ワラビは世界や日本の各地で見られるシダ類の多年草です。春の訪れを知らせる山菜の代表ともされるワラビは、肉厚でぬめりのある食感に特徴があり、ワラビ餅や山菜蕎麦、天ぷらなどで私達の食卓を楽しいものにしてくれます。
山の中に自然に生えているイメージを持つ人も多いとは思いますが、ガーデニングとして栽培し、環境さえ整えば収穫をすることが可能です。
今回は、そんなワラビの苗植え〜収穫までの育て方についてご紹介します。
Contents
ワラビの栽培時期と育成条件
日当たり:日なた・半日陰
用途:地植え・プランター
最終樹高:1m
条間:1m
土壌酸度:酸性(pH5.0~5.5)
ワラビの分類とその特性
ワラビは改良された品種が存在しません。
そのため、明確に種類を区別するのが難しいとされていますが、大きくわけて3つの系統に分類することができます。
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アオワラビ
茎の色が、白緑・黄緑・薄緑色をしています。
太さは中くらいで、品質が優れていることが特徴です。大量に収穫することが可能です。
ムラサキワラビ
全体が紫黒色をしているのが一般的ですが、茎の色が褐色がかっているもの、赤紫色などのものもあります。
アオワラビよりも茎が太く、肉質が柔らかいのが特徴です。別名をクサワラビ赤茎系とも言います。一度茹でてしまうと、緑色に変化するのでアオワラビと区別するのが難しいとされています。
草勢が強いので、プランターよりも地植えが適しているでしょう。
中間系
茎の太さや色(赤紫・うす紫)が統一されていなく、アオワラビやムラサキワラビに属さないものを指します。
ワラビの栽培適地
現在、ワラビの日本国内の群生は小笠原以外のあらゆる場所で確認されています。その多くは高冷地や平坦地などの草地、山野に群生で、特に日光の良くあたる場所に多く見られます。
家庭栽培においては、地植え以外にも、プランターでワラビの栽培をすることが可能です。
ただし、プランター栽培の場合、それほど多くのワラビを収穫するのが難しいので、ある程度の量を確保したい場合は、地植えにするとよいでしょう。
ワラビの植え付け適期は、11~4月ころです。ホームセンターなどでワラビの根(苗)を購入するところから始めましょう。根茎の長さが20~25㎝ほどで、新芽が4つ以上あるものを選ぶことがポイントです。
ワラビの土作り
山などで自生しているワラビは、あらゆる場所に生えていることから基本的にはそれほど土を選びません。しかし、太くて元気なワラビを収穫するためには、それに適した土壌が必要です。
ワラビが好むのは、水はけがよく、堆肥や腐葉土が多く含まれている肥沃な土です。植え付けを行う1ヶ月位前に、土に堆肥を混ぜて準備をしておきましょう。
また、堆肥以外にも木灰を使うと質の良いワラビができるとされています。一方でワラビが嫌うのは、粘土質で乾燥する土質です。
ワラビの植え付け
土と根(苗)の準備ができたら早速植え付けを行いましょう。地植えの場合は最初に60~90㎝幅の畝を作ります。
深さ10㎝の植え溝をつくり、用意した根を植えていきましょう。根に被せる土は、5~10㎝、条間は1mです。
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ワラビの栽培条件
気温
気温が10℃を超え始めると、若芽が出てきます。また、15℃以上になると成長のスピードが増し、20℃~25℃くらいが最も早く成長します。
目安として、芽が出てから収穫するまでは平均気温が14℃以上、20日くらいの日数が必要です。
水量と湿度
ワラビの敵は乾燥です。土が乾燥している状態で栽培を続けると、茎の細い痩せたワラビしか収穫をすることができません。
乾燥を避けるために、夏場は1週間ごとの水やりが目安です。また、乾燥しやすい土地では、根元に敷き藁を敷いて土の表面の乾燥を避けるようにするとよいでしょう。
土の中が常に湿った状態が一番良いので、霧やもやがかかるような地域では良質なワラビを収穫することができます。
日光
ワラビの栽培には日光が必要ですが、日陰を好む習性があります。森林の中で程良く日の当たる、木の根元にワラビが生えている環境を想像するとわかりやすいかと思います。
直射日光など強い光が当たる場所では、早く葉芽が開いて短いワラビが作られてしまうので、注意してください。
ワラビの肥料
ワラビの肥料の与え方は以下の通りです。
1年目
7月上旬に緩効性肥料、8月中旬に高度化成肥料を適量施します。
場所は畝間で、軽く耕すようにしましょう。
2年目以降
萌芽前に堆肥3㎏と緩効性肥料60gを1㎡に与えます。
7月と8月には1年目と同様に追肥を行いましょう。
ワラビの収穫について
1年目の栽培管理
ワラビの植え付けを終え、成長してきたら早速収穫といきたいところですが、1年目は株を養成することに努めましょう。
ワラビは、順調にいけば秋口までには1m位の高さまで成長します。地上に出た部分は次第に枯れていくので、葉や茎は処分してください。地中には株が残って冬の間も生き続けます。
2年目・3年目の収穫
2年目入り、再びワラビが成長して収穫をする段階になっても、収穫する期間は1ヶ月位でストップ(全体の70%程度)しましょう。これも株を養成する為に必要なことです。3年目以降になると、6月下旬まで1平方メートルあたり600~800gの収穫が期待できます。
最初の1.2年目は株の養成のために収穫量が少なくなりますが、一度植え付けを行うと10~20年もの間、栽培することが可能になります。
目安として、九州地方は3月下旬、関東中部地方で4月下旬、東北以北では5月上旬が萌芽期です。その2~3週間後の収穫時期が訪れます。茎が13㎝くらい、太くて折れやすく、切り口から粘液が出ていれば鮮度抜群の美味しいワラビです。
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ワラビを食べる時は必ずあく抜きを
ワラビにはブタキロシドを始めとする発がん性物質が含まれています。
あく抜きをすることでこれらの物質が減少するので、ワラビの調理前には必ずあく抜きの作業を行って下さい。
- ワラビ1㎏に対して小さじ1杯の重曹を用意する
- 鍋に蕨がしっかりつかる位の水を入れ湧かす
- 沸騰したら重曹を投入し火は止める
- 鍋にワラビを入れて一晩(最低6時間)つけておく
- 取り出したワラビは水にさらす
あく抜きが終了したら、そのまま食べることもできますし、冷凍保存することも可能です。
犬や猫などのペットを外に自由に放している場合は、ペットがワラビを生で口にしないように気を配りましょう。
ワラビの繁殖のしすぎに注意
ワラビは横に根が伸びる特徴を持っています。また、草勢、繁殖力が強く環境が整っているとどんどん広がっていきます。
広大な畑で栽培するのであれば問題ないのですが、近隣との距離が近い場所で栽培をする時は、繁殖した根が他の人の敷地に入り込んでしまう可能性が出てくるので注意しましょう。
おわりに
ワラビの栽培方法をご紹介しました。
栽培のポイントは以下の通りです。
- 程良く日光があたる日陰
- もやや霧がかかるような湿地を好み、乾燥は大敵
- 柔らかく腐食に富んだ土質を好む
- 植え付けをして1.2年は株の育成につとめる
とくに難しい管理方法がなく、日光量や土の条件が合えば長い年月に渡って収穫をすることができる山菜です。
最初の2年間はちょっと収穫量を抑えて、3年目からは思う存分たくさんのワラビを楽しむことができます。手軽に始められるので、気軽にチャレンジしてみてくださいね。