サツマイモは1600年ごろ中国から琉球へ伝来、そののち薩摩に伝わったことでサツマイモと呼ばれるようになりました。
やせた土でも収穫できることから、飢饉に備えるための救荒作物として日本中に栽培が広まりました。
今回は、そんなサツマイモの種まき〜収穫までの育て方、栽培時期や病気・害虫の対策についてご紹介していこうと思います。
Contents
サツマイモの品種
サツマイモは、はじめての方でもまず失敗なく収穫できる野菜です。
煮物、てんぷら、お菓子、干し芋など、さまざまな調理法がありますが、それぞれに向く品種が開発されてきました。
いろんな種類を少しずつ植えて、用途に合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
スポンサーリンク
ベニアズマ
関東で人気の甘みが強い品種です。果肉の色は黄色く、粉質で繊維質が少ないので、蒸したり焼いたりするとほくほくしておいしいです。
イモの肥大性はよいので、早くて9月から収穫することもできます。しかし貯蔵性が低いため、翌年2月ごろまでには食べきるようにしましょう。
高系14号
貯蔵性が高く、中部地方から西側で人気の品種です。苗は「鳴門金時」「土佐紅」「紅さつま」「五郎島金時」など、栽培地域の名前をつけられ出回っています。
生の果肉は淡いクリーム色をしていますが、熱を加えると黄色くホクホクした食感の果肉に変化します。デンプンが糖に変わる熟成後でないと甘みは期待できません。冬まで楽しみに待ちましょう。
黄金千貫
皮も果肉も白っぽい品種です。九州は鹿児島などでよく嗜まれる芋焼酎の原料として、栽培されてきました。
果肉の舌触りはさらっとした粉質が強く、実が崩れやすいため焼き芋には不向きかもしれません。近年ではイモケンピに使用されるなど、人気が高まっています。
安納いも
種子島特産のとても甘い品種です。水分が多く、粘質性が高いことから、ほかにはないねっとりした感が楽しめます。
じっくりと焼くことで糖度は40度前後にも達することから、人気に火がつきました。
種子島の気候や土壌で生産されたものと比べ、糖度は落ちるかもしれませんが、苗の流通が行われています。
サツマイモの栽培期間
お住まいの地域や品種によって多少の幅はあるものの、路地植えでの作型は平均してほぼ同じです。
- 植え付け期:4月~6月半ば
とても霜に弱く、平均気温は18℃以上が生育適温です - 収穫期:8月〜11月半ば
植え付け後120~140日が目安です。探り掘りしてイモのサイズを確認しましょう - 貯蔵期間:10月~翌年
イモは寒さに弱く、冬期の貯蔵では10℃以下にならないよう管理が必要です
サツマイモの栽培管理
サツマイモの輪作利用と土づくり
サツマイモは土壌病害虫が少なく連作障害が起こりにくい作物です。よってアブラナ科の春の収穫後、もしくはタマネギなどと輪作すると、よいでしょう。また昨年ナス科を植えた場所など、連作障害があって夏場に活かせない場所にも有効です。
サツマイモは吸肥力が強く、やせた土地でもよく育ちます。施肥は植物主体の完熟堆肥を使用します。のちに説明いたしますが、『つるぼけ』防止のためにチッソ成分を避け、リン酸を多く含む米ぬかやカリ分の多い草木灰を施肥し、よく耕して土壌と混和させます。
化成肥料を与える場合はほかの作物の1/5を目安にし、前作の追肥等で肥効が残っている場合は、元肥を減らす必要があります。土壌酸度の適正も広く、ph5~7で生育可能なため、過度な石灰の施用は控えましょう。
畝作り
畝の高さは20センチから30センチを目安に、畝幅は80センチ~90センチとします。
黒いマルチで畝を覆うと、定植後の発根に高い効果があります。
つるが繁茂すると雑草が生えることはあまりありません。
植え付け方法
