縄文時代以前に日本で栽培されるようになったシソですが、原産地はヒマラヤや中国中南部と言われています。古代の中国でカニを食べた少年が食中毒になり、顔が紫に変色し、瀕死に陥った際、シソの葉を用いた薬を服用し、一命をとりとめたという逸話があります。
そこからシソを紫蘇と書くようになったそうです。シソに含まれるペリルアルデヒドという成分には食欲増進作用と防腐作用があります。昔の人は実体験から効果を学び、魚介類の毒を消す食材として、刺身や生ものにシソを添えるようにしていたんですね。
今回は、そんなシソの種まき〜収穫までの育て方と栽培時期や病気・害虫対策についてご紹介していきます。
シソの品種
シソの品種は生育速度のほかに、葉の性質によっても分類することができます。また葉以外にも、芽や花穂も、芽ジソ、穂ジソとして食べられます。
下記にまとめましたので、順に確認してみましょう。
青シソ
葉色は鮮やかな緑色で、葉の縁にあるギザギザの切れ込みは浅めです。白色の花が咲き、系統によってはほとんど匂わないものもあります。
「大葉青しそ」は芳香抜群の春まき用青シソです。暖地では、5月下旬から10月と、長期にわたって収穫できます。
青チリメンシソ
葉面に縮があり、鮮やかな緑色でやわらかです。花は白く、香りは強めです。
中間地の露地栽培では6月~8月いっぱいが収穫目安なので、そうめんの薬味やサラダに活躍します。
赤シソ・赤チリメンシソ
葉色が裏表とも濃い赤紫色をしています。紅紫色の花をつけます。梅やショウガの色付けに使用されます。チリメンシソは葉に縮みがありやややわらかいです。
シソで包む料理などに使いやすい丸葉系の赤シソです。らっきょうのシソ巻きや焼酎の原料として使われています。
基本の作型
シソは一年生草本で、草丈は1mを越えることもあります。また茎の枝分かれも旺盛で、よく繁茂します。
発芽適温は22℃前後、生育適温も20℃~25度と比較的高温には強いのですが、寒さには弱く、霜に当たると枯れてしまいます。開花は8月~9月ごろです。結実したら収穫しましょう。
下記は一般的な作型となるため、種の袋に記載されている栽培暦を確認してから種を購入しましょう。
青シソ【葉を収穫する】
種まき3月半ば → 定植4月下旬 → 収穫5月下旬~8月末
種まき5月初旬 → 定植6月上旬 → 収穫6月下旬~9月半ば
穂シソ【穂を収穫する】
種まき2月半ば → 定植3月末 → 収穫4月月下旬
種まき3月上旬 → 定植4月末 → 収穫6月半ば~7月半ば
種まき7月末 → 定植8月末 → 収穫9月末~10月上旬
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栽培管理
種まき・育苗
シソは、発芽適温が比較的高く、低温期には芽が出にくいことがあります。温かくなってからは、畑に苗床を作り直まきすることも可能ですが、作付けに従う場合はポットで育苗を行いましょう。
ひとつのポットに3粒ほど置き、軽く土をかけます。シソは好光性種子なので、覆土が厚いと発芽しない可能性もあります。発芽まで、乾燥に気をつけましょう。
土づくりと畝
シソ科には、ほぼ連作障害がありません。昨年その場所で病気になったということがなければ、同じ場所に畝を作っても大丈夫です。
シソは乾燥が苦手で、畑の中で半日陰になる場所でも育ちます。土質は選びませんが、水はけのよいところを好みます。また日の出から日の入りまで日光に当たるような場所では、香りが強くなりますが、葉がゴワゴワと硬くなります。
堆肥2㎏/㎡と苦土石灰100ℊ/㎡、化成肥料(8:8:8)を100g/㎡を施し、よく耕しましょう。畝幅は80センチ確保し、条間は40センチ、株間は20センチ以上開けるようにします。
密植すると葉が擦れあって、蒸れ、病気の原因にも繋がり、徒長しやすくなるので注意しましょう。
定植
本葉が3~4枚になったころが定植適期です。シソは移植に弱いため、植え替え時は株元を指の股で押さえつつ、ポットを逆さにし、そっと引き抜くなど、根鉢を傷つけないように注意が必要です。
