めるようにします。仕立ては「半円形仕立て」か「主幹型仕立て」がよいでしょう。
スポンサーリンク
はっさくに発生しやすい害虫と害虫病
そうか病
はっさくの実にあばた状の病斑ができることが特徴です。柑橘類の他にも、ジャガイモなどにも発生する病気です。
はっさく(柑橘類)の病原菌は糸状菌。この菌は雨の多い季節や梅雨の時期に、感染が広がり発生しやすくなります。
そうか病を発病した果樹は、越冬病葉が次の年の発生の原因になるので、発病した場所の葉は取り除くようにしましょう。薬剤を使って予防することもできます。
かいよう病
カンキツかいよう病菌が原因となり発生する病です。
葉、枝、果実に褐色の斑点ができるもので、雨などによって感染が拡大します。感染力が高くなると、枝枯れや落葉、樹勢がなくなるなどの症状がでます。
果実に傷口をつけて感染を拡大させるミカンハリモクガ(害虫)の防虫対策や、防風対策を行うことが予防策になります。
エカキムシ
エカキムシは、ハモグリガやハモグリバエの幼虫を指します。葉の中に虫が入ることにより、葉肉が食害をうけ、その部分は表面から見ると白い跡となって表れます。
症状が進むと葉が枯れる、落葉する、美観が損なわれるなどの弊害が出てきます。
エカキムシは、食害をした葉の先端に潜んでいるので、その場所を押しつぶして駆除します。他にも、浸透移行性剤が効果を発揮します。
はっさくの収穫
はっさくは、12月中旬から1月上旬頃になると収穫することができます。
収穫時期を遅らせることで糖度を増やすことができますが、比較的寒い地域で栽培をしている場合は、寒害を避ける為12月のうちに収穫を済ませておくようにしましょう。
収穫したはっさくは、5℃くらいの場所であれば、2ヶ月間貯蔵しておくことが可能です。貯蔵時間を設けることで酸味が弱くなり、美味しく食べることができます。
おわりに
はっさくの栽培方法をご紹介しました。
はっさくの木は庭に植えることで「代々にわたって家が栄える」と言われていて、縁起の良い木とされています。これは、「代々」が柑橘類の実の色「橙」にちなんでいると考えられています。
常緑樹なので緑も美しく、白い花からも良い香りが漂い、育てやすい果樹です。食べる時は、皮がとても厚いので、手で向くのは少し困難です。果肉離れは良いので、皮に包丁などで切れ目を入れてから皮をむき、美味しく頂きましょう。
また、果肉だけでなく皮もピールや皮ジャムなどに活用することができます。見た目も美しく、ビタミンCやクエン酸、カリウムなど栄養満点のはっさくを育ててみませんか?