秋から冬の季節の変わり目においしい果物と言えば、オレンジ色に色づいた柿です。
とてもジューシーで甘くて、果肉も柔らかい柿やお正月の飾りにも欠かせない渋柿を干して作る干し柿があります。家の軒先に渋柿がぶら下がっている景色も日本らしさを感じるのではないでしょうか。
今回は柿の苗育生から収穫までの育て方、栽培時期や病気・害虫の対策についてお話ししていきたいと思います。
柿の栽培時期と育成条件
栽培:苗から
日当たり:日なた
最適温度:-13℃まで耐える(寒さにも暑さにも強い)
樹高:2~5m
植え付け期:11月~3月
収穫期:10月中旬~11月下旬(品種によって異なる)
収穫までにかかる期間:植え付けから4~5年
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柿の苗木の育成・植え付け
苗木を植え付けるときに大切なのは、水はけと水もちが良いことです。土を準備する場合は、赤玉土小粒7~8、腐葉土3~2の配合土を使うようにしますが、水もちと水はけさえよければ、どんな土でも育ちます。
鉢植えから露地植えに植え替える時期は、11月~3月です。鉢植えで育てていく場合は、通気をよくするため、根を詰まらせないためにも2~3年に1回ほど植え替えを行うようにしましょう。
鉢に植え付けてから、枝葉を増やしたのちに露地に定植させる場合は、3年ほどたった落葉期に鉢から根元を崩さないように気を付けながら植え替えを行います。
柿の栽培管理
水やり
柿は乾燥に弱いことで有名です。乾燥してしまうと根が傷んでしまいます。鉢栽培の場合に気を付けておきたいのは、5月~9月は成長期にあたるため、朝と夕の2回はたっぷりと水やりを行うようにします。
露地植えの場合は、植え付け後は、土の表面が乾いたら水やりをするようにするとよいでしょう。その後は水やりの必要はありません。
肥料
露地植えの場合、12月ごとに肥料をあげるようにします。その後の追肥は、7月、収穫後の10月に与えるようにしましょう。
肥料は、チッソN、リン酸P、カリKなど含む肥料を用いるようにします。
下記の【柿がおいしくなる肥料】は、チッソN、リン酸P、カリK以外に、柿のおいしさを引き立てる【アミノ酸】なども含んだ有機肥料になります。
柿農家さん愛用している、安心感のある有機肥料です。
剪定
柿を全く剪定せずに放置していると、隔年結果という実ができた翌年は、実がつかなくなります。この隔年結果が起きないようにするために1月ごろを目安に剪定を行うようにしましょう。
柿の実を大きくするためには、枝の先端をカットするようにします。これは1本の木に多くの実をつけさせないようにするためです。多くの実をつけてしまうと、栄養が分散されてしまうため、小さいサイズの実が多くできます。実の数を減らすことで、一つ一つの実にたっぷりと栄養が届くようになるので実が大きくなります。
太陽光がまんべんなく当たるようにするための剪定は、枝の密度を減らすことを意識して剪定を行います。枝の間隔をあけながら、枝の根元から切り落とすようにして剪定を行っていきます。
収穫しやすいように樹形を整えるために剪定を行う場合は、主幹を切り落とすことで、上に木が伸びるのではなく、横に伸びていくように整えていきます。木の高さを低く、枝が横に広がるように剪定をすれば、収穫もとても楽になります。
摘蕾
柿の実を大きくするために必要なのが摘蕾です。柿の花が開花する20日ほど前、目安は5月の初め頃です。
1枝に対し、下向きのヘタが大きめの1~2蕾を残すようにするとよいでしょう。
摘果
摘蕾を行っていると、生理落下が少なくはなりますが、完全になくなるわけではありません。この生理落下が落ち着いた6月末ごろを目安に摘果を行うようにします。
摘果を行うことで実を大きくすることにつながります。また、養分が十分に行き渡りやすくなるため、糖度が増し、色つやのいい果実が実りやすくなります。
勝手に実が落ちてしまうこと。花の後に実が付きだしたころに、自然に実が落ちてしまうことがあります。
