ジンジャーは、熱帯アジアが原産と言われるショウガ目ショウガ科ショウガ属の多年草です。
今回は、ジンジャーの育て方について、お話ししていきたいと思います。
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ジンジャーの栽培時期と育成条件
日当たり:半日陰
土壌酸度:弱酸性
生育適温:25〜30℃
ジンジャーの品種の選定
使用目的により品種が分かれるので、「根ショウガ」を栽培したいのか?「葉ショウガ」や「矢ショウガ」を栽培したいのか?を最初に決めてから進めるのが良いでしょう。
「大ショウガ」系の品種でも、7月下旬頃から「葉ショウガ」として収穫する事も可能ですが、やはり「谷中しょうが」などの「葉ショウガ」に特化した品種と比べると収量や食味の面で大きな差が出てしまいます。
逆に「根ショウガ」を必要とする場合にも、やはり「大ショウガ」系の品種が勝るのが当然の事です。
ジンジャーの連作障害
かなり強烈な連作障害があります。
しょうがを一度栽培した土壌では、4〜5年の間隔を空けないと再度の栽培は不可と言われています。
高品質を追い求めるプロは、一度作ったら畑を約7年は休ませる程です。
ジンジャーの植えつけ場所の準備
庭先や家庭菜園で毎年の栽培を考えている場合、連作障害を考慮して場所を移しながら栽培していくと良いでしょう。
また、一般的なサイズ(60cm)のプランターでも栽培が可能なので、そちらも考えてみると良いかも知れません。いずれにしても、余程広いスペースがある場合は別として、小規模に栽培してみる方が良さそうな気がします。
しょうがは10℃以下で腐敗するので、植え付けは4月中旬以降の寒害の心配がなくなる時期に行います。最低地温が15℃以上を確保するようにして下さい。土壌は砂地でも粘質土でも構いませんが、水はけと保水性の高い土を好みます。
植え付けの3週間前までに、1平米あたり100gの苦土石灰を全面に散布して深く耕しておきます。その1週間後に元肥(ケイフン・堆肥)を施して7〜8cm程度の畝を作ります。その際、根茎腐敗病を予防するために、横溝を多くとり、排水溝を深く掘って、準備作業は完了です。プランターの場合は、お手軽に市販の培養土を使うと良いでしょう。
種しょうがは、大きいものは1片が50g前後の大きさになるように手で割り、切り口を2〜3日乾かしておきます。切り口に草木灰を付けるのも良いそうです。切り口を乾燥させておけば、水はけのよい無病地なら、切り口から腐敗することはありません。あまり小さく割り過ぎないのがポイントです。
ジンジャーの植えつけ
「大ショウガ」系の場合は、株間30cmで深さ5cmの植え穴を掘り、種しょうがを横に寝かせる形で植えつけます。芽が出かかっているようなら、芽を上に向けて下さい。
「葉ショウガ」や「矢ショウガ」目的で、「中ショウガ」「小ショウガ」系を植える場合には、株間10cm程度を確保すれば大丈夫です。
一般的なサイズ(60cm)のプランターの場合には、市松状に植えつけるなど工夫すれば「大ショウガ」系で3株程度まで植えられます。こちらも覆土は5cm程度とします。
ただし、後ほど改めて述べますが、しょうがを栽培する場合には、株の発育に応じての「土寄せ(増し土)」が必要となり、また、乾燥防止の敷き藁のスペースも必要となって来るため、初期の用土の分量はプランターの6〜7分目までに抑えておく事とします。
なお、冷涼な環境の場合、極端に成長が遅れる傾向があるので、プランターのなどであらかじめ芽出しをしておいてから、畑に植えつける方が良いでしょう。
植え替えを前提にするわけですから間隔は密で構いません。覆土は通常通りの5cm程度としビニールなどをかけて保温し、発芽後7〜8cm程度まで育成します。その頃には、育てやすい気温にまで上昇している事でしょう。
露地に直植えする場合にも、適宜、黒マルチなどを使用して、地温が低下しないように注意して下さい。充分に潅水したら植えつけの完了です。
ジンジャーの水やり
しょうがは乾燥を嫌いますが極度の過湿にも弱いので、土が乾いたら充分に水を与えるパターンで潅水します。なお、夜間の冷え込みが気になる地域の場合、朝方に潅水するように心掛けて下さい。
逆に夏場には与えた水が日差しで高温化するのも禁物です。朝夕の気温の低い時間に作業して下さい。