植え付け後は活着を助けるために、たっぷりと水を与えましょう。
サツマイモと混植
夏野菜は種類も豊富で、シソに場所をとられたくないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこでサツマイモとシソの混植をご紹介いたします。
シソの発芽に十分な気温となる5月はサツマイモの植え付け時期と重なります。サツマイモには土中にチッソ成分が多いと、つるばかりが繁茂し、イモが肥えないという性質があります。
一方シソは吸肥力が強く、葉を茂らせるためにチッソをぐんぐん吸収します。加えてシソにはサツマイモの害虫、イモコガの忌避効果があると言われています。
シソは秋口に開花すると順に葉を散らし、枯れていくので、サツマイモの収穫を妨げません。サツマイモの葉が株元の乾燥を防ぐ効果も見込め、シソとの混植は古くから行われてきました。
イモヅル1本に対して、シソ1株を目安に試してみてはいかがでしょうか。
病気
降雨の増える梅雨時期にはカビに起因する病気にもかかりやすいです。
シソは高温を好みますが、とても乾燥に弱い特徴があり、真夏から秋口は病気を発症しやすくなります。
葉を観察し、散水の管理をしっかりと行いましょう。
さび病
カビによる病気で、葉の裏に赤茶色や黄色の細かな斑点ができます。進行すると斑点が盛り上がって、胞子を飛散させます。
薬剤での治療が可能ですが、汚染された葉は即刻畑の外で処分しましょう。梅雨・秋の長雨など、降雨が続くと発生しやすくなります
褐斑病
カビにより葉の表面に黄色~淡褐色の病斑があらわれ、次第に拡大していきます。気温が急上昇する春から梅雨前、気温が低下し始める9月から11月に発生しやすくなります。
窒素肥料の過多、土壌の多湿も原因と考えられ、高畝にするなど対策が必要です。感染株は畑の外で処分し、周辺のシソの下の葉が込み入っているようであれば、摘葉して風通しを改善しましょう。
青枯れ病
細菌による病気で、シソの株が青々としたまましおれ始めます。高温期に発生しやすく、日没後や曇天では萎れがやや回復することから、水不足によるしおれと見誤ることもあります。
数日このサイクルを繰り返し、全体が茶色に褪せ枯死に至ります。地温20℃以上ある高温期に、土壌の水分含有量が過多になると発生しやすくなります。
薬剤治療はほぼ効果が見込めないため、発病した株は引き抜き、根が伸びていた周囲の土も畑の外で処分しましょう。
追肥
シソは旺盛に繁茂するため、吸肥力が強い特徴があります。7日~14日間隔で薄めた液肥を与えましょう。
植物は水に溶けた栄養分を吸収するので、とくに夏場の乾燥した時期に、固形肥料で追肥を行う場合は、その後の水やりをたっぷりと行いましょう。
シソの収穫目安と保存方法
シソの収穫目安は、草丈が20~30センチに達し、葉がわさわさと茂り始めたころです。下のほうの葉から順にハサミでカットします。
直射日光が当たる葉は硬くなりやすく、また葉を収穫しすぎると株が弱ってしまうため、注意しましょう。
収穫したシソの葉は、湿らせたキッチンペーパーなどで包んだあと、庫内での蒸発を防ぐためにポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。さっと水をかけてポリ袋にいれるだけでも、鮮度の維持を助けます。
おわりに
今回はシソの栽培についてお話しました。シソは、品種を問わず生命力が強い植物です。
1株植えれば、翌年はこぼれ種で発芽し、畝間や畑の片隅でひっそりと茂っていたりします。
現在は愛知県を中心に生産されていますが、一昔前までは流通を必要とするものではなかったそうです。かつては、シソと言えば着色用か飲料用か、刺身のツマ、天ぷら、と活躍の場が限られた印象でした。
そのすがすがしい香りは肉料理、魚料理とも相性がよく、近年のシソを使ったレシピの増加には目覚ましいものがあります。効率よく取り入れて夏バテ予防に活かしたいですね。