桜は昔から日本を象徴する花として多くの人に好まれてきました。
毎年春の訪れを知らせてくれる桜ですが、ぱっと咲いて散るその姿から、はかなさの象徴ともされています。
今回は、桜の苗木からの育成方法についてご紹介します。
Contents
桜の栽培時期と育成条件
- 日当たり:日なた
- 育成適温:品種により異なる
- 用途:地植え・鉢植え
- 耐寒性:やや弱い 耐暑性:やや強い
- 樹高:3~20m
- 植えつけ期:11月~3月
- 開花期:3月中旬から5月
桜の種類
桜の木を想像する時、立派に大きく育ったそびえ立つ桜や桜並木を想像する人も多いと思いますが、鉢植えで小さく育てることも可能です。
コンパクトな大きさで、手入れがしやすく初心者でも育てやすい桜の品種を紹介します。
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一重咲きの品種(花びらが重なり合っていない花を咲かせます)
河津桜
静岡県の河津町に多く自生することから名前が付けられました。早咲きで2月頃に開花し、淡紅色の花色が特徴です。
また、開花時期が1ヶ月間ほどあり、長い間花を楽しむことができます。
マメザクラ
富士山や箱根の周辺に自生しており、花が小さく樹高も大きくて10m程度です。薄紅または白色で、花が下を向いて咲くのが特徴です。
また、-20℃の寒さにも耐えるほど耐寒性のある品種です。
八重咲きの品種(花びらが幾重にも重なり、華やかで豪華な印象)
天の川
横に向かって広がらず、上に真っ直ぐ育つことからこの名前が付けられました。
薄いピンクの花を咲かせ、綺麗な若草色の葉とのコントラストが楽しめます。
旭山
ギザギザした葉と薄ピンクの花が特徴的です。
盆栽仕立てにして、楽しむこともできます。
桜の苗の選択
ホームセンターなどの販売店で桜の苗を購入する時は、前もってどの品種を育てるか決めておきましょう。
桜の品種は約300種類以上もあると言われていますが、大きくなる桜は広い場所を要し、小さい品種であれば鉢植えや室内の狭い場所でも育成することが可能です。
- 幹が太くしっかりしていて、真っ直ぐに伸びている
- 茎・芽・樹皮の色つやが良く、光沢がある
- 根の分岐が多い
これらの条件を満たす苗を選ぶようにしましょう。
また、根元にシンクイムシやカイガラムシなどの害虫がいないかどうかのチェックもしましょう。
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桜の土作り
桜の土作りは、地植えの場合と鉢植えの場合で異なります。
下記を参考にしてみてください。
地植えの場合
特に土を選びませんが、栄養が多く、水もち水はけの良い環境を好みます。
庭の土に、黒土、腐葉土、硬質の赤玉小粒を混ぜましょう。
鉢植えの場合
赤玉土中粒:川砂:腐葉土を5:2:3の割合で混ぜた土を作りましょう。
鉢の底に敷くゴロ土も用意します。
ゴロ土とは
鉢の底に敷く際に使用される、大粒の石を指します。軽石、大粒の赤玉土、発泡スチロールを細かくしたもの、大粒のパールライトなどがゴロ土として使用できます。
目的は、通気性を良くすること。大粒の石などを鉢の底に敷くことにより、鉢の中の空気の流れが良くなります。
その結果、通気性や水はけが良くなる・鉢土が流れ出るのを抑える・根腐れを防止する、などのメリットがあります。
桜の植え付け
桜の植え付け時期は11~12月上旬、2月下旬~3月中旬の2回あります。
桜は寒さに弱いため、12月下旬~2月上旬までの寒い時期に植え付けを行うと、傷む可能性があるので、この時期は避けるようにしましょう。
- 植え付けの前に1時間ほど、水の張ったバケツに根全体をつけておく
- 長く伸びている根を切る
- 根を広げた時の大きさよりも1回り大きな穴を堀り、根を広げながら土を入れて植え付ける(この時、最初に元肥を入れるのがポイント)
- 支柱を立てる(シュロ縄・麻ロール・麻ひもなどを使用すると良い)
- 苗木より、最低でも1回り大きい鉢を用意する
- 苗の根鉢を1/3くらい崩し、長く伸びている根は切る
- 鉢底に鉢底ネット、ゴロ土を敷き、用意しておいた土を入れ植え付ける
- つぎ口(根と幹の境目)を土の中に約3㎝埋める
- 苗木が倒れるのを防ぐ為、支柱を立てる(シュロ縄・麻ロール・麻ひもなどを使用すると良い)
鉢植えの場合は、桜の木が大きくなるにつれて植え替えが必要です。
2年に1回の頻度で行うと良いでしょう。
桜の水やり
次は、桜の水やりについてです。
これも、地植えと鉢植えで対応が異なりますので注意してください。
地植えの場合
基本的に夏以外は水やりの必要はありません。
夏場に天気の良い日が続くなどして、土が乾燥した状態になった場合は、朝か夕方に充分に水を与えて下さい。
鉢植えの場合
表面の土が白くなり乾いたら、朝にたっぷりと水を与えて下さい。
桜の肥料
地植えの場合
晩秋から冬にかけての休眠期に遅効性の有機質肥料を使い「寒肥」を行います。寒肥は、株元の近くに数ヶ所穴を堀り、肥料を入れます。
また、桜の花が咲いた後に「お礼肥」として施肥を行いましょう。お礼肥も寒肥と同じ要領で、必ず穴を掘って行います。
穴を掘る理由は、土の上に肥料を撒くと、桜の根が地上に出てくるためです。
鉢植えの場合
固形の骨粉入り醗酵油粕を花が咲く1ヶ月半前・花後・秋口にあげます。
合計3回あげることになるので、忘れないようにしてくださいね。
「寒肥(かんごえ)」「お礼肥(おれいごえ)」とは?
