秋に植える野菜

ワサビの苗植え〜収穫までの育て方!栽培時期や病気・害虫の対策について

ワサビの苗植え〜収穫までの育て方!栽培時期や病気・害虫の対策について

お寿司にお刺身、蕎麦に豆腐。日本食を代表するこれらの料理に欠かせない薬味といえば?これはワサビしかありません。

日本人ならおなじみの、ツーンと強烈に突き抜けるすがすがしい刺激はワサビならではのもの。山の清流で育ったものが一番上等とされていますが、家庭でも栽培することができます

畑から直採りしたワサビをおろして薬味にするなんて、なかなかできない贅沢ですよ。
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ワサビの栽培方法について

ワサビの栽培方法について

ワサビはアブラナ科の多年草。根の部分に強烈な辛味があり、根をすりおろしたものがいわゆる生ワサビであることはご存知の通りです。

ですが育て方によって違いができることはあまり知られていないかと思いますので、簡単に説明します。

水ワサビ

ワサビを水の流れる浅瀬で栽培したものを水ワサビ、または沢ワサビと言います。

根を大きく育てるには涼しい環境で流水栽培する必要があり、一般家庭ではなかなか難しい育て方と言えます。

畑ワサビ

ワサビを畑で育てたものが畑ワサビです。陸(おか)ワサビとも言います。水ワサビに較べて根茎が大きくなりにくく、葉や茎を食用に用います。こちらも涼しい環境が必要です。

水ワサビのほうが根茎の育ちがよいのは、ワサビ自身の根から出る殺菌成分が水で流れていくからだとされています。この殺菌成分はアリルイソチアシオネートという辛味の成分でもあり、ワサビ自身の成長も阻害してしまうのです。畑ワサビではこの成分が逃げないで土にたまるため根茎が大きくならないのです。

ここでは、水ワサビと畑ワサビの両方について育て方をご紹介していきます。

畑わさび画像

ワサビの栽培時期と育成条件

植え付け収穫

全地域共通

9月上旬~10月下旬5月下旬~6月下旬

 

ワサビの育成条件
  • 日当り:半日陰
  • 土壌(ないし用水)酸度:弱酸性~中性
  • 育成温度:8℃~18℃
  • 植え付け: 株間30cmほど

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水ワサビの栽培環境作り

水ワサビの栽培環境作り

水ワサビの育て方には渓流式、畳石式、地沢式・・・などがありますが、これらは大規模な圃場と恵まれた水環境をもつ農家ならではでのやり方です。

なので家庭菜園でこれらを縮小再現するようになるわけですが、共通するポイントは以下の通り。

  • 砂地または細かい砂利にワサビの株を植え付け、ワサビの根が水に浸かるようにする。
  • 水はにごらないよう、かつ増減しないように常に流れている状態にする。
  • 直射日光は避け、水温を8~18℃に保つ。

これを地植えで実現しようとした場合、庭に小川か段差池でもなければ難しいということになってしまいます。

なのでここはプランターを利用した栽培環境を作っていきましょう。

<用意するもの>
・排水口つきプランター(プラ船)
・川砂、砂利
・ホース

作り方
  1. プランターの排水口に内側から21~22cmの長さのホースを接続します。できる人はコーキングを使って塩ビ管を排水口に垂直に取り付けると良いでしょう。
  2. プランターの底から5cmほど砂利を敷き、その上に川砂を15cmくらいの高さに詰めていきます。このとき、ホースまたはパイプの上面が砂から2cmほど頭を出すようにします。(※長めに作っておいて、後から切れ込みを入れてもOKです。)
  3. 板などを使って砂をできるだけ平らにならします。
  4. ホースに栓をして、水を静かに入れていきます。上までたまったら砂が落ち着くまで待ち、その後ホースの栓を抜いて水を流します。
  5. 培土の上に2cmほどの高さの水の層ができていれば完成です。

