桃は近年では、コンパクトに育て易い矮性台木苗(YD苗)や、別に受粉樹を用意する必要がない単体で結実し易い品種が広く出回り、一般家庭の庭先や鉢植えなどで気軽に楽しめる様になってきました。
また、花そのものもウメやサクラと比べても決して引けを取らない程の見事な美しさで、観賞に重きを置いても充分に満足出来ます。
今回は、そんな桃の育苗から収穫までの育て方、剪定方法や病気・害虫の対策などについてお話ししていきたいと思いますので、ぜひ挑戦してみてください。
Contents
桃の栽培時期と育成条件
日当たり:日なた
土壌酸度:中性〜弱酸性
株間:150cm〜
収穫時期:7月〜9月頃
栽培北限:南東北辺り
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桃の品種の選定
どうしても本格的に受粉樹と2本植えしてやってみたい場合を除いては、「1本で結実」「自家結実性あり」「受粉樹不要」などと明記されている物を選ぶと良いでしょう。
ちなみに白桃の最高峰とも評され贈答用などにも人気の「清水白桃」などは、1本で結実しない「要受粉樹」です。実は白桃系の品種は花粉が少ないので、必ず、花粉の多い白鳳系などの他品種とペアで育てて下さい。
また、「矮性台木苗(YD苗)」や「鉢植えにも…」などと記載されている品種で探すとコンパクトに育て易いです。
現在、「なつおとめ」、岡山県育成種の「白麗」、黄肉種の「サンゴールド」などのYD苗が、大手種苗会社から比較的容易に取り寄せ可能となっています。また、枝垂れで半八重咲きの花を咲かせる「照手水蜜」なんて品種もあります。品種によって性質も異なるので、しっかりと検討してから購入したいものです。
植えつけ場所の準備
元来、桃は過湿な土壌を特に嫌うデリケートな植物ですが、一般向けに流通している苗は、台木の部分に根が強い植物を使用した接ぎ木のため、それなりの環境さえ用意できれば大丈夫です。
とは言うものの、やはりジメジメして苔生すような場所は栽培に適しません。また、日かげは苦手なので、充分な日照を確保できる場所を選びましょう。
栽培北限は、南東北辺りでしょうか。市場で流通している桃には、青森や秋田の生産者による品もありますが、設備面などで素人にはかなりハードルが高そうです。桃の木自体は、冬期は休眠に入るのでかなり寒くても平気なのですが(-26℃以下にならなければ大丈夫)、開花期にある程度の温度が必要となります。
温暖な土地ならどこでも大丈夫?
逆に年間を通して温暖な土地ならば良いのか?と言う話になりますが、そうも行かないわけで…多少専門的な話をすると、冬期の自発休眠期に低温不足になると開花不良となってしまうと言う事です。
(従って、かなりの寒冷地でも簡易温室やサンルームなどの設備があり、コンパクトに鉢仕立てにした物ならば、冬場は冷気にさらして春先に温室に入れる方法でクリアできるかも知れませんよ…)
桃の出荷量が特に多い山梨県や福島県などを見ても、冬は寒く夏は暑い土地ですし、沖縄県産のモモって聞きませんよね。結局、暑さ寒さのメリハリが必要と言う事なので、間違っても「寒くてかわいそうだから…」と思って保温してはダメですよ。
桃の植えつけ
植えつけは、基本的には晩秋ですが、寒冷地では春植えにした方が無難かもしれません。
「地植え」と「鉢植え」のそれぞれの場合についてお話ししていきます。
地植え場合
地植えでは、植えつけ1ヶ月以上前に、直径50cm・深さ50cm程度の穴を掘り、掘り出した土5:腐葉土3:赤玉土中粒2の割合、適量の苦土石灰を混合し、果樹用などのリン酸が多目な肥料を加えておくのがポイントです。
穴を埋め戻すと、土の分量が5割強増えるわけですから、当然、一段高い盛り土になると思いますが、そこに植える事で過湿を避けようと言う目論見です。
植えつけ作業は、古い根や土を取り除き、根が交差しないよう四方に広げ、必ず「接ぎ木部分が地上に出る」よう浅植えにします。
植えつけ後、接ぎ木部分から25〜50cm辺りの充実のよい部分で切り返し、支柱にしっかりと固定する。たっぷりと潅水して植え付け作業は完了です。
鉢植えの場合
鉢植えの場合は、8合鉢程度の大きさが管理しやすいでしょう。病気の原因の多くが糸状菌(カビの一種)なので、鉢植えにして軒下などに置いて、なるべく果実や枝葉を雨水に濡らさないだけで発生が激減するメリットもあります。
培養土は、鉢底石をしっかり入れて市販の「果樹・花木の土」あたりを使っておけば良いでしょう。植えつけ作業は、地植えと同様に、必ず「接ぎ木部分が地上に出る」よう浅植えにし、植えつけ後、接ぎ木部分から25cm辺りで切り返し、支柱にしっかりと固定します。鉢穴から充分に排水されるまで、しっかりと潅水して植え付け作業は完了です。
なお、日当たりを好むため、置き場所は照り返しなどでかなりの温度となります。夏場は二重鉢にするなどして地中温度の上昇を抑える工夫もして下さい。
