スーパーなどであまり見かけることの少ないムカゴですが、日本では縄文時代から存在していたとされ、平家物語の一説にも登場するほど歴史のある野菜です。
山芋を植えることで一つのツルから100個近く獲れることもあるムカゴは、家庭菜園でも簡単に収穫が可能です。
今回はムカゴの育て方についてご紹介します。
Contents
ムカゴの育成条件と栽培時期
- 日当たり:日なた
- 育成適温:20~25℃
- 土壌酸度:pH6.0〜6.5
- 用途:地植え・鉢植え
- 耐寒性:強い
- 耐暑性:強い
- 植えつけ:株間20~30㎝
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ムカゴとは
ムカゴとは、主に山芋を栽培する時に、ツルと葉の間にできる小さな芋のことをいいます。ヤマノイモに属する野菜はほとんどの場合、種ができません。
また、植えた種イモも消えてしまうため、ヤマノイモを育てる時は、地中にできたイモを分割して植えるか、ムカゴを植えて育てる必要があります。ムカゴは山芋を植える用途以外にも、調理して食べることもできます。
山芋とは
私たちがよく口にする山芋という言葉は、色々なイモの総称です。イモと一口にいってもその種類は世界に600種類以上あるといわれています。普段の生活では長芋などが身近に存在しますが、その分類はどのようになっているのでしょうか。
山芋は大きく、「長芋」、「自然薯(ジネンジョ)」、「大薯(ダイジョ)」の3種類に大きく分けることができます。
長芋
中国種の長芋は、皮の色がベージュで長さ50㎝位の見た目をしています。山芋の中では水分量が多くサラサラとしているのが特徴で、粘り気はあまりありません。
他にも、長芋に分類される仲間には長芋よりも少し粘り気のある「大和芋(いちょういも)」、皮が黒く拳のような形で粘り気の強い「つくね芋」などがあります。
自然薯
長芋が中国種であるのに対し、自然薯は日本種です。形は60㎝から1mと長芋より長さがあり、細いことが特徴です。自然薯は山で自生しているものが多く、収穫するために数年の歳月が必要なことから市場での流通量は多くありません。また、価格も長芋より高価であることが一般的です。
粘り気が強く、独特の味があり風味が豊かとされています。
大薯
大薯の原産地ははっきりと判明していませんが、熱帯アジアやインドが有力説です。日本へは台湾を経て九州から渡ってきたといわれています。形や大きさが定められておらず、大きなものでは10キロ以上にもなります。
見た目はベージュと紫の皮色の2種類があり、紫色をしたものは中身が白いもの、紫のものにわかれます。粘り気が強く、この芋にはムカゴができません。日本国内では現在、九州南部と沖縄で生産されています。
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ムカゴの収穫時期
ムカゴの収穫時期は9月下旬から11月頃です。ムカゴを付けたツルが下を向き、葉が黄色くなりだしたら、収穫のサインと考えましょう。
ムカゴは茎やツルと葉の間にできます。完熟しているものは手に取ったときに簡単にもぎ取れるので、触って確かめてもよいでしょう。茎が枯れてしまうと、ムカゴは自然に地面へ落ちるので、その前に収穫しましょう。
また、落ちてしまったムカゴを放置しておくと、翌年地面に雑草が生える原因になる場合がありますので注意しましょう。
ムカゴの保存方法
収穫後のムカゴはある程度の期間保存することが可能です。収穫したままで放置しておくと乾燥してシワシワになってしまいます。
また、湿度の高い場所に置いてもカビが生えてきますので、適度な湿度のある環境に置いておくことが重要です。
冷蔵庫の場合
キッチンペーパーなどに水気を含ませて、ムカゴを包みチャックのついている密封袋に入れて冷蔵庫へ保存しましょう。新鮮で美味しいうちに食べるなら、2~3週間以内に使い切ってください。
収穫したままの状態での冷蔵庫保存の場合は1週間が目安です。
冷凍庫の場合