水ワサビの植え付け

水ワサビの植え付け

プランターでの水ワサビ栽培なので、苗は購入するなどして入手していただく前提とします。

植え付けは9月~10月ごろ行いますが、作業前に水温が適温かどうか確認しておきましょう。水道から引いてすぐの水だと冷たすぎる可能性もあります。

植え付けは大体20~30cm間隔でプランターに敷いた川砂に根を固定し、生長点(茎が最初に分岐しているところ)が水より上に出るようにしておきます。

しっかり立てられない場合は小石などを使って砂と挟み込むようにしてもOKです。

水ワサビの栽培管理

水ワサビの栽培管理

温度管理

水ワサビの管理で第一に気を使いたいのが温度管理です。プランター栽培といっても水を入れているコンテナは簡単に移動できないので、できるだけ温度変化が少なく、日光が当たり過ぎない場所で栽培しましょう。

水温を8~18℃に保つようにするのがポイントです。

冬季:寒さには強いので冬越えできますが、気温が3℃以下になると寒害を受ける可能性があります。

夏季:気温が28℃以上になると生長が抑制されます。日当りだけでなく風通しも考慮しましょう。

水質管理

川や井戸から引いた水をかけ流しにできる環境ならばともかく、家庭では水道の水を使うしかありません。しかし常時出しっぱなしというわけにはいきませんので、1日に1~2回ほど定期的に新しい水を注ぐようにしましょう。

上で作った排水ホースつきのコンテナであれば水量は一定に保てますので、単純に水を注ぐだけでOKです。

また、循環式のポンプを使って水を流す方法は一見良さそうですが前述のアリルイソチアシオネートが薄まらないため、根茎を大きく育てるには不適だそうです。

肥料

肥料は年2回、春は4月頃と秋は10月頃に行います。肥料が水をにごらせてしまわないよう、ストッキング的な素材の袋(三角コーナーの水切りネットなど)に入れて与え、ある程度継続的に溶け出るようにします。

なお、チッソ分が少ないタイプの肥料を用いたほうが良いでしょう。

花穂つみ

2月を過ぎたくらいに花を咲かせますが、タネを採取して苗を育てる予定がなければ摘み取ります。

花が咲くと辛味が落ちてしまいます。
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水ワサビの収穫時期と収穫方法

水ワサビの収穫時期と収穫方法

水ワサビは基本的に通年収穫が可能ですが、春から夏にかけてが一般的な収穫時期になります。根茎の成長はゆっくりとしているので、植え付け後の1年目は栽培管理に専念し、2年目以降から様子を見つつ掘り取っていくようにします。

掘り取ったワサビは葉を落とし、根茎部分についている細かい毛のような根をハサミなどで切り取ります。その後、皮を傷つけないように洗い上げると一般的なワサビの姿になります。

なお、葉や上の茎もおひたしなどで食べられます。ワサビに捨てるところはほとんどありません。

畑ワサビの栽培環境づくり

畑ワサビの栽培環境づくり

次は畑ワサビの育て方です。まず畑の準備からとなりますが、選び方としては次のような場所が理想的です。

  • 直射日光が当たらず、かつ暗すぎない
  • 夏でも涼しい(平均気温22℃以下が理想)
  • 水はけが良い

こういった条件を満たす場所が見つからない場合、畑ワサビもプランター栽培するという選択肢があります。ただしプランターだと日照の管理などはやりやすくなりますが、水が不足しやすいのでその点は留意しましょう。

土には野菜用の培養土か、そこに川砂を混ぜ込んだものを用意します。地植えの場合は粘土質や腐食質の多い土は適していないので、これも川砂を混ぜ込み水はけの改善をしておきます。

さらに苦土石灰と堆肥も混ぜ込んでおきます。植え付けの2週間前くらいにはすませたいところです。

畑ワサビの植え付け

植え付けは9月~10月に行います。春の植え付けも可能ですが、直後に夏を越さなければならないため秋植えがおすすめです。

植え付け前には10cmほどの高さの畝をたてておき、畝の真ん中7~8cm前後のミゾを掘って20~30cm程度の株間で植えつけます。あまり深植えにならないよう気をつけましょう。