プランターの場合は、特に乾燥しやすいので一層の注意が必要です。
ジンジャーの追肥と土寄せ
本葉が2〜3枚出た段階で、追肥を行います。有機肥料を1平米あたり50〜100gの見当で撒きます。化成肥料を使用する場合には、1平米あたり30〜50gにして下さい。このタイミングで、プランターのなどで芽出しを行っていた場合は定植を終え、黒マルチをしている場合は剥がします。
4週間後に2回目の追肥を施し「土寄せ(増し土)」を行います。「土寄せ(増し土)」は、日光に当たって生姜が緑色になる事の防止と根茎の肥大のために重要な作業です。
しょうがは、種しょうがから上に向かって成長するので、芽の根元にそれぞれ厚さ3〜4cmずつの土を盛り上げていきます。ただし、一度に強く行うと逆効果となるので注意が必要です。
具体的には、芽が2本出た時と4〜5本出た時を目安に、2〜3回に分けて行います。一気にドサッ!と土を盛るのは良くありませんが、状況に応じて作業の回数が増える分には問題はありません。
「土寄せ(増し土)」後、梅雨明けを目安に、乾燥防止の敷き藁を敷きます。特に乾燥しやすい環境では厚めに敷くと良いでしょう。なお、敷き藁を株元に密着させると「紋枯病」が発生する事があるので注意して下さい。
「根ショウガ」の場合は、もう一度追肥を施しても構いませんが、遅くとも8月中旬頃までに終えるようにします。遅い時期の追肥は貯蔵性の低下につながるので行わないのがポイントです。
ジンジャーの収穫
7〜8月頃になると「葉ショウガ」の収穫の開始です。1〜2本かき取る形で、種しょうがを傷つけないように丁寧に取って下さい。
9月を過ぎ、葉の色がある程度黄色くなったら「種しょうが」の収穫の時期です。根元から引き抜けば収穫完了です。種しょうがもハーブ用途であれば利用できます。
なお、10℃以下になると根茎が腐ってしまうので、霜が降りる前に必ず収穫を終えるようにして下さい。
ジンジャーの病害虫
前記した「紋枯病」の他に、「根茎腐敗病」などがありますが、連作を避け健全な環境で栽培を行えば発生は稀です。
害虫では「アワノメイガ」「ハスモンヨトウ」「センチュウ類」が発生する事があります。
「センチュウ類」も連作に関連して発生する事が多いので注意します。「アワノメイガ」「ハスモンヨトウ」に関しては、薬剤の散布などで駆除して下さい。
ジンジャーの豆知識
論語には孔子が「はじかみ」を食べたとする記述があり、また、古事記にも記載されているため、国内でもかなり古い時代から栽培されていたものだと考えられています。江戸時代ごろから一般的な食用として広まりました。
一方、ヨーロッパでの食材としての利用は中世以降からで、それも他の香辛料と同様に乾物としての利用が主だったようです。これは気候が栽培に向かなかったためだと言われています。
食材として栽培されているしょうが(ジンジャー)は、大きさと栽培・収穫方法により、それぞれ3種類ずつに分類されます。
大きさによる分類では、国内生産量の9割以上を占める「お多福しょうが」「近江しょうが」「土佐大しょうが」などの「大ショウガ」、「三州しょうが」「黄しょうが」などの「中ショウガ」、「金時しょうが」「谷中しょうが」などの「小ショウガ」に分けられます。
また、栽培・収穫方法による分類では、一番ポピュラーな使われ方の地下の、塊根部分をすりおろしたり刻んだり、あるいは、そのままの状態で煮物の臭味消しに用いられたりする「根ショウガ」、小指程度の大きさにまで成長した根茎を葉が付いた状態で収穫して食べる「葉ショウガ」、軟化栽培をして焼魚などの添え物の「筆生姜」「はじかみ」としてお馴染みの「矢ショウガ」に分けられます。
一般的に「根ショウガ」には「大ショウガ」系、「葉ショウガ」「矢ショウガ」には「中ショウガ」「小ショウガ」系の品種が用いられています。
料理以外にも、冷やし飴やジンジャーエールなどの飲み物、生姜飴、生姜糖、ジンジャークッキーやジンジャーブレッドなどの菓子類など、洋の東西を問わず甘い物にも用いられる事が多いのは面白いところです。
おわりに
発芽に失敗しなければ、水やりをサボらず「土寄せ(増し土)」するだけで、比較的短期間で収穫できます。
逆に成否のポイントは芽出しなので、そこだけは充分に気を配って下さい。
以上、しょうが(ジンジャー)の育て方をまとめてみました。