キンカンは、ミカンを小さくしたような形が可愛らしく、観賞用としても人気の高い植物です。成長すると1mから2mほどの高さまで成長し、葉は楕円形でツヤツヤとした光沢があり、濃い緑色をしています。
耐寒性が強いため、基本的には地植えで育てますが、小さく育てたい場合は鉢植えでも育てられます。キンカンは白く可愛らしい小さな花を咲かせますので、果実のほか、お部屋に飾って美しい花を楽しむのもおすすめです。
今回は、そんなキンカンの育て方についてご紹介していきたいと思います。
Contents
キンカンの日当たりと置き場所
キンカンは-5℃程度の寒さまで耐えることができますが、日当たりの良い場所を好みます。そのため、霜にあたった程度で枯れることはありません。
とはいえ、なるべく良い環境で育てるためにも日当たりが良く、風通しの良い場所で育てましょう。ただし、日当たりが良くても西日が当たる場所を避け、寒い時期に冷たい風が直に当たる場所は避けましょう。
キンカンの水やり
キンカンを地植えにするのであれば特に水やりの必要はありませんが、気温が高くなる夏や成長期である春は、土の表面の状態を良く観察し、乾いていたら水を与えましょう。
鉢植えにする場合は土の表面が乾いていたらたっぷりと水を与えます。キンカンは厳しい環境でも育てられる比較的丈夫な植物ではありますが、乾燥させすぎると花が付きにくくなり、花が育たないと実も付かなくなりますので注意しましょう。
また、凍結しないように水やりは午前中に与えてください。
キンカンの用土と肥料
キンカンは水はけのよい土を好む植物です。ご自分で土を作る場合は、腐葉土と赤玉土を3:7の割合で混ぜ合わせたものを使いましょう。
肥料は、地植えにする場合は植え付けをするときと2月と10月、鉢植えにする場合は2月、5月、10月に与えます。
より実が付きやすくなるように7月~9月、鉢植えにする場合は開花前の5月~6月にも肥料を与えましょう。肥料は化成肥料か有機肥料を選び、株の根元に蒔いておきます。
キンカンの種まき
キンカンは寒い時期には発芽しませんので、3月~5月頃が適しています。
始めは育苗ポットを使って育てますが、鉢植えに種を蒔く場合には鉢の8割程度の深さまで土を入れ、指か割り箸を使って2cm~3cm程の深さに穴を開け、2~3粒を目安に種を蒔きます。
上から軽く土を被せた後は、発芽するまでたっぷりと水を与えましょう。
キンカンの植え替え方
キンカンの苗木を鉢植えにする場合には、3月から4月、遅くとも5月までには植え替えを行いましょう。
- まず鉢を用意したらんだはずの底に鉢底石を敷き、赤球土を全体の7割程度、腐葉土を全体の 3割程度の割合で混ぜ合せます。用意できなかった場合は市販の果樹用の培養土を使用してもかまいません。
- 鉢の半分から 1/3程度の深さに土を入れ、苗木を鉢の中心に置きます。
- 苗木が倒れないよう調整しながら高さを決め、今度は鉢の8割程度の深さまで土を入れていきます。
- しっかりと根が張るまでは、支柱を立てて 8の字になるよう紐で結び固定します。使用する紐はビニール紐でもかまいません。
- 植え替えが終わった後は、たっぷりと水を与え日当たりの良い場所で半日陰になるよう育てます。
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地植えにする場合
キンカンを地植えにする場合には、3月から遅くとも5月までに行います。雪が降らない温かい地方の場合は10月中旬ごろから下旬にかけても植え付けが可能です。
キンカンの苗木を地植えにする場合には日当たりの良い場所を選び、水はけがよいかについても注意しましょう。
キンカンは、成長すると 1mから2mほどの高さまで成長しますので、しっかりと日当たりが確保できるかどうか、季節による違いについても確認してください。また、どの程度の大きさに育てるかによって、周囲とどの程度間隔をとるかについても考えましょう。
- 場所を決めたら直径と深さが50cm程度になるように穴を掘り、腐葉土と赤球土を7:3の割合で混ぜ合せ土を作ります。
- もともと植えてあった鉢からキンカンの苗木を取り出し、根の周りについた土を柔らかくほぐします。
- 掘った穴の半分から1/3程度まで土を入れ、苗木の根が全体に広がるようにして穴の中心に置きます。
- 苗木の根元まで土を入れたら、手の平を使って上から抑え込むように土を固めます。
- 鉢植えの時と同じように、苗木が倒れてしまわないようしっかりと根付くまで支柱を立てておき、紐を8の字になるように結んで固定します。
以上が、作業手順となります。
しっかりと根付くまでは、たっぷりと水を与えましょう。
キンカンの剪定と切り戻し
キンカンは植え付けを行ってから3年経過するまでに樹形を形作っておきましょう。それ以降はあまりしっかりと剪定を行わず、軽く間引きする程度にとどめます。
3年経過した後であまりしっかりと剪定をしてしまうと、実が付きにくくなりますので注意して下さい。植え付けを行って3年目までは枝を 1/3程度の長さに切りそろえ、細かい枝が張り出している部分は密生して風通しが悪くなるためカットして取り除いておきましょう。キンカンの樹形は「ほうき」を逆さにした形をイメージして下さい。
