今回はちょっと変りダネの植物を紹介したいと思います。それは、ヘビイチゴ。
皆さんもご覧になったことがあるかと思いますが、黄色く小さな花と、小粒で上を向いた真っ赤な実が特徴的な植物です。ちなみに白い花をつけるものもあります。
ヘビイチゴは別名インディアンストロベリーなんていう呼び方もありますが、事実的に野草、雑草の類です。なので育て方という育て方があるわけではなく、季節さえ合えばそのあたりの河川敷で見つけることができるでしょう。
ですが雑草=無価値と断定してしまうことはできません。ということで、こちらではヘビイチゴの知られざる性質や利用方法についてご紹介していきたいと思います。
Contents
ヘビイチゴの育成条件と栽培時期
植え付け(春) | 植え付け(秋) | 開花・結実 | |
全地域共通 | 3月旬~5月中旬 | 9月上旬~10月下旬 | 4月上旬~10月上旬 |
- 日当り:日なた~半日陰
- 土壌酸度:特に指定なし
ヘビイチゴの入手方法
ヘビイチゴはほぼ全国で野生のものを手に入れることができます。田んぼのあぜ道や河川敷沿いの草むらなどで見かけることが多いですが、ヘビイチゴ自体は生える場所は選びません。時期(4月~9月くらい)さえ間違えなければ見つけるのにはあまり苦労しませんし、雑草なので少しくらい引っこ抜いたところでお咎めを受ける心配も無用です。
ただし、地面沿いに低くツルを這わせて増えるタイプの植物なので、周りが背の高い植生に囲まれている所は見つかる可能性が低くなります。クローバーやオオバコのような背の低い雑草が生えている場所の方が探しどころになります。
子供がいらっしゃる方は、通学路沿いに見かけなかったか聞いてみると良いかもしれません。個人的な経験ですが、ヘビイチゴのように目立つ実をつける植物の場所と言うのはこどもは不思議によく覚えているものです。
どうしても見つからない・見つけに行く時間がないという方は・・・なんと、通販でも買い求めることができますよ。
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ヘビイチゴの類似品種
ヘビイチゴには色々似ている仲間がいて、パッと見では区別がつかないものもあります。
大体はどれも多年草、這い性、寒さに強い、似たような実をつける・・・などの特徴があり、正直どれが生えていてもそんなに困ることはないと思いますが、近年、普通のヘビイチゴを可食品種のように触れ込んで売りつける業者もいるとか。
そんなわけで、2種類ほど間違えられやすい品種を挙げておきたいと思います。
ワイルドストロベリー
ワイルドストロベリーはれっきとした食べられる品種です。しかし一方でエゾヘビイチゴという名前を持ち、ヘビイチゴと取り違えられやすいようです。
悪い人たちの狙い目はこれで、ただその辺に生えているヘビイチゴを「食べられます!あなたの庭にワイルドストロベリーをどうぞ!」と言って売りつけるわけです。
ヘビイチゴの実は海綿状で味も何もあったものではないので、ワイルドストロベリーとは大違い。ワイルドストロベリーの実は熟すとかぐわしい香りを放ち、下向きに実ります。食べるとちゃんと甘味もあり、色は基本的に赤色です。白や黄色の実をつける品種もあります。
花は白く丸みを帯びた5枚の花弁を持ち、大きさは1.5cm程度。葉は3つ葉で、へりが鋭くギザギザしているのが特徴です。暑さにはやや弱いですがあまり手をかけず育てられるので、ヘビイチゴではなくこちらが生えていたらむしろラッキーと言えるでしょう。
ヤブヘビイチゴ
ヤブヘビイチゴとヘビイチゴは非常によく似ており、生育環境もほぼ一緒なので分ける意味はそれほどないのですが、一応紹介させていただきます。
一番の違いは、「実の大きさが違う」ことです。ヤブヘビイチゴの方がヘビイチゴより2~3倍くらい大きく、表面にツヤがあります。ただし本家ヘビイチゴと同じく、食べてもおいしくはありません。
花は同じ黄色で葉の形状に若干の違いがありますが、並べて見て気づく程度の違いになります。もしヘビイチゴを育てようとしてヤブヘビイチゴと混生してしまっても、気にしないのがベスト。そのまま一緒に育てましょう。
ヘビイチゴの利用目的
さて、花はそれなりに愛らしいヘビイチゴですがお伝えしたとおり、実(正確には実ではなく偽果)は食べられません。それでは何のために育てるのか?ということになりますが、ヘビイチゴがガーデニングで果たせる役割が実はあります。
その役割とは、「グランドカバー」です。ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、どういう役割なのか説明して行きましょう。
