梅は紀元前の中国で酸味料として使われていたほど、古い歴史のある果実です。日本でも奈良時代にはお菓子として食べられており、昔から存在していましたが、本格的に栽培が始まったのは明治中期とされています。
梅に含まれているクエン酸には、殺菌力や疲労回復などの効果があり、現在の私達の生活にもとても身近な食べ物です。
今回は、梅の苗の植え付けから収穫にいたるまでを説明していきたいと思います。
Contents
梅の栽培時期と育成条件
- 日当たり:日なた
- 育成適温:4~10月は15℃以上 冬期は-15℃以上
- 用途:地植え・鉢植え
- 耐寒性:強 耐暑性:強
- 樹高:5~10m
梅の種類
梅の苗木を選ぶ時は、花を楽しむ為に植えるのか(花梅)、実を収穫して加工するために植えるのか(実梅)を決めておきましょう。
それぞれの目的に適した品種を選ぶようにします。
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花梅のおすすめ品種
冬至
白い花を咲かせる花梅の代表とも呼ばれる一重咲きの品種です。
初心者でも育てやすく、早咲きが特徴で冬至の頃に花を咲かせることからこの名前が付きました。
八重寒紅
八重咲きで、濃い紅色の花びらが特徴です。2~3月に開花し、花弁の数が多い品種です。
実梅のおすすめ品種
南高
梅干し造りに最適で、人気、知名度共に高い品種です。
自家結実性が低いので、他に受粉樹を一緒に植えましょう。
豊後
耐寒性が強く、東北・北陸地方で多く栽培されています。
実が大きく、果肉が厚いことから梅酒や砂糖漬け、梅干しに適しています。
梅の苗の選択
苗木を選ぶ際は、花梅か実梅かを必ず確認し、実梅を選択する場合は、自分の加工したいものに向いている品種を選ぶようにしましょう。
品種の中には、受粉樹が不要なものもありますが、基本的には必要です。開花時期の近い品種を2品種以上育てることにより、実つきが良くなります。露茜や白加賀などの花粉が少ない品種は、受粉樹に適しません。
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梅の土作り
有機質が多く、水はけの良い土を好みます。
中粒の赤玉土、堆肥か腐葉土を6:4で混ぜた土が良いでしょう。
梅の植え付け
落葉期(落葉から発芽までの期間)である11~3月までが適期です。
寒い時期は避けた方が良いので、11月の秋植えか2~3月の芽が吹く直前に植え付けるのがベストです。
- 梅の苗木
- 苗木の根鉢より一回り大きな素焼きの鉢(6~10号鉢)
- 鉢底ネットと鉢底石
- ひも(紙紐や麻紐)
- 支柱(50~60㎝程度)
- 肥料(緩効性化成肥料または有機質肥料)
準備が整ったら、早速植え付けていきましょう。
- 素焼きの鉢の下に鉢底ネットと鉢底石を敷き、土を少し入れて肥料を混ぜる
- 苗木の根に付いている土を適度に落とし、苗を入れる
- 再び土を入れ、苗が安定したら支柱を立てて紐で固定し、充分に水を与える
- 約1週間日陰に置き、日なたに移動させる
初心者の場合は、開心自然形仕立がおすすめです。開心自然形仕立とは、その木が本来持つ自然の形のまま育てること。
枯れた枝や徒長枝などを剪定する程度の手入れをすることで、自然に近い形で育てることです。
この方法で育てる時は植え付けの際に、つぎ木部分から30㎝位の高さで切り詰めましょう。切り詰めることにより、枝の育成を促すことができます。
梅の水やりと肥料
表面の土が乾いてきたら、たっぷりと水やりを行います。特に2年未満の株を育てている場合は、特に水分を必要としますので乾燥具合をよく観察しましょう。
梅の肥料は、植え付けの際に、緩効性化成肥料または有機質肥料を土に混ぜ合わせます。他にも、花が咲いた後株元に化成肥料を追肥しましょう。
