夏は緑の葉がいきいきと生い茂り、緑の未成熟な栗がたくさん実をつける木です。秋になるとイガが裂果して中から見慣れた栗の外皮が顔を覗かせます。
栗はブナ科の落葉樹で、日本人になじみ深い果樹になります。庭先や空き地(農地)で簡単に育てられる栗の木は、果樹としての栽培難易度も低く、秋を代表する果樹と言えるでしょう。
また、「桃栗3年柿8年」と言われるように、植樹後間もない経過年数で収穫できるのも魅力ですね。実際は、株の定植からは1~2年で栗の実を収穫できてしまいます。それでは、秋の味覚の代表格「栗の木」を、庭先で育てる方法を説明していきます。
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栗の木の栽培時期と育成条件
日当たり:耐陰性が弱い栗の木は、日陰では枯れてしまいます。1年を通して日当たりのよい土地に植えましょう。太陽が当たらないと下枝が枯れてきます。寒さには強い木なのですが、日当たりは適度に必要です。味にも影響するので植え付け地には配慮してください。
土壌酸度:中性 あまり土壌の心配は必要ありません。砂質や粘土質の土壌でなければ問題ありません。水はけのよい土壌が好まれます。
株の選定と管理
栗の寿命は長い木で100年前後と言われていますが、古い木では100年~200年と言われます。栗の産地の京都丹波地方では古木を見かける機会が多いですね。生育地として恵まれた環境なのが分かります。平均的な寿命は50年くらいのようです。
植え付けに適した時期は11月~12月の落葉後が適しています。3月位でも植え付けが可能ですが、やはり秋の植え付けがおすすめです。春植えは新芽の伸び方がいまいち良くありません。遅めの植え付けが原因の、根の発達の出遅れのためか、養分の吸収が間に合わないのが主因と思われます。
栗の株はホームセンターや直売所で販売されています。品種は「日本栗」が良いでしょう。受粉が必要となるので1本でなく複数で、相性の良い他品種の栗の木と植えましょう。
栗の木の植え付け
植えつけるには大きな穴が必要になります。深さは50㎝以上・直径が100㎝程の穴を掘ります。水はけのよい土地を選びましょう。
元肥を施してから植えつけるのがコツです。その後の生育がより良くなります。植え付け後、株元から50㎝位の所で切り詰めます。
自家受粉が困難な栗の木は、近くに異なる品種の栗を植え付けることになります。「栗林」と言うように、栗の木1本が生育している所を見た記憶がありません。
そこで、植え付けでは栗の木と木の間隔が重要となります。日当たりを好む栗は、日陰だと徐々に衰え枯れてしまいます。栗の木は葉が生い茂るので、思いのほか木々の間隔が必要となります。おおよそ5~6mの間隔が目安となります。
栗の木は水はけの良い土地を好みます。そこで、水はけが良くない土地での植え付けでは、畝を作って少し高く植えつけると良いですね。
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栗の木の肥料・水やり
痩せた土地でも育つ栗の木は、肥料の心配はそれほど気にしなくても育つ果樹です。元肥をしっかり施して植え付ければその後も育ちが良いでしょう。
追肥としては「寒肥」が2月頃です。生育の遅い季節なので緩効性の有機肥料がよいでしょう。収穫後の10月頃は速効性の化成肥料がよいでしょう。
栗の木の場合、庭植えなら基本的に水やりの必要はありません。極端に乾燥した場合は水やりをします。
栗の木の剪定
栗の木の年間成長過程は、品種や年によって異なりますが、毎年似たような過程で成長します。発芽から7月頃までは新梢の成長です。根の成長は4月下旬と8月下旬~。根の成長前に追肥を施して、肥料を土壌に慣れさせる理由が良くわかります。
剪定の時期は落葉後の12~3月が適齢期です。この時期は葉が落ちているので、樹形を整えるのが容易です。
栗の木は成長著しく大木に成長する果樹です。目的は栗の収穫なので、高すぎると剪定や樹木の管理が困難になります。また、日当たりが悪いと美味しい栗になりません。そこで日当たりの悪い木にならないよう剪定が必要です。
- 1年目の植え付けでは根元から50㎝位で主幹を切り落とします。
- 2年目では枝の先端を軽く切り落とします。ここで、主枝の本数を3~5本に決めて、骨組みを頑丈にします。
- 3年目では主幹を真っ直ぐ伸ばし、それより下の主枝でない枝は切り落とします。
変則主幹形で4年~6年目で主幹が地面から4mくらいで主幹を切り戻します。放っておくと8~10mに成長してしまいます。
主幹を切り戻すことによって成長を止めるだけでなく、樹幹まで日当たりが良くなり、果実の味が良くなる効果があります。
栗を種(実)から育ててみましょう!
収穫した栗(種)を植えて育てることもできます。鉢植えで発芽させていきます。鉢植えに腐葉土を入れて栗の実をまきます。イガから出した栗の実をまきます、栗の実のとがった方が下になるように蒔きましょう。
発芽するには低温状態が必要です。冬に外で寒さに当てて、春の発芽を待ちます。
実から発芽させた場合には、結実まで5年ほどかかります。「桃栗3年~」よりも時間がかかります。やはり、苗からの植え付けが望ましいですね。
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鉢植えやプランターで栗を育てる!
庭が無くてもコンパクトに育てることができる栗の栽培。果実の数は大量に期待できませんが、季節感があって面白いです。
水はけのよい土質にするため、赤玉小粒と腐葉土を配分します。7:3くらいが目安です。砂(川砂)を配分に含めても水はけが良くなります。
植え付けの後に、主幹の切り詰めを行います。この際は、植えている鉢植えと同じくらいの長さに主幹を切り詰めるとバランスが悪くなりません。剪定は庭に植えた場合と同じように、主幹・主枝と決めていきます。植え替えは根詰まりを起こさないよう2~3年に1回のペースで行います。
収穫数は絞る必要があり、主枝1につき1実が目安です。摘果を行って実の数を調整しましょう。鉢植えの場合は、1日中日当たりが選べるので心配はないですね。
栗の木は日本全国(沖縄を除く)で栽培が可能ですが、北海道など特に寒さの厳しい地域では庭に植えるのでなく、鉢に植えて育てる方が安心です。
人工授粉について
果樹の中には1本では受粉が難しい木があり(自家不和合成)受粉樹の品種も一緒に植えましょう。栗と同様に「りんご」なども自家受粉が難しい樹木です。
良く晴れた日の開花期に、花粉を採って筆などで受粉させます。
栗の収穫時期と収穫方法
栗の品種にもよりますが、収穫時期は9~10月になります。イガが茶色くなり、自然落下した果実から収穫していきます。
大きめのトングでイガから果実を取り出していきます。取り出されたイガは、放置しないでまとめておいて処分しましょう。
おわりに
栗の木の育て方について、日当たりから土壌・剪定・収穫までお話しましたがいかがでしたか?
栗の木は夏に葉が生い茂るので、庭に植樹していると若干涼しい気持ちにさせてくれます。また、落葉時期の秋も季節感があっていいですね。
毎年秋になると一定の収穫量を得られるので季節感も分かり楽しい果樹です。しかし、樹木を大きくし過ぎると剪定も困難になるので、植え付けからこまめな剪定で成長を調整していきましょう。
成長には手がかからないのですが、受粉や開花期にはケムシ対策など手間はかかります。あまり多くを植樹して育てるのはおすすめできません。庭で育てる場合は2~3本が適当な本数かと思います。
古くから日本の里山や庭先で馴染んできた「栗の木」を、庭園果樹栽培でチャレンジしてはいかがでしょうか?