ムカゴを水で洗い、表面の汚れを落としたら水気をふき取り、密封袋に入れて冷凍庫へ保管しましょう。冷凍庫保存で美味しいうちに食べるなら、約1ヵ月以内に使い切りましょう。
冷凍庫から取り出して使う時は、ボールにムカゴを入れて水を流しながら解凍する流水解凍、または自然解凍をしてください。解凍したムカゴは2日以内に使用しましょう。
室内保存の場合
家にもみ殻やおがくずがある場合は段ボールに詰め、その中にムカゴを埋め込み、風通しが良く、日光の当たらない温度の低い場所で保存しましょう。
山芋以外にムカゴができる植物
ムカゴができる植物は山芋の仲間だけではありません。
山芋のムカゴは茎が大きくなって作られた「肉芽」とされるものですが、葉が肉質に変形して作られる「麟芽」のムカゴには、オニユリ、ノビル、シュウカイドウなどがあります。
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ムカゴの栄養
ムカゴに含まれている栄養素は、土の中で育てている山芋とほぼ同じであるといわれています。
長芋のムカゴなら長芋の栄養素、つくね芋のムカゴならつくね芋の栄養素とほぼ同様です。山芋には沢山の種類がありますが、その種類が違っても栄養価はほとんど変わりません。
アミラーゼ
一般的な山芋に含まれている栄養素で最も有名なのは消化酵素一種であるアミラーゼです。アミラーゼの働きは消化を助ける以外にも、取り入れた栄養を吸収しやすくしたり、体の新陳代謝をアップさせたりなどの働きをします。
アミラーゼは熱に弱い特徴があるので、山芋に熱を加えずとろろやサラダとして生で食べると効率良く体に取り入れることができます。
カリウム
カリウムも山芋に豊富に含まれている栄養の一つです。
カリウムはミネラル成分の一種で、体にあるナトリウムを出す働きをすることから、血圧の上昇を抑えたり、筋肉がスムーズに動く働きを助けたりします。
アルギニン
アルギニンは疲労回復、体脂肪の代謝促進に役立つアミノ酸の一種です。
疲労、ケガや出産などで栄養を付けたい場合、免疫力が欲しい場合、活動的に動きたい場合などに積極的に接収するとよいとされています。
収穫したムカゴを植えるには
食用としてムカゴを使う時は冷蔵庫や冷凍庫保存が適していますが、種いもとして使う時は収穫したムカゴをそのまま土に埋めておきましょう。また、乾燥気味に室内でおがくずなどを入れた段ボールで保存しておいて、霜の心配をしなくてもよい時期(5~6月)になってから植え付けをおこなってもよいでしょう。
ムカゴから植える場合は、ムカゴの表面の凹んでいる部分から根や芽が出てきている方が育てやすいとされています。山芋は長さがあるので深さ(30㎝以上)のあるプランターかダストボックスなどで栽培することもできますが、根詰まりや乾燥しやすいという面を考慮すると、地植えの方が適しています。
植える際は、株間約20㎝を確保して入れ土をかぶせておきましょう。使用する土はそれほど神経質になる必要はありませんが、酸性度の強い土は合わないので、土が酸性に傾いている場合は苦土石灰を利用して土を中和しておいてください。
山芋は乾燥に弱いので、土の表面が乾燥したらたっぷりと水を与えること、ツルを伸ばす植物なので植え付けの時に支柱を立てることをポイントにおいて育てていきましょう。追肥は7月に1回化成肥料を適量施してください。
ムカゴの収穫時期になると再び新たなムカゴを獲ることができますが、ムカゴから育てた場合の地中の山芋は収穫するまでに2~3年の歳月が必要です。
ムカゴを食べるなら
小さくて可愛らしいムカゴの調理方は、素揚げ、かき揚げ、塩ゆで、炊き込みご飯など様々です。
味は土の下にできる山芋とほぼ同じとされていますが、ムカゴの方があっさりしているといわれています。皮もそのまま活用できますので、様々な調理法にチャレンジしてみましょう。
おわりに
小さくても栄養満点のムカゴの栽培では、蔓を利用して緑のカーテンを楽しむこともできます。
山芋類は栽培環境にあまり左右されない育てやすい野菜なので、チャレンジしてムカゴの収穫を楽しんでくださいね。