3年目以降は、枝同士が密集して日当たりや風通しが悪くなっているところを剪定するだけにとどめましょう。あまりしっかりと選定をしてしまうと、実が付きにくくなってしまうことのほかに、枝をカットした部分から雑菌が入り病気にかかりやすくなって枯れてしまうことがあります。
キンカンの摘果
キンカンの花は、7月から8月にかけてと10月頃の年2回咲きます。
質の良い実を収穫するためにも、秋に咲いた花はすべて取り除いておき、枝を疲れさせないようにしましょう。夏に咲いた花に実をつけた場合には摘果を行います。
キンカンは1か所にまとまって実をつけるので、大きな実を2つか3つほど選び、後は摘み取っておきましょう。
キンカンの収穫方法
キンカンの種類にもよりますが、キンカンの収穫は2月から5月頃に行います。だいたい150日程度経過したころを目安に収穫すると良いでしょう。キンカンは植え付けをしてからすぐは実をつけませんが 3年ほど経過するとたくさん実を付けるようになります。
特に夏に咲く花が最も多く実を付けますが、鉢植えにする場合には、そのままでは授粉できませんので、人工授粉を行います。人工授粉するには、花を咲かせた後で筆や綿棒を使って花の中心を優しく撫でるだけで簡単に行えます。
実をつけたら9月ごろに摘果して、果実の数を調整して下さい。適度に実を取り除いておかないと、栄養が足りず味が落ちるため、一本の枝に付き1個から2個、全体に10個から15個程度実を付けるように調整します。鉢植えの場合は全体で8個から10個程度実を付けるように調整しましょう。
花を咲かせてから150日ぐらい経過すると実が熟してオレンジ色になってきますので、それが収穫のタイミングとなります。まだ黄色いうちに収穫してしまうと、酸味が強すぎて食べることができません。収穫したキンカンの実は生で食べることもできますが、煮詰めてジャムにするのもおすすめです。
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キンカンの病害虫
病気を防ぐためには、日当たりと水はけに注意することが重要なポイントとなりますが、キンカンなどの果樹は病害虫のほか、鳥害にも気をつけなければいけません。
キンカンはほかの植物に比べ丈夫ではありますが、葉や幹などに症状が現れる潰瘍病やソウカ病などのほか、黒点病にもかかりやすいため注意が必要です。
それでは次に、キンカンがかかりやすい病気と注意するべき害虫について紹介します。
アブラムシ
アブラムシは春から秋にかけて発生し、特に3月から5月にかけて多く発生しますので注意が必要です。特に葉がまだ若くやわらかい場合は、葉の裏にアブラムシが付くことがありますので注意しましょう。
アブラムシが寄生すると葉から栄養を吸収して枯らせてしまうことがあります。アブラムシを取り除くには、霧吹きに水を入れて吹きかけるだけで簡単に取り除くことができますが、範囲が広い場合にはホースを使って水を吹きかけてあげましょう。
また、水に食器用洗剤や牛乳を混ぜて吹きかけるととりのぞきやすくなります。
キアゲハ
キアゲハの幼虫は食慾旺盛で、葉を食べ尽くし枯らせてしまうことがありますので、見つけた時にはすぐに取り除いてください。
ピンセットや割りばしで一つずつ摘まみ取る方法もありますが、殺虫剤を散布してもかまいません。果実を食用にするときはなるべく殺虫剤を使わずピンセットや割りばしを使って根気よく取り除いた方がよいでしょう。
潰瘍病
潰瘍病は、柑橘系の樹木がかかりやすい病気の一つです。
潰瘍病に感染すると、葉のほかに枝や果実に感染し、症状が進むと実や葉が落ちて収穫できなくなってしまいます。梅雨が過ぎて台風の時期になると発生しやすくなりますので注意しましょう。
すでに潰瘍病に感染してしまっている場合には、殺虫剤を散布して対策を講じましょう。
ソウカ病
ソウカ病に感染すると葉や果実にいぼ状の病斑が現れます。
特に気温が低下し雨の量が増えると発生しやすくなります。ソウカ病の発生を抑えるには、病斑が現れた葉や実を早めに取り除いて被害の拡大を防ぎましょう。
そのあとで殺虫剤を散布します。
黒点病
黒点病はカビが原因で発生する病気です。黒点病になると、葉っぱや茎に黒い斑点状の病斑が現れます。これをそのまま放置すると徐々に黒点が大きくなり、斑点同士がつながってどんどん被害が拡大してしまいます。
黒点病に感染してしまった場合には、病斑が現れた部分を早目に取り除いてください。特に気温が20℃から25℃と暖かくなり湿気が多い梅雨の時期に発生しやすいので注意しましょう。
雨が降ると感染が広がりますので、殺虫剤を散布して拡大を防いでください。キンカンの場合は1週間ごとに殺虫剤を散布し、定期的に管理すると病気にかかりにくくなります。
見た目にも可愛いキンカンを美味しく育てよう
キンカンは見栄えもよく、果実は皮ごと食べることができるなど、いろいろと楽しむことができる植物です。また、果実はビタミンを多く含み栄養価が高いので、生で食べるほかジャムやサラダ、甘露煮を作って楽しむのもおすすめです。
キンカンの実は、小さなミカンのようだ可愛らしく、玄関やお部屋に飾り付けたりインテリアとしても役立ちます。
また、丈夫な植物でもありますので、果実を育てるのは初めてという方はまず、キンカンを育てて楽しんでみてはいかがでしょうか。