グランドカバーとは
グランドカバーとは地面を覆う植物のことで、背が低く、踏圧や日陰に強くかつ育ちやすい植物が使われます。
地面の土が出ている部分を緑で覆ってくれることにより見栄えの改善や雑草の抑制、照り返しの抑制などの効果が期待できます。
さて、このグラウンドカバーにヘビイチゴが適している理由としては
- もともと雑草なので育ちやすく、管理が楽
- 背が低く邪魔にならない
- 繁殖力が高い
- 花や果実の色で適度に目を楽しませてくれる
といった理由があります。繁殖方法の項で後述しますが、ランナーを使って増えるの地面を覆っていく方向を誘導することも容易ですし、その途中にレンガやらコンクリートがあってもものともしません。
グランドカバー用の植物は市販のものでも色々ありますが、野草の中でここまで「使える」植物はなかなかないのではと思われます。
その他の使い道
寄せ植え
赤い実をパラパラと実らせた姿は、他の植物の引き立て役としては中々の適任です。
同じ野草であるシロツメクサと一緒に植えてもコントラストの綺麗な鉢になります。
リース
何より野草なので惜しげなく使えるのがいいところ。
花と実が同時に出るころに積んだものを使えば、それだけでも緑、赤・黄色とにぎやかなリースになります。密かに葉の形が良いのもポイントです。
ヘビイチゴの繁殖方法
ヘビイチゴは他のイチゴと同じように、ランナーと言う茎を伸ばして増えていきます。伸ばしたランナーが地面に着くと、そこから根付いて新しい株ができます。なので密度が低いときはこのランナーを切って近くに根付くようにしてやればいいですし、別のところをカバーさせたいときはランナーをそっちに持っていってあげましょう。
あらかじめ他の雑草を除去しておけば、どんどん広がっていきますので密度を高めるのはそれからでもいいでしょう。
また、実の周りにくっついている種でも増えます。鳥などが食べた後のフンからでも発芽しています。暖かい時期に実を適当に植えておけばそこから芽が出てきますので、気軽にやってみてもよいでしょう。
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ヘビイチゴの栽培管理
水やり
自然の雨だけでも十分育ちますので、あまり気をつかう必要はありません。
他の植物の水やりのついでにザーッとかけてあげましょう。
肥料
必要ありません。
暑さ・寒さ対策
寒さには強く、何もしなくても越冬します。ただ、夏の暑さがあまりに強いときはしおれてしまう場合もあるようです。
とはいえ、植える場所を選ぶ植物でもありませんので生き残った株から再度増やせばいいでしょう。
ヘビイチゴの果実について
上にも書きましたが、ヘビイチゴの実に見える赤い部分は偽果(ぎか)、つまり偽者の果実です。
本当の意味での果実は偽果の周りについているツブツブの種なんですね。これは普通のイチゴなどでも同じです。なお、毒はありません。
それはさておき、なんとかこの「実」を利用できないか?とお考えの場合、以下のような用途がありますのでご参考までに紹介させていただきます。
ジャム
数を集めて砂糖と一緒に煮詰めれば、一応ジャムにはなります。
他の果物と同じように水洗い⇒砂糖とレモンを加えて煮る⇒ビンにつめて冷やす、という過程をふめば作ることができます。ヘビイチゴ自体に味はないので砂糖はたっぷり目、酸味を加えるためにレモンは必須です。
果実と砂糖の比率についてはお好みのジャムのレシピを参考に、砂糖を多めに加えるようにしてください。
薬用酒
ヘビイチゴを焼酎に漬け込むとかゆみ止めになると言われています。果実酒作り用のホワイトリカーを用意し、果実:酒=1:3~4程度が適量です。
実際に使って効果を実感できるという例はあちこちで見かけることはできますが、ご使用の際は自己責任にてお願いいたします。
おわりに
さて、今回はヘビイチゴについて色々紹介させていただきましたが、意外と知らないこともあったのではないでしょうか。
なにぶん雑草なだけあって「放っておいても育つ!」で済ませることもできなくはなかったのですが、色々取り混ぜて「育て方」としてお送りいたしました。
最後にヘビイチゴの名前の由来ですが、実をヘビが食べるからという説が有力なようです。ただし、実際にはヘビも食べないんです。それくらい「無味」ということもありますが、あくまで「ヘビが食べそう」というイメージが先行した結果なんですね。
お庭に生えたヘビイチゴの味を体験してみると言うのも、ちょっとした話のタネにはなるかもしれません・・・!