サツマイモの苗は4月下旬ごろからホームセンターや種苗店で販売されます。茎がしなやかで、葉の色が濃い緑色をしている新鮮な苗を選びます。
葉が少し萎れていても大丈夫ですが、下葉が黄化していたり、茎の先端が腐りかけたりしているものは避けましょう。
植え付けまで苗を保存する場合は、水を張ったバケツに苗の下側を浸し、日陰で管理します。植え付け方法は大きく分けて3種類あり、それぞれに収穫できるサツマイモの特徴が異なります。
- 水平植え:大きい苗を畝に対し水平に這わせるように植える方法。イモ数が多くなる。
- 斜め植え:畝に対して斜めに突き刺すように植える方法。小さい苗に向き、活着しやすい。
- 垂直植え:垂直に突き立てる方法で、イモ数は少ないものの大きく育ちます。
ツルボケとは
ツルだけが生長してイモや実のつきが悪くなることをツルボケといいます。ツルボケの主な原因は、窒素肥料の過多によるものです。
生育時期に曇天や雨天が続き日照不足になったり、畑の水はけが悪かったり、前作の肥料が多く残りすぎていても、ツルボケしてしまいます。
ツル返しとは
7月半ばになるとツルの生育が旺盛になり、四方に繁茂します。その伸びたツルの節から出る根を不定根といいます。不定根は稀にイモをつけることがありますが、ひょろひょろと細く、食用には不向きです。
また不定根から養分を吸収し、さらに葉を茂らせて徒長する可能性もあるため、茂りすぎたツルは持ち上げて、畝の反対側へ倒すことで根を切ります。
あらかじめマルチを張っておくと不定根を防ぐことはできますが、畝からはみ出すことも考慮し、気を付けましょう。
サツマイモの花は悲鳴かも?
サツマイモはヒルガオ科の多年草で、花は小ぶりの朝顔に似ており、中心に向かってピンク色が濃い花弁をしています。
開花の例は少ないようですが、サツマイモの根に障害が出た場合は花を咲かせることがあるようです。葉茎に異常がないか確認し、花の咲いた株を掘り起こしてみましょう。
スポンサーリンク
サツマイモの害虫
ネコブセンチュウ
サツマイモのイモ内部に寄生します。
表面にくさび型の亀裂ができ、果肉に褐色斑点が現れます。活性化する時期と収穫期が重なっています。
ハスモンヨトウ
8月〜9月の葉が繁茂する時期に、幼虫が葉を食害し、葉のところどころに穴が空きます。
少々齧られても、サツマイモの肥大には影響がありませんが、地面が見えるほど葉がなくなるようであれば幼虫を捕殺します。
タバココナジラミ
6月~7月の梅雨時期に発生しやすく、幼虫・成虫共にサツマイモの汁を吸います。タバココナジラミが寄生している葉は、白い粒子が付着しているように見えます。
また排泄物がすす病を媒介するため、付着している葉が枯れかけていたら発症の可能性があるため、畑の外で処分しましょう。
ツルを食べる方法と収穫
若い茎とツルの先端部分が食べられます。皮が硬い場合は葉の付け根を折り、下に引いて皮を剥き下茹でします。
つくだ煮や炒め物、てんぷらなどにしてもおいしいでしょう。サツマイモのツルは古くから食べられてきましたが、最近ではツル用の品種も開発されています。
サツマイモの収穫では、まずツルをまくり上げて株元を鎌かハサミで切りとります。ツルをすべて取り去ってから、掘るのですが、このとき鍬やスコップを使用するとサツマイモの傷めてしまうので、なるべくなら手で掘り出しましょう。掘り出したら株元とイモの頭部を切り離して保管します。
おわりに-掃除屋サツマイモ –
今回はサツマイモの栽培についてお話いたしました。
サツマイモには加熱しても損なわれにくいビタミンCが豊富にあり、食物繊維と不消化性炭水化物も多く含まれています。これにより腸を刺激して便秘の改善に寄与します。
また高い吸肥力によって土壌に残った肥料分も吸い上げ、土をリセットすることから、二重の意味でも、クリーンアップできる作物と言って過言ではないでしょう。