ツバキは古くから日本に存在する樹木です。ツバキ油が飛鳥時代から存在した話もあるほど、日本人には馴染みの深い植物と言えるでしょう。地域によっては花がポロッと落ちる様子が「打ち首」を連想させることから、縁起の悪い木としての認識されているところもあるようです。
しかし一方では、樹勢が強く冬場でも元気に花を咲かせる姿から、魔除けや子孫繁栄の「縁起木」としても親しまれ、お正月の注連飾りの装飾としても使われています。
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ツバキの栽培時期と育成条件
- 日当たり: 日なた・半日陰
- 酸性土壌:弱酸性
- 用途:地植え・鉢植え
- 耐寒性:強い
- 耐暑性:強い
- 耐陰性:強い
- 花色:赤・白・ピンク・複色など
- 樹高:5~20m
ツバキに適した栽培環境
ツバキは樹勢の強い常緑高木です。耐陰性も高いので、それほど日の当たりを心配する必要はありません。なるべくなら、直射日光や西日が強く当たらない程良く日があたる半日陰が適しているといえるでしょう。冬場の寒風はツバキが枯れる原因になったり、蕾が落ちてしまったりする可能性があるので、直接北風や西風があたらない場所を選んであげるとよいでしょう。
ツバキはコンパクトに鉢植えにすることもできますが、庭木として植えることも可能です。生長するにしたがい樹高が数メートルにもなることがあるので、庭植えにする場合は、周りの植物との兼ね合いやスペースの確保に気を配りましょう。
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ツバキの苗木の購入
ガーデニング初心者がツバキを育てるなら、種を撒くよりも苗木を購入して育てる方がよいでしょう。ツバキの苗木を購入するのに一番適している時期は開花時期の1~2月。
苗を選ぶ時のポイントは以下の通りです。
- 苗木全体の色合いが肥料やけによって黄色くなっていない
- 苗木に品種・説明書き・開花時期のラベルがきちんとついている
- 葉の色が濃くてツヤがある
- 幼い苗の場合は、花数の少ないもの(花が多いと株が弱っていることがある)
ツバキの苗木には「挿し木苗」と「接ぎ木苗」の2種類が存在します。市場に出回っている苗木の多くは「挿し木苗」。手に入りやすいメリットがありますが、発根量が少い傾向にあるので、生長が期待できない可能性があり、生長傷害が起こりやすいとされています。一方、「接ぎ木苗」は非常に丈夫に出来ているので、鉢植えと地植え、どんな土質にも適合する柔軟性を持ち合わせています。
また、花付きの良さ、大きく生長してからの移植に耐えられること、挿し木苗の2~3倍のスピードで生長するなどの利点があります。購入金額は「接ぎ木苗」の方が高くなりますが、ツバキの苗をしっかりと育てていきたいのなら「接ぎ木苗」を選択することをおすすめします。
苗木を鉢へ植え付け方法
苗木を鉢に移動させる時は、購入時のポットよりも2~3号大きめの鉢を用意するとよいでしょう。
あまり大きすぎる鉢への植え付けは、株を弱らせる原因となるので避けてください。ツバキは弱酸性を好みます。赤玉土中粒・鹿沼土中粒・完熟腐葉土を同じ割合で混合したものを使用します。
植え替えが終了したら、鉢の下から水が溢れ出るくらいに水分を与えて、最後に緩効性肥料を置いておきましょう。1週間くらいは日陰で休ませ、慣れるに従い日なたへ移動させてあげましょう。
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苗木を庭に植え付け方法
ツバキを庭木として育てる場合は、生長した後のことも考えて、スペースに余裕がある場所に植えると良いでしょう。建物の北または西は寒風や直射日光が当たりやすいので、南または東側に植えるとツバキのストレスが軽減されます。ツバキは弱酸性の土壌を好むので、コンクリートの存在でアルカリ性に土が傾くことがあります。よって、コンクリートの塀や建物のすぐ近くも避けたほうがよいでしょう。
ツバキの植え付けでは最初に穴(深さは根鉢と同じ・幅は2倍)を掘ります。土壌改良をするために、元肥入りの腐葉土を穴の下部と掘り起こした土に適量施しておきましょう。植え付けの時は深植えにしないように注意をし、根を崩さないようにそっと穴の中に移動させてください。