また、人工授粉についてですが、ミツバチ等の昆虫が受粉を行ってくれるので、特に必要はありません。
梅に発生しやすい病気と害虫
黒星病
糸状菌による病気で、葉や梅の実に黒い斑点が現れて広がり、最後には落葉します。
湿度が高い梅雨の時期に多発し、梅が段々枯れていきます。
発生源となる落ち葉はすぐに処分すること、雨になるべく当たらないようにすることが重要で、薬剤を散布が予防策となります。
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うどんこ病
湿度が低く涼しい環境で繁殖しやすい、胞子が原因の病気です。枝、花首、つぼみ、若い枝に寄生し、全体がうす白く覆われたような状態になります。
葉がうどんこ病にかかると、胞子が光合成を阻害する上に、葉の栄養分を吸い取られるので、梅の木が育成不良になり、酷い時は枯死する恐れもあります。
アブラムシ
葉裏や新芽に寄生し、汁液を吸いながら育成を阻害します。強力な繁殖力を持ち、梅の場合は葉が丸まってしまうことが主な特徴です。
また、ウイルスの媒介も行う厄介者です。長い時間効果が持続する浸透移行性剤が有効です。
コスカシバ
南高梅で多く発生する害虫です。幼虫で越冬、春にさなぎ、それ以降は成虫となり、枝の分岐点や傷後に卵を産み付けます。
幼虫が幹を食害することで、梅の樹勢が弱まり影響を及ぼします。幼虫が加害した部分はかなづち等を利用して叩き殺すか、ナイフなどを使い幹の皮を剥がしで捕殺しましょう。フェロモン剤の使用も予防策の一つです。
梅の植え替え
鉢で育てる場合は、12~3月に1~2年に1回の割合で一回り大きな鉢に植え替えをします。
何年も同じ鉢のまま育てていると、成長した根が鉢の中で一杯になり根詰まりの原因になります。
植え替えの際は、古い根や太い根は省き、植え付けの手順と同様です。
梅の剪定
鉢植えで梅を育成し、そのまま株を大きくしたい場合は特に剪定の必要はありません。
コンパクトな形を保ちつつ育成をしたい場合は、花後が剪定時期です。
咲き終わった花柄を取り除き、花が開いた枝の付け根から、芽が2~3つ残るようにして枝を切りましょう。
これから成長しそうな芽を残るようにすること、その芽がどの方向に伸びるのかを考えることが大切です。
梅の収穫
6~7月が梅の収穫時期です。
梅ジュースや梅酒にする場合は、緑または黄緑色の果実を摘み取りましょう。梅干しにする場合は、完全熟した黄色の実を収穫するようにしましょう。
使用目的によって、実を収穫する時期が若干異なります。
梅の増やし方
梅の木を増やすには、種まき・挿し木・接ぎ木の3つの方法があります。
ただし、初心者にとって挿し木を成功させるのは難易度がかなり高いので、接ぎ木で増やすことをおすすめします。
接ぎ木は3月中旬から4月上旬が適期です。
- 鉢植えにした台木を用意(台木は1~3年位の若い木が適しています。根元の少し上かを切り落としておきます。)
- 一度台木を垂直に切り、次に横斜めから切り上げるようにして切り込みを作る(切り口は三角形になる)
- 前年枝から約5㎝の梅の木の穂木を切り取り、台木の切り口に合うように穂木の切り口を作成する
- 接ぎ木テープを使用して、お互いを下から巻き上げるようにして固定する
- 乾燥を防ぐため全体をビニールに入れ密閉し、半日陰で表土が乾燥しないように水やりをしながら管理
- 枝が伸びてビニールに当たるようになったら、袋を外す
おわりに
一口に梅といっても、その用途は様々です。品種の数も多いので、育てる環境の気温や目的に合わせて選ぶことが大切です。
収穫した梅を、シロップや梅干しにするのが主流ですが、梅の醤油漬けもおすすめです。
下処理をした梅をビンに入れて、2~3ヶ月位醤油につけるだけなので、とても簡単に作ることができます。
この記事を参考にしながら、ぜひ梅の育成にチャレンジしてみてください。