日照不足や栄養不足が原因ともいわれますが、摘蕾が適切に行われていない場合に起こりやすい現象です。
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柿の収穫時期と収穫方法
柿の収穫の目安は、オレンジ色、柿色に色づいてきたときです。柿の種類によっても収穫の時期は少し違いますが、収穫時期には、果実を木に残さずにすべて収穫するようにします。
木に果実を残したままにしておくと木の養分がどんどん果実に注がれてしまうので、翌年の木の生育に影響を及ぼしてしまいます。
皮の色にむらがある場合は、まだ収穫はしないようにします。しばらくしても色むらがある場合は、日が良く当たるように近くの葉をとるようにして、皮の色が均一になるのを待ってから収穫します。
受粉
柿は、雌雄異花という特性があるために、ほとんどの品種が雄花を付けないにもかかわらず、受粉をしなくても実をつけます。
渋柿のほうが、受粉しなくても実をつける単為結果性が強く、実をつけやすい傾向にあります。
受粉をさせたほうが種も数も多くなり、渋が抜けやすく、品質が良くなります。基本的には人工受粉させる必要はありませんが、確実においしい柿の実をつけたい場合は、受粉も視野に入れておきましょう。
害虫と病気
柿は、どうしても害虫がついてしまったり、病気にかかってしまうことがあります。
柿が影響を受けやすい害虫と病気はどのようなものでしょうか。
炭そ病
雨水によって菌が飛び散ることによっておこる病気。雨や台風が多い年にかかりやすい病気です。
枝や果実に暗褐色の斑点ができ、枯らしてしまいます。病気になったら病気の部分をすぐに切り落とすようにします。ベントレー水和剤を散布し、病気が拡大しないように食い止めましょう。
落葉病
葉っぱに黒い斑点ができる病気です。葉っぱがどんどん落ちていくので目に見えて病気にかかっているのに気づきやすいのがこの落葉病です。
雨が長く続くことで、根がダメージを受けてしまうと発生しやすい病気ですが、5~7月に薬剤を散布することで予防できます。雨が続きやすい梅雨入り前には、一度薬剤を散布しておくと安心です。
ヘタムシ
カキミガの幼虫で、柿のへたを落として、実を落としてしまうかなり困った害虫がヘタムシです。
実の大きさが3cmほどになったときと熟したときに発生することが多いので注意しておきましょう。ヘタムシは実の中ではなく、ヘタに潜んでいます。対策としては、早めに薬剤を散布して駆除しておくほかありません。
柿の増やし方
柿の木は、種を植えておくと1年ほどで接ぎ木用の台木に成長させることができます。この台木に接ぎ木を行うことで柿の木を増やすことができます。
この切りつぎを行う場合は3月中旬から下旬が最も適した時期と言われ、太い枝につぐ場合だと、4月中旬から下旬を目安とします。
柿の種類・品種選び
柿の種類を大きく分けると甘柿と渋柿の2つに分けられます。渋みがあるかないかで分けられます。人気のある柿の品種を紹介します。
- 富有:国内で栽培される甘柿のうちの50%はこの富有柿。形が良く、ふっくら、つやつやとしている
- 太秋:最近人気のある大玉の甘柿。サクサクとした食感で果汁が多く、とても甘い
- 蜂屋:古くからある渋柿。しっかりと甘みがあり、水分と種が少ないため、干し柿にぴったり
- 八珍:平核無(ひらたねなし)という品種の渋柿。種がないこともあり人気の品種。水分や甘みも多い
おわりに
「桃栗3年、柿8年」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。実際に種から栽培を始めると実をつけるようになるまでには、8年もかかってしまいます。
しかし、実が付くようになれば、そのあとは20年以上も実をつけ続ける木です。果樹の中では、初心者にも育てやすいもののひとつです。
ゆっくりと時の流れを感じながら、柿を育てるのも一つの醍醐味だと思い、おいしい実をつけるまでのんびりと柿の成長と向き合ってみてはいかがでしょうか。