穴に土を被せる時は苗木が倒れてしまわないようにしっかりと土を押し固め、地面に根がつくまでは支柱を添えて固定しておきましょう。植え付けが終わったら十分な水やりをし、緩効性肥料を施してください。なお、鉢植えでも地植えでも植え付ける適期は、花後の3~4月または花芽が固まる9~10月です。
ツバキの水やり
鉢植えや地植えにかかわらず苗木の植え付けをしてから2年以内は、土の乾燥を確認したら十分に水やりを行いましょう。
2年目以降の水やり方法は以下の通りです。
鉢植え
2年目までの水やり方法と同様に、土の表面が乾いたら鉢の下から水が出るほどの水分を与えてください。
水やりの時間帯は夕方。夕方の水やりは土の中の上がった温度を下げる効果があります。
地植え
2年目以降は、基本的に水やりをする必要はありません。
雨が降らない時が続いた場合は、夕方に十分な量の水を与えてください。
ツバキの肥料
肥料やりの回数は年に2回。「寒肥」と花後の「お礼肥」を与えましょう。寒肥は寒い冬の間にツバキに肥料を与えることで、春先に土壌に栄養が行き渡っている状態にすることです。
地域によって若干異なりますが、与える適期は9~10月。肥料は根の先の方に施しましょう。また、花が咲き終わった後に与える「お礼肥」は3~5月が適期。お礼肥は、来年ツバキが開花するための新芽の生長や花付きに影響してくるので、重要な作業です。
寒肥とお礼肥共に、油かすなどのゆっくりとした効き目をもたらす緩効性肥料を使用してください。また、肥料を与える時は繰り返し同じ場所に施すと「肥料やけ」を起こす可能性がありますので、置き場所は毎回変えるようにしましょう。
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ツバキの剪定
剪定は花が咲いた後の4~6月の間に行いましょう。ポイントは花が終わったら素早く行うこと。6月以降になると来年へむけて花芽が出てくるので、花の数を減らしてしまわないためにもすぐに剪定をすることが重要です。内側に向かって伸びている枝や混み合って風通しが悪くなっている枝はカットするようにしましょう。
また、高さを整えるために頂上部分の枝の切り戻しも行いましょう。ツバキの剪定は毎年形を整えたり、空気の通りをよくしたりするためのもので、基本的に「強剪定」は行いません。ただし例外として1.8m以上ある接ぎ木で肥料をきちんと与えられているものであれば、強い剪定をすることが可能です。
ツバキがなりやすい病害虫
ツバキに寄生しやすい害虫は次の通りです。
チャドクガ(茶毒蛾)
チャドクガは、日本の暖かい地域に分布する毒蛾です。花が咲いた後の夏場に発生することが多く、葉を食害します。
葉の裏に卵を産むのが特徴で、放置しておくとツバキがスカスカになってしまします。見つけ次第捕殺するか枝ごと切り落としてしましましょう。
また、目で確認することができないほど小さな体毛には毒があります。皮膚に触れると痒みや痛みを生じることがあるので、作業の際は必ず手袋などをして肌を出さないようにしてください。
カイガラムシ
吸汁加害をするカイガラムシの体長は1~3m。固い殻のように見えるタイプや柔らかそうに見えるタイプなど、その種類は400以上もあると言われています。すす病の発生源となる可能性もあるので、見つけたらすぐに駆除するようにしてください。
病気では「すす病」や「花腐菌核病」にかかりやすい傾向にあります。すす病の原因となるカイガラムシなどの害虫はすぐに捕殺すること、花腐菌核病にかかって茶色や黒色に変色した花びらはすぐに処分することが重要です。
さいごに
ツバキの栽培に慣れてきたら、種を「採り蒔き」してみましょう。採り蒔きとは、種を採ったら保存せずにすぐに蒔くことです。9~11月頃になったらツバキの実を集め、中に入っている種が自然に割れて出てくるのを待ちましょう。
自然に地面に落ちた種を使用することもできますが、乾燥しているため発芽しづらくなるので一晩水につけておくとよいでしょう。
容器や用土を用意し、種をまいて軽く土を被せ水やりをしてください。ツバキは種から育てるのが難しいといわれていますが、上手くいけば発芽を見ることができるかもしれません。