植え付けが済んだら水をたっぷりとやり、敷きワラをかけて乾燥を防ぎます。

※水ワサビと同様、苗は購入などにより手に入れる前提とします。
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畑ワサビの栽培管理

畑ワサビの栽培管理

水やり

湿潤な環境を好むので、乾燥しないようにたっぷりと与えるようにします。

遮光

5月以降の日差しが強い時期は寒冷紗などを使って日差しを遮るようにしましょう。これがそのまま温度管理にもつながります。

ただし地面にベタがけするのではなく、支柱などを使って日陰を作る方法がよいでしょう。
プランター栽培の場合も薄日が当たる程度の場所に移動して、風通しもよくしておきます。

追肥

1回目は定植後の春から初夏にかけ、生長が盛んになるころに追肥を施します。5月~6月ころが良いでしょう。

夏は生育が衰えるので与えません。量の目安としては1㎡あたり500g程度の緩効性肥料を与えるようにしましょう。

2回目は植え付けと同じ9月~10月頃になります。内容は1回目と同様です。

花穂つみ

これは水ワサビと同様の作業です。2月過ぎに咲いた花を摘み取ります。

なお花穂は天ぷらなどで食べることができます。

畑ワサビの収穫時期と収穫方法

畑ワサビの収穫時期と収穫方法

畑ワサビも通年収穫が可能ですが、葉をいただくのであれば初夏のころに収穫するようにしましょう。

特別な品種でない限り、根茎は育っていないのが普通ですが極力折れないように掘り起こし、土の上に出ている茎と葉を収穫します。
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ワサビがかかりやすい病気:墨入病

ワサビの墨入り病

ワサビに発生する病害の中では代表的なもので、水ワサビ・土ワサビを問わず発生します。

葉や茎、育った根茎を問わず黒褐色の病斑が発生します。葉や茎の場合はぽつぽつとした斑点が次第に大きくなり、そこから破れたり折れたりします。根茎に感染した場合は断面に黒いスが入ったような状態になります。

土壌または水中に存在する糸状菌が原因とされていますが、これはどこにでも存在しており取り除くことは困難です。発生してしまった場合は食用にも適さず、また病原菌の巣となるので残念ながら畑の外で早々に処分するしかありません。

また、株分けで親株から子株へ引き継がれるのでタネから育てた苗を植えると比較的発生しにくくなるようです。水ワサビの場合は水質管理にも気を配りましょう。

ワサビを狙う害虫:アオムシ


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アオムシと言っても色々ですが、一般的にはチョウの幼虫を指します。主な被害としてはやはり食害です。飛来性の害虫なので水ワサビ、畑ワサビを問わず標的になる可能性があります。

一番の基本となるのは見つけたら捕殺することですが、成虫が卵を産み付けないよう防虫ネットをかけておくのもいい方法です。

また、水ワサビを育てるワサビ田は基本的に自然の水源を使っているので薬剤の使用は厳しいところがありますが、そんな中でもアオムシ対策として使ってもよいとされる薬剤があります。それは生物農薬であるBT剤で、これはチョウなどの害虫に対しては毒となるたんぱく質を利用しており、人畜や環境に対する安全性が高いとされています。

アオムシだけでなくコナガの幼虫にも効果を発揮しますので、無農薬にこだわるのでなければ使ってみるのもいいでしょう。

おわりに

今回は、ワサビの育て方についてご紹介してきましたが、いかがでしたか?

もしかしたら、ワサビの栽培は難しそうと思われたかもしれません。確かに水ワサビの栽培には手間も時間もかかりますが、それだけに自家製の一本が取れたときの感動はひとしおと言えるでしょう。

それでも厳しいという場合、畑ワサビなら涼しい環境とプランターがあれば比較的気軽にトライできますので、ぜひ試してみていただければと思います。



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