クリスマスリースなどでお馴染みの赤い実・サンキライ(山帰来)は、サルトリイバラ(猿捕茨)科シオデ属に属する多年生のつる植物(半低木)です。
俗に「山のアスパラガス」と呼ばれる様に種が食用として用いられていたので、「山帰来」の名称も山で病に罹った人がこの実を食べて元気に帰って来た事に因んでいるとされています。
従来の植物分類ではユリ科に含められていましたが、形態が他のユリ科植物と大きく異なるためクロンキスト体系では独立の科とされています。
なお、主に熱帯から亜熱帯にかけて分布していますが、日本で「サンキライ(山帰来)」と呼ばれているのは「サルトリイバラ(猿捕茨)」で、ガンタチイバラ、カカラなどの別名で呼ばれる事もあります。
また、生薬の「ドブクリョウ(土茯苓)」として用いられるのは、中国に分布する近縁種「ケナシサルトリイバラ(毛無猿捕茨)」の根茎で、こちらも「サンキライ(山帰来)」と呼ばれているため、園芸的な呼称と漢方的な呼称が異なってしまい少々ややこしい事になっています。
ちなみに、便秘薬としてお馴染みの山崎帝國堂の「毒掃丸(どくそうがん)」にもサンキライ末が用いられています。
【サンキライ(山帰来)の栽培時期と育成条件】
- 日当たり:半日陰~日なた
- 土壌酸度:中性~弱酸性
- 開花時期:3月~4月頃
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【流通形態】
鉢植えやポット苗として山野草を取り扱う園芸店などを中心に流通しますが、マイナーな存在なので扱う店は多くありません。
なお、雌雄別株のため、雄と雌の最低でも2本の株が近くにないと、ただ木だけが大きくなるだけで、結実することはありません。
雌雄株を揃えて購入する必要があるので注意しましょう。
【植えつけ場所の準備】
なぜ「サルトリイバラ(猿捕茨)」と呼ばれているかと言うと、枝に鈎状のトゲが生えていて、本当に猿を捕れるかはともかくとして、そう表現したくなるほど硬く強いからなのです。
実際、山野に自生する物は、里山などの明るい低山、草原や林内、林縁などに見られますが、うっかり引っ掛けて怪我をする原因にもなるので、ハッキリ言って厄介な嫌われ者です。
鈎状のトゲによる怪我は、傷口が汚くなるので治りも遅いですからね。
なお、葉や実が大きく茎にトゲが無い「トゲナシサルトリイバラ(刺無猿捕茨)」と言う変種もあると聞いたことがありますが、流通していると言うのは聞いたことがありません。
また、株元より離れた地下茎より多くの芽を出し、毎年かなりの勢いで増殖して茎を伸ばし、トゲと葉柄の巻きひげで他の植物などに絡みつくので、絶対に地植えをしてはいけない種類の植物です。
地下茎を伸ばして、毎年どこから新たな芽を出すかわからない、日照の良い場所を占有して3mの高さまで成長する危険なトゲを備えたつる性植物を野放しにする怖さは想像するに難くないと思います。
もし栽培をするのであれば、絶対に鉢植えで、なおかつ、人の動線から外れた置き場所を確保出来る事を確認してから購入しないと、文字通り「痛い目」にあいますよ。
もちろん、小さいお子さんが出入りする環境での栽培はオススメしません。
【植えつけ】
そのままで栽培が可能なしっかりした鉢植えで入手したならば、特に早急に植え替える必要もありません。もし、長期の使用に耐えない様なタイプの鉢などでしたら、6号鉢以上の深めの鉢やプランターなどに植え替えてやって下さい。
元肥には醗酵油かすと腐葉土などを入れてやり、用土は市販の「山野草の土」で良いでしょう。
乾燥にはあまり強くなく、過湿を好まないと言った山野草に良くあるパターンなので、スリット鉢や底面給水鉢を使っても良いかも知れません。
【水やり】
前述した通り、乾燥には比較的弱いので水切れには注意して下さい。
鉢植えでは特に気温の上昇に伴い、極度に乾燥する事もあるので、通常毎日、夏場は朝晩の灌水パターンでも良いと思います。スポンサーリンク
【肥料】
【ハイポネックス・活力液 ハイポネックス原液 450ml A】
植えつけの際に元肥を施肥してあるならば、通常期はほぼ不要です。2年目以降の鉢では、春先に緩効性の粒状化成肥料などを株元に散布しておきます。
特に大量に与える必要もありませんが、開花期などは10~20日に1回程度の間隔で液体肥料を施してやると良いでしょう。
ちなみに、花は淡黄緑色の小さな目立たない花で、見事な実と比較すると花自体の観賞価値は皆無と言っても過言ではありません。
【誘引と収穫】
つる植物なので支柱は必須になってきます。鉢植えのバラやクレマチスで使うタイプの支柱などを利用すると良いでしょう。
実は、10~11月に朱赤色に熟すので、頃合いを見計らって使用目的に応じて枝ごと剪定して収穫します。これは、そのままの状態で放置すると過熟して、例えばクリスマスリースの頃になると、見るも無残な状態になってしまうからです。
色合いが良い時期にカットしておけば、若干成熟が進んで色が濃くなっても著しく劣化する事はありません。逆にそういった性質だからクリスマスリースなどに用いられるわけですが…。
なお、作業にあたってはバラの手入れの際などと同様、革軍手やアームカバーなどを着用するトゲ対策を忘れないで下さい。
【植え替えと増やし方】
他の植物と同様、鉢の中で根が混み合って来ますので、数年毎に植え替えます。古い土を落として余分な根を整理すると言う感じで特筆すべき事はありません。時期的には、収穫作業を終えた冬場に行うのが良いでしょう。
増やし方簡単です。実からタネを採取するだけですから。
具体的には、熟成した実を選んできれいに水洗いして実を割ります。中から小さなタネが出て来るので植えつけて完了です。11月~12月が適期となります。
運が良ければ、リースなどで入手した実からも発芽させる事も可能です。ただし、前述した通り雌雄異株の植物なのですが、実際に花を確認しない事には苗木の段階で雌雄の判別はできません。
また、逆に放置した実からタネが庭にこぼれるなどして雑草化してしまうと、駆除に大変な手間がかかるので注意して下さい。
【病害虫】
特にこれと言って目立つ病害虫はありませんが、ルリタテハの幼虫が好む食草として知られています。見るからに毒々しいトゲを持つ幼虫で毒がありそうに思いますが無毒なので触っても平気です。これは毒を持つイラガの幼虫に擬態していると言う話です。
大変美しい蝶で、サンキライの他はホトトギスなどを食草にするだけですのでバタフライガーデンみたいな展開を考えても面白いかも知れませんね。
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【おわりに】
栽培するのは簡単だけれども、栽培方法を間違えると大変な事になる厄介な植物ではあります。
コストや手間などを考えると、時期にリース用の素材を購入する方が良い気もしないではありません。
なお、一部の山野草専門店では、「雌雄不確定株」などの表記で幼苗を販売している場合もありますが、これは餅菓子を包むなどの用途で葉のみの需要もあるためです。
関西以西ではかしわ餅の葉として代用されるとの事です。なお、若葉は茹でこぼして水に晒してからお浸しや和え物にしたり、天ぷらなどにする場合もあるそうです。
以上、サンキライ(山帰来)の育て方をまとめてみました。