春に植える花

オンシジューム(オンシジウム)の育て方!栽培時期や育成条件・病害虫の対策など

オンシジューム(オンシジウム)の育て方!栽培時期や育成条件・病害虫の対策など

フラワーアレンジメントなどで、その鮮やかな黄色の花色と可憐な形状、安定した通年流通と、扱い方によっては慶弔いずれの場でも使える事から重宝されている「オンシジューム」は、中南米を中心に分布するラン科スズメラン属(オンキディウム属)の常緑多年草です。

なお、「オンシジューム」「オンシジウム」「オンシディウム」などは、「Oncidium」の英語風の読み方に従った園芸上の流通名で、和名では「スズメラン(雀蘭)」となり、スズメが乱舞してる姿を思わせる事から「ムレスズメラン(群雀蘭)」の別名もあります。

今回は、そんなオンシジュームの育て方についてご紹介していきたいと思います。

オンシジュームについて

オンシジュームについて

オンキディウム属は、約400種の原種からなる大属で、また、登録されている物だけでも1000種以上の交配種があり、切り花用や趣味の栽培用の洋ランとして幅広く親しまれています。原種のほとんどは、扁平な卵形の瘤みたいな「バルブ(偽球茎)」から出した根で樹上に着生します。そのバルブから葉や花茎が直接出る構造になっています。

冒頭で「黄色の花色」と記しましたが、それはあくまでも多く流通する切り花の話で、他に茶色、赤色、ピンク、白色などの花色の品種も存在し、また、花のサイズも切り花で見栄えがする物から鉢花として楽しむ微小な物までバリエーションに富んでいます。

さらに、切り花としては扱える場面が限られる事もあって大量には流通していませんが、芳香のある品種も存在します。

なお、安定した通年流通に関しても、温室栽培などによる物や台湾などからの輸入による切り花レベルの話とお考え下さい。通常の栽培による花期は、春〜夏咲き秋〜冬咲きとなります。



オンシジュームの一般栽培向けの品種

一般向けの栽培用に広く出回っている代表的な品種は、「オンシジューム アロハ・イワナガ」と「オンシジューム トゥインクル」なので、その辺りを念頭にまとめて行きたいと思います。

オンシジューム アロハ・イワナガ


【オンシジュームの苗】

ハワイ在住の日系アメリカ人イワナガ氏によって作出された交配種で、草丈は60cm前後、60cm程度の花茎を立ち上げ、1本の花茎に径2.5cm程度の黄花を50〜80個つける多花性の品種で、適切に管理すれば2ヶ月程度は花持ちします。

なお、巧く育てれば、最高開花時には1花茎あたり約300個なんて事もあるそうです。主に秋咲きの品種です。

オンシジューム トゥインクル


【オンシジューム トゥインクルの苗】

芳香がある小型品種で花色も黄色系、白色系、赤色系など様々で、草丈は20〜40cm程度、20cm程度の花茎に径1cm程度の小さな花をたくさん咲かせます

こちらは寄せ植えにしても面白い冬咲き品種です。

オンシジュームの栽培時期と育成条件

オンシジュームの栽培時期と育成条件

 

オンシジュームの育成条件
  • 日当たり:半日陰
  • 土壌酸度:水ゴケを使用します
  • 開花時期:品種により異なります

流通形態

3号鉢〜の鉢植えで流通しています。「オンシジューム アロハ・イワナガ」の開花株の場合は、「◯本立」と株の数で販売されているので、それに合わせて鉢のサイズが変わります。

価格の方も千数百円の花無しの3号鉢から、気合の入った贈答用の3万数千円の10本立(開店祝いなどで飾るアレのオンシジューム版です)までと色々です。

通常入手して1〜2年は、植え替えしなくても大丈夫なので(植え込み材料が傷んでいるなどの場合を除きます)、そのまま楽しみながら管理の方法を研究すると良いでしょう。

植えつけ場所の準備

一般的な植物栽培のバランスの物差しで考えて、「これから株が成長するとしたら少し小さ過ぎるんじゃないかな?」と思うサイズの鉢を選択するのがコツです。

具体的には、そのまま植え替える場合には1回り程度サイズの大きい鉢に、株分けをする場合には現在と同程度のサイズの鉢を使用します。

前記した通り、オンシジュームは着生植物なので、根が常時過湿にさらされる環境を嫌います。潅水後に吸収し切れる程度の水ゴケが入る程度の鉢がちょうど良いサイズとなるわけです。

