古楽府「君子行」にある「李下に冠を正さず」の「李」のスモモです。基本的に東洋系の「ニホンスモモ」(プラム)をスモモと呼ぶことが多く、「ヨーロッパスモモ」はプルーンと呼ばれて流通しています。
スモモは、モモや梅の仲間であるアンズと同様にバラ科サクラ属の植物で、それなりに交雑親和性があったりするため、浜松市の一部地区ではニホンスモモと梅の雑種である「李梅(りばい)」と言う品種を栽培しています。
今回は、そんなスモモの育て方についてお話ししていこうと思います。
スモモの栽培時期と育成条件
- 日当たり:日なた
- 土壌酸度:中性〜弱酸性
- 株間:150cm〜
- 収穫時期:7月〜8月下旬
スモモの受粉樹
基本的に1本で結実するアンズや、1本で結実する品種が多いモモに比べると、スモモの場合は、自分の花粉では受精できず結実しない品種の方が多いです。
また、「1本で結実」と表記されている品種も、単に「1本で結実」が可能であると言うだけで、1本で育てるよりは受粉樹がある方が実つきが良くなります。なるべく2品種以上で育てましょう。
受粉樹として定評がある品種は「ハリウッド」「サンタローザ」「コチェコ」などになりますが、あくまでも受粉樹としての評価なので果実自体の食味は今ひとつと言った物も多いです。
例えば、「太陽」×「ハニーローザ」は最高の組み合わせと言う話があったり、「貴陽」×「コチェコ」で相性抜群と言う話があったりと、調べて行くと凄く奥が深いお話になります。
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スモモの植えつけ場所の準備
8号程度の大きな鉢を利用する手もありますが、ある程度のボリュームがでてくる果樹なので可能なら地植えにした方が良いでしょう。
モモと同様に、過湿な土壌を特に嫌う植物です。根は耐水性が弱く、空気を好むことから、プロの場合は、明きょ・暗きょを設置するなどしてとにかく排水と通気に気を使うそうです。また、日かげは苦手なので、充分な日照を確保できる場所を選びましょう。
スモモ類は耐寒性があり、高温乾燥にも耐える為、全国で栽培可能です。温度条件的には、年平均気温が7度以上であれば、-20度〜-25度に耐えることができます。そこら辺に関しては、モモよりも寒冷地に強い性質であると言えるでしょう。
ただし、開花期に霜に当たると結実しませんし、理想を言えば、開花期と収穫期に雨が少ない場所が適地です。開花期自体が、バラ科サクラ属の植物の中ではアンズやモモよりも遅いので、霜害が問題となる地域はそう多くは無さそうです。
植えつけの適期は基本的には秋ですが、寒冷地に強いとは言うものの、流石に根が活着する前に凍結してしまうとマズいので、特に寒い土地では春植えするのが良いでしょう。
植えつけ1ヶ月以上前の時期に、直径50cm、深さ50cm程度の穴を掘ります。掘り出した土5:腐葉土3:赤玉土中粒2の割合にしたところへ適量の苦土石灰を混合し、果樹用などのリン酸が多目な肥料を加えれば準備完了です。穴を埋め戻すと、土の分量が5割強増えるわけですから、当然、一段高い盛り土になると思いますが、そこに植える事で過湿を避けようと言う目論見なのはモモと同様です。
スモモの植えつけ・水やり
植えつけ作業は、古い根や土を取り除き、根が交差しないよう四方に広げ、切り接ぎ苗の場合は、必ず「接ぎ木部分が地上に出る」よう浅植えにします。
植えつけ後、接ぎ木部から30cm上の充実のよい部分で切り返し、支柱にしっかりと固定します。たっぷりと潅水したら植え付け作業は完了です。
根が活着したら水やりは控えめのほうがよく育ちます。特に、果実成熟期は水やりを抑えることで、甘い果実をならせることができます。
スモモの肥料