桃の水やり
桃は、過湿を嫌いやや乾き気味の環境を好みます…とは言っても、極端に干涸らびるのもマズいわけで、そこら辺のバランスはちょっと難しいです。
庭植え、鉢植えともに、苗の活着後は水やりは控えめにした方が良く育ちますから、土の表面が乾いたらタップリと潅水する感じで良いでしょう。
果実成熟期は水分を抑える事で、甘い果実をならせる事ができますが、高温になる時期なので、特に鉢植えの場合には、鉢の重さを確かめたりと言った方法でもチェックしてみましょう。
桃の肥料
肥料は、萌芽前・果実肥大期・収穫完了後の年3回を目安に施肥します。
12月頃〜2月頃の萌芽前には油かすなどの有機質肥料、4月頃の果実肥大期と収穫完了後のお礼肥には、速効性のスタンダードな化成肥料(8−8−8など)などで良いでしょう。
特に、果実の成熟までの時間が長いので収穫後のお礼肥が欠かせませんが、土のチッ素分が多くなると枝ばかりが伸びてしまうので、そこら辺は加減して下さい。
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桃の病気と害虫
病気では、縮葉病、黒星病、灰星病、せん孔細菌病、いぼ皮病に要注意です。特に、縮葉病と灰星病は代表的な病気です。
縮葉病は、発芽前に石灰硫黄合剤の10倍液を散布し発生を予防する事します。灰星病は、果実に袋をかける事で病気の進入を防ぎます。
害虫では、アブラムシ類、カイガラムシ類、シンクイムシ類、ダニ類、カメムシ類、コスカシバ、ヤガ類などに注意します。シンクイムシ類は果実に袋をかける事で防ぐ事ができます。他の害虫類は、一般的な駆除方法で対処して下さい。
桃の開花・摘果・収穫
植えた年にすぐ収穫とは行きません。苗の状態や品種によっては結実する事があるかも知れませんが、特に初年度は苗から丈夫な果樹に育てる事を優先します。
まぁ、今後の検討材料として試食するために1個くらいは残しても構いませんが、基本的には全ての実を青い内に摘果して下さい。そろそろ果樹として安定する3年目頃からも、この摘果作業が重要になってきます。
桃の摘果時期
桃は開花から100日前後で収穫となりますが、摘果せずに放置すると、果実が大きく成長せず、また、果実に多くの栄養分を取られてしまう事で樹が衰弱します。
モモには生理落果という性質があり、結実した幼果の半数以上は6月までに落ちますので、摘果は数回に分けて状況を見ながら行います。
最初は、果実が指先程度の大きさに育った段階で行う予備摘果です。結実しなかった花ガラや、双子になってしまった果実を摘果します。
桃の摘果方法
続いて、前述した開花後3〜40日頃に行う摘果ですが、先ずは上向きについた実や傷のある実を摘んでから、混み合っているところ、擦れそうなところなどは摘んで間隔を空けていきます。
1果当たりの葉の枚数が30枚、30cmの枝に2個程度が目安となります。特に鉢植えの場合には、欲張り過ぎて樹を衰弱させないよう注意しましょう。また、前述した病害虫の予防のためにも、この段階で果実袋をかけます。果梗(軸)が短いので、枝ごと果実袋に付属する針金で固定します。
プロの場合、この後、硬核期が終わった段階で果実の優劣を見極めて、双胚果・核割れなどの実を摘果する仕上げ摘果や、出荷に不適な実の摘果する修正摘果を行います。なお、ハチなどの飛来が見込めない環境の場合には、適宜、人工授粉を行って下さい。
桃の整枝剪定と誘引
休眠期の12月中旬〜2月下旬頃に行います。幹から出た最も太い枝(主枝)を2本残し、上から見て「一の字」、横から見て「Yの字」っぽい感じになるのが理想です。
次いで、主枝から出た太い枝(亜主枝)を2〜3本ずつ残した基本的な骨格を考えましょう。どの枝から出た葉も効率良く光合成ができ、結実した際に擦れ合わないバランスのとれた枝の配置にする事が大切です。
骨格となる主枝・亜主枝が決まったら、それらの生育を妨げる枝や不要な枝を基部から間引きます。太い枝の切り口には、必ず「トップジンMペースト」などを塗布して保護して下さい。
不要な枝の間引きを終えたら、充実した枝の発生を目的として、主枝や亜主枝の先端は3分の1程度切り返します。主枝を40度程度の角度で上向きになるように支柱で誘引固定して「整枝」は完了です。
桃の通常の剪定
こちらも休眠期の12月中旬〜2月下旬頃に行います。モモは古い枝からは新芽が発生しにくく、発生1〜2年目の枝に新芽が発生します。
勢いの強い樹、若木は、強剪定を行わず、間引きを主体に小枝を多く残す弱めの剪定を行い、発生1〜2年目の枝を残すようにします。逆に、勢いが弱い樹は、切り返しを主体とした強めの剪定を行います。
おわりに
家庭で作る分には、品種の選定と整枝剪定、大胆な摘果と袋がけあたりがポイントで、後はそれほどハードルは高くない筈です。
以上、桃の育て方をまとめてみました。