鉢の材質も、通気の良い素焼き鉢が良いでしょう。開花時に室内で鑑賞する際に鉢の見栄えが気になるならば、鉢カバーを用いるなどして対応すると良いでしょう。

植えつけ・植え替え

4〜5月頃に作業を行います。ただし、根や植え込み材料が傷みを発見したり、鉢を割ってしまった場合などは、10℃以上の最低気温が確保できるのであれば、そのまま放置したり適当な鉢に移動させたりするよりも、季節を問わず新しい水ゴケを使って植え替えた方が良いでしょう。

一般的にお手頃価格の品は、プラスチック鉢とバークチップの組み合わせである事が多いですが、これは生産コストのカットと流通時の管理などを容易にするためなので、植え替える際に同じ仕上げにする必要は全くありません。むしろ、素焼き鉢と水ゴケの組み合わせの方が最良の選択となります。

栽培を進める中で、前記した「バルブ(偽球茎)」が増えていくわけです。鉢の中が、混み合い過ぎると、通気も悪くなりそれに伴って病気などにもかかりやすくなります。

また、特に「オンシジューム アロハ・イワナガ」は、バルブが上に昇る性質なので、混み合った状態で放置すると発育や開花に悪影響が出てきます。「オンシジューム アロハ・イワナガ」の場合は2〜3バルブ、「オンシジューム トゥインクル」の場合は3〜4バルブを1株とする見当で植え替えます。

植え替えの手順
  1. 古い植木鉢から取り出したら、根を傷めない様に優しくほぐして、傷んだ根や古い植え込み材料を取り除き、無理せず分け易い箇所で分離します。根がひどく絡まっている場合は、清潔なハサミを使って切り分けましょう。
  2. まず根元に水ゴケを巻きつけてから、新たな鉢に植え込むわけですが、その際に水ゴケを無理して押し込む感じで密に入れるのがコツです。(※)
  3. 作業が終わったら、バケツに入れた水に鉢ごと数時間浸けて、水ゴケにしっかり吸水させて植えつけの完了です。

(※)水ゴケは、ふんわり緩く入れると多量の水を含み、逆に固く絞って入れると水を含み難くなるので、色々と工夫してみて下さい。なお、水ゴケは不快害虫が好むので、鉢底網は絶対に入れ忘れないようにしましょう。
スポンサーリンク






置き場所

  • 春〜秋は、室外の風通しの良い半日陰。
  • 秋〜春は、最低7〜10℃が確保できる室内の窓辺など。

基本的に10℃が置き場所を移動させる目安と考えておけば良いでしょう。

地域によっては、通年室外で栽培する方もいるようです。

水やり

  • 春〜秋は、原則として乾いたら潅水と言うパターンですが、結果的に盛夏時などは毎日やる感じになるでしょう。乾き過ぎると生育中のバルブが萎びて来るので、良く観察しておきましょう。
  • 秋〜春は、良く乾いてから暖かい日の午前中にぬるま湯を潅水します。暖房の影響で室内が乾燥している場合には、対策として日中に葉に霧吹きするのが効果的です。

このように、季節によってメリハリのある水やりを好みます。

なお、開花中の鉢は水切れしてしまうと花が散りやすくなるので、それなりに潅水しましょう。

肥料


【住友化学園芸 マイガーデン 植物全般用】

春〜夏は、緩効性肥料を置き肥にします。

それに加えて、気温が10℃以上ある状況では、10日に1度の割合で規定量より薄めの液肥を潅水代わりに与えると良いでしょう。

病害虫


【住友化学園芸 ベニカXファインスプレー】

病気は過湿を避ければ、ほぼ発生しません。害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどがつく事がありますが、一般的な園芸用殺虫剤などで対処して下さい。

また、置き場所によりナメクジに食害される事がありますので注意して下さい。基本的に健康な株であれば、病害虫により急に深刻な被害を受ける事はありません。枯れたり傷んだ葉先は、適宜剪定するなどして清潔に保ちましょう。

なお、「オンシジューム トゥインクル」の場合、夏期に葉に黒点が出る事がありますが、これは暑さによる現象で、若干、見栄えは悪くなりますが特に問題はありません。

おわりに

豪華な見栄えの「オンシジューム アロハ・イワナガ」と、冬の時期に可憐な花を多く咲かせる「オンシジューム トゥインクル」。

価格も比較的安く、栽培も容易な品種なので、新たに洋ランにチャレンジしてみたい方の入門用にもおすすめです。

以上、オンシジュームの育て方をまとめてみました。



スポンサーリンク
スポンサーリンク