スモモの花芽形成は8〜9月です。特にこの時期に土壌中の窒素分が残留過多となると、枝葉の栄養成長が促進され、花芽がつかなくなるため、施肥は控えめにすることが重要です。
通年の施肥スケジュールとしては、収穫前の樹齢1〜2年の場合、10月に有機質肥料を施し、1〜2月に配合肥料を少量施しておけば良いでしょう。
結実収穫が活発になるような樹齢に成長したら、7月〜8月下旬の収穫終了後に、礼肥として速効性のスタンダードな化成肥料(8−8−8など)や粒状肥料などを控えめに施肥します。
スモモの整枝剪定と誘引
スモモの花芽は、前年にのびた長果枝・中果枝・短果枝に葉芽とは別々に着きます。特に、短果枝によく果実をつけるので、長く伸びた長果枝は12月に切り戻し、翌年に花芽をつける短果枝を多く発生させるような剪定を行ないます。
スモモの果樹自体を全く放置してしまうと簡単に2〜3mの高さに成長してしまい日常的な作業にも支障をきたします。そこで樹高を抑えて管理や収穫が容易になるよう、モモと同様に「開心自然形整枝」を行います。
幹から出た最も太い枝(主枝)を2本残し、それを横から見て「Yの字」、上から見て「一の字」っぽい感じになるように仕立てます。次いで、主枝から出た太めの枝(亜主枝)を2〜3本ずつ残した基本的な骨格を考えて行きます。どの枝から出た葉も効率良く光合成ができ、結実した際に擦れ合わないバランスのとれた枝の配置にする事が大切です。
骨格となる主枝・亜主枝がイメージできたら、それらの生育に邪魔になる枝や不要な枝を基部からカットします。その際、太い枝の切り口には、必ず「トップジンMペースト」などを塗布して保護する事を忘れないで下さい。不要な枝の間引きを終えたら、充実した枝の発生を目的として、主枝や亜主枝の先端は3分の1程度切り返します。主枝を40度程度の角度で上向きになるように支柱で誘引固定すれば「整枝」は完了です。
また、5〜6月には長く伸びそうな新梢をこまめに摘芯したり、切り詰めたりする事で、バランスの良いコンパクトな樹形に収めるように常に心掛けましょう。
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スモモの開花・摘果・収穫
果実が親指大になった頃から摘果を始め、満開後60日頃に仕上げ摘果を行います。摘果の目安は、1短果枝に1果として、縦径が長く緑色の濃い果実は大玉になりやすいので残します。奇形果、病害虫被害果、上向き果などを積極的に摘果します。
収穫適期は果皮の色や食味で判断します。スモモは成熟後の日持ちが短いものが多く、また、降雨で裂果し傷みやすいのでやや早めの収穫を心がけた方が良いでしょう。
収穫後、まだ酸味が強いと感じたら、3〜7日程度常温で放置し成熟させる「酸味抜き」を行います。食べ頃の目安は、実が少し柔らかく香りが立ってきたあたりです。当然、腐りやすくなっていますから「酸味抜き」終了後は、早めに食べて下さいね。
スモモの病害虫
ふくろみ病、灰星病、アブラムシ類、カイガラムシ類、シンクイムシ類、コガネムシ類に注意します。
特に「ふくろみ病」は、スモモに多く発生する幼果が肥大してそら豆のさやのように奇形化する病害ですが、冬期に適切な剪定を行うとともに石灰硫黄合剤の7倍液を散布する事で、充分に予防が可能です。また、発病した果実は翌年の伝染源となるので早めに取り除きます。
なお、品種別の発生は「ソルダム」に多く、「大石早生」や「ビューティー」に少ないと言われています。他の病害虫に関しては、適宜、通常の対処法で治療や駆除を行って下さい。
おわりに
素人が栽培する場合には、モモと比べると栽培可能な地域は多いものの、特に簡単になる訳でもありません。
むしろ、単純に省スペースと言う点のみを比較すると、自家結実性が強い品種の多いモモに負けてしまうかも知れませんね。
以上、スモモの育て方をまとめてみました。