「寒肥」は休眠中の植物に与える肥料のことを指し、ゆっくり土壌改良とすることが目的です。遅効性の有機質肥料が適しており、株元から少し離れた所に穴を掘って、その穴に肥料を入れます。
この肥料は、冬の間に時間をかけて少しずつ分解されて、春になって効果が出てきます。
「お礼肥」は追肥の一種で、植物が花を咲かせた後や果実を実らせた後など、植物にエネルギーが足りない状態の時に、栄養を補給するために行うものです。速効性のある化成肥料や液肥などが適しています。
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桜に発生しやすい害虫と害虫病
桜は病害虫にかかりやすい樹木なので、しっかりと対策と行うことが必要です。
桜のかかりやすい病気について、下記にまとめましたので確認しておいてください。
テング巣病
ソメイヨシノに多く発生する病気で、枝の一部にホウキのような細くて糸状の枝が沢山出てきます。テング巣病に感染している枝には花が咲くことはありません。
使用したハサミを介して他の桜に感染する可能性があるので、感染した桜で使用したハサミなどの道具は、必ず消毒するようにしましょう。
見つけたらすぐに付け根から切除し、切り口に癒合剤を塗るようにします。休眠期に数回、銅水和剤や石灰硫黄合剤を散布すると発生の予防になります。
オビカレハ
4~6月に太い枝の分岐した場所に発生することが多い害虫です。葉を食害し、糸で巣を作ります。
幼虫の時に発見した時は、スミチオンの散布が効果的です。また、休眠期にリング状の形をしている卵を発見したら、取り除くようにしましょう。
アメリカシリヒトリ
6月または8月下旬~9月中旬にかけて枝に発生する毛虫です。糸で巣を作り、葉を食害します。
夏がきて成虫になると白い蛾になり、葉に卵を産み付けます。幼虫を発見したら、1週間おきに2回。スミチオンまたはオルトランを散布しましょう。
桜の剪定
桜の剪定は、12~3月初旬に終わらせるようにします。
桜は基本的に、剪定を嫌う樹木です。桜の太い枝を切ることにより、長い間花が咲かなくなったり、切り口から雨水や菌が入り込んで枯れたり腐ったりする可能性が出るからです。
病気にかかった枝や枯れている枝、邪魔な枝のみを切るようにしましょう。切り口には、必ず癒合剤を塗るようにしてください。希望の樹形がある場合は、なるべく苗木のうちから整えるのがポイントです。
サクランボの収穫
桜の一種であるセイヨウミザクラ(西洋実桜)を育てれば、サクランボを収穫することができます。
日本では、北海道・新潟・山梨・長野・福島・山形など、比較的涼しい場所で育てられおり、白色の花を咲かせ、6月~7月になると収穫時期を迎えます。
桜の増やしかた
桜は接ぎ木でも増やすことが可能ですが、一般家庭では挿し木の方がオススメです。
- 7月になったら、その年に伸びた柔らかい枝を10㎝から15㎝の長さで切り取ります。
- 枝の先端ある葉を2~3枚だけ残し、1時間くらい水揚げしましょう。
- 枝の切り口に植物生長調整剤を適量まぶしてから、挿し木用土に植えます。
- 水をたっぷり与え、日陰に置き秋になって発根したら、鉢に移し替えます。
おわりに
桜の育て方をご紹介しました。コンパクトな品種も、大きく育つ品種も春の開花時期を楽しむことが、桜を育てる一番の醍醐味でしょう。
桜は見て楽しむだけでなく、花びらを摘み取って塩漬けにすれば、おこわやスイーツなどに活用することもできます。
桜にあった土と病害虫に気をつけて、自分の好きな品種の桜を育ててみましょう。