来春に向けて、春の花を代表する人気のアネモネを栽培してみませんか?
一重咲きのものから八重咲きのもの、花色も桃系、青系、赤系、白系など様々です。草丈も80cm超えの高性のものから10cm程度の可憐な矮性種まで、花径も大小様々で切花用に出荷される品種から、カーペット状に群生させてグランドカバーに用いるのに適した品種まで存在します。
今回は、アネモネの種まきからの育て方・栽培時期や花が咲いた後の手入れについてお話ししていきたいと思います。
Contents
アネモネについて
前述のように、種類の多いアネモネは、「果たして同じ品種の植物なのか…?」と首を傾げたくなる位バリエーションに富んでいます。
これらの園芸的に「アネモネ」と呼ばれている植物のルーツは、主に地中海方面を原産地とする野生種「アネモネ・コロナリア」などにたどり着きます。中国から古い時代に入ってきた帰化植物であるシュウメイギク(秋明菊、Anemone hupehensis var. japonica)などもアネモネの仲間です。
ちなみに、アネモネには花びらはありません。アネモネの花びらのように見えるものは、葉が変形した「萼(がく)」の部分です。八重咲きのものは雄しべが花びらのようになっている場合もあります。
アネモネの栽培時期と育成条件
- 日当たり:日なた
- 土壌酸度:中性〜弱アルカリ性
- 株間:25cm
一般的な品種では球根で販売されている事が多いですが、希少な品種などは苗の状態で販売されている事が多いです。
これは、吸水処理(催芽処理)に若干のテクニックを要する事に起因するのでしょう。
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アネモネの植えつけ場所の準備
理想的な植えつけ場所は、日当たりと風通しが良く、水はけ良好な砂質土の場所です。逆に水はけの悪いジメジメした場所に植えると失敗する事が多いので、場所の選定には注意が必要です。
酸性土壌を嫌うので、植えつけの1カ月程度前に1平方メートルに約100gの苦土石灰を入れ、30〜40cmほど深く耕しておきます。
10日程放置した後、有機質肥料として牛ふんや腐葉土を土の量の約20%混ぜれば準備完了です。これらの有機質肥料は細根を発達させる働きがあります。植えつけまでの間、適宜散水して土壌を安定させます。
鉢植えにする場合には、市販の草花用培養土で構いませんが、特に水はけが重視されますのでパーライトなどが配合されている培養土を選択するか、場合によっては山野草用の培養土などを混ぜ合わせて利用すると良いでしょう。なお、病気の発生を抑えるため、新品の培養土を使用をおすすめします。
吸水処理(催芽処理)
アネモネの球根は、例えば、チューリップなどのように、そのまま放っておいても自然に芽を出すタイプの球根と異なり、カサカサの「乾物」のような状態になって夏を越します。
そしてこの球根を目覚めさせる吸水処理(催芽処理)が、少しばかりややこしいです。なお、作業が完了した時点ですぐに植えつけるので、地温が下がる10月下旬頃以降に行って下さい。気温・地温が高い時期に行うと、球根を腐らせる事となります。
水受け皿でもイチゴパックなどでも構いません。適当な容器に湿らせたバーミキュライトや水苔などを敷いて、その上に球根の尖った方を下にして軽く沈め、水をゆっくり吸わせます。
参考動画
バーミキュライトや水苔などが手元に無い場合には、食器洗い用のスポンジやペーパータオルなどで代用してもなんとかなります。
要は、あんまりビチャビチャにしないで、「乾物」がゆっくりと水を吸い込んで球根らしい感じに復活するのを気長に待つイメージです。適度な湿り気を維持しつつ、涼しい場所で3〜4日管理します。
間違っても「えーい面倒臭い!」と短気を起こして、球根をバケツの水に放り込んで水を吸わせたりしないで下さい。球根が腐ってしまいますから…。
植えつけ
水を吸ってふくらんだら、すぐに植えつけ作業を開始します。放置すると発根して、植えつけ時、根を傷めてしまいますので、吸水処理段階ではその辺の観察を怠らない様にして下さい。
球根の尖った方が下、平らな方が上なので、必ず方向を確認しながら植えつけます。中には、どちらが下なのか良くわからない形の球根もあると思いますが、そんな場合はイチかバチかの勝負に出ずに横倒しにして植えつけておきましょう。
球根を植える深さは、東京周辺では約3〜5cm程度、地面が深く凍るような寒冷地では7〜8cm程度です。完熟有機質を用いてマルチングをするなど、工夫次第で寒冷地でも、もう少し浅く植えられる可能性はあります。あまり深植えすると土中で殖える芽の数が少なくなり、花立ちも悪くなるので注意します。
この段階で、立枯病などの予防のために、殺菌剤「オーソサイド水和剤80」を球根にまぶしてから植えつけます。鉢植えの場合は、6合鉢に3球を目安として、深さ2cm程度で植えつけます。地植え鉢植え、どちらの場合も植えつけ時にたっぷりと水やりをして下さい。
アネモネの給水処理の裏技
アネモネの吸水処理の際、球根に「オーソサイド水和剤80」をまぶしてから、密封保存容器を使って吸水処理し「冷蔵庫」で約1カ月保管します。
その後は、上記した通常通りの方法で植えつけ、栽培すると、少し早めに開花が始まります。
なお、冷蔵庫で保管する際の誤食にはくれぐれもご注意下さい。
アネモネの水やり
過湿を嫌うので、特に地植えの場合には、毎日定期的に水やりするのではなく、その後、芽が出るまでは土の状態をしっかりと観察しながら「表土が乾いたらしっかり水やりをする」感じでメリハリをつけて管理しましょう。
鉢植えの場合は、鉢土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出るまでたっぷりと水やりをして下さい。逆に、極端に乾燥させると枯死する事があるので、そこら辺も頭に入れた管理が必要です。
アネモネの肥料について
見ての通り球根にタップリと養分を蓄えていて…というタイプの植物ではありません。
2月中旬以降には、生育の促進と発蕾をよくするために、速効性の液体肥料を規定通りの濃度・量で2週間に1回を目途のペースで与えます。
花後にはお礼肥として、顆粒状の化成肥料を散布すると良いでしょう。
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アネモネの病気と害虫
アネモネは環境のよい場所で栽培すると、ほとんど病害虫のない丈夫で作りやすい花ですが、立枯病が発生する事があります。
立枯病は土壌中にいる「カビ」が原因で起こる病気で、伝染性の病気なので放置すると他の株に次々と拡がってしまうため早期に対処する事が大切です。罹病株は引き抜いて処分するしか選択肢はありません。
対策は前述した通り、殺菌剤「オーソサイド水和剤80」を用いた予防のみとなります。
鉢植えで、新しい培養土を使って栽培する場合には、特に心配する必要も無いでしょう。
害虫としては、ネキリムシとアブラムシには要注意です。ネキリムシ対策は、ペレット型の殺虫剤「ネキリベイト」を株元にばらまき、誘い出して食べさせて退治します。アブラムシは、他の植物と同様、生育中、葉に発生する場合があるので、適宜、殺虫剤で駆除します。また、てんとう虫が天敵となります。
アネモネの花が咲いた後の管理
アネモネは綿毛のついたタネをつけやすいので、特にタネからの栽培にチャレンジしてみよう!という場合を除いて、花色がくすんできたらすぐに花茎ごと切るか、花茎を地際から引き抜いて結実を防ぎます。
なお、キンポウゲ科の植物には、汁液への接触により皮膚炎や水疱を起こすものが多く、アネモネもその例外ではありません。花茎を切る際など、汁液に決して触れないようにしましょう。
どの植物栽培でも同じですが、花がらを残しておくとタネをつけるために養分が使われてしまい、発蕾の妨げになるだけでは無く、枯れた花がらが病気の原因にもなるので、こまめに管理しましょう。株の上に散った花がらも忘れずに取り除きます。
ちなみに、タネまき適期の気温や生育期の気候との関係から、冷涼地以外ではタネからの栽培はかなり難しいものとなってしまうのでオススメはしません。それよりも、充実させた球根を掘り上げて育てる方が簡単ですから…。
球根掘り上げ
地上部が黄色くなって枯れ始める6月頃、地下部を掘り上げ、球根を切り分けます。
「オーソサイド水和剤80」をまぶして十分に乾かし、来シーズンの植え付け適期まで、ネット袋などに入れて、風通しがよく雨のかからない涼しい日陰に吊るして保管すると言うのが理想ですが、全部の条件が揃った都合の良い場所はあんまりないですが、湿気させない事を最優先して探してみて下さい。
鉢植えの場合は、地上部を切り、秋も深まるまで(気温約15℃)、鉢のままで雨のかからない所に保管しておいても構いません。秋になったら、そのまま水やり…なんて横着をすると失敗するので、時期が来たらちゃんと掘り上げて吸水処理をしてやって下さい。
おわりに
今回は、アネモネの育て方についてお話ししてきましたが、いかがでしたか?
吸水処理(催芽処理)と殺菌消毒が栽培のポイントと言ったところでしょうか。
また、聞き分けもなく花摘みをしてしまう年頃のお子さんがいる場合には、汁液に触れると厄介なので、お子さんがもう少し成長するまでは栽培を控えた方が無難かもしれません。