シャクナゲは、ツツジ科ツツジ属の常緑低木で、和風と洋風どちらの庭にも合う、春先を彩る美しい花として人気があります。近年は品種改良もすすみ、その花色や形、大きさなど様々な種類が出回っています。
今回は、地植えで栽培する時のシャクナゲの種類や植え方、栽培管理などについてご紹介したいと思います。
Contents
シャクナゲの栽培時期と育成条件
- 日当たり:日なた・半日陰
- 土壌酸度:酸性(4.5~5.0pH)
- 用途:地植え・鉢植え
- 耐寒性:強い
- 耐暑性:やや弱い
- 花色: 赤・白・ピンク・黄色・茶・オレンジ・紫など
- 耐暑性:やや弱い
- 草丈:50㎝から5m
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シャクナゲに適した栽培環境
シャクナゲを育てる時に気を付けることは、日当たりと植える場所。強い日光や嫌いますので西日が当たる場所は避け、ほどよく光があたる(半日陰)場所を選びましょう。
また、植え替えを嫌いますので、長年同じ場所で育てられるスペースを確保してください。
シャクナゲの種類
艶やかな花色と豪華な花房で人々を魅了するシャクナゲには、現在5,000以上の品種が存在すると言われており、日本シャクナゲと西洋シャクナゲに大きく分類されます。
2つの特徴をそれぞれ見ていきましょう。
日本シャクナゲ
西洋シャクナゲに比べて、落ち着いた花色が特徴。また、葉の裏に毛があるものが多いことも、西洋シャクナゲと異なる点といえるでしょう。
「アズマシャクナゲ」を基本に改良したものが多く、日本の風土や気候に合わせて作られているため、栽培しやすく人気があります。
西洋シャクナゲ
日本シャクナゲに比べ、見た目が豪華な花の形、様々な花色を特徴とします。
葉の真ん中に中班が入る「プレジデント・ルーズベルト」や白い花の中央に紫のブロッチが入る「サッフォー」など、個性的な花も多く見られます。
シャクナゲの用土
土を用意する時は、土壌酸度が酸性(4.5~5.0pH)になるように心がけましょう。中性またはアルカリ性の土はシャクナゲに合わず、生長に悪影響を及ぼし枯れてしまう可能性も出てきます。コンクリートの近くに植えるとアルカリ性に傾きやすくなるので注意してください。
土壌酸度以外にも、保水性に優れ水はけのよい土を好む特徴もあります。
市販されている山野草用培養土またはツツジ専用の土を利用するとよいでしょう。
シャクナゲの植えつけ
シャクナゲは種から育てることもできますが、花を咲かせるまでに約10年の歳月が必要です。また、移植を嫌う特徴もあることから、苗木から育てることをおすすめします。苗木を自分の目で見て購入する時のポイントは以下の通りです。
- 枝数が多く、幹が太くしっかりしている
- 葉の色が濃い緑で黄色に変色していない
- 花軸(かじく・花を支える茎)に膨らみがあり太い
植えつけの適期は、開花前の春(3~5月上旬)と秋(9月中旬~10月くらい)の2回。苗木を鉢から取り出したら、根についている土を3割崩して、準備しておいた穴に植えつけましょう。シャクナゲは根を浅く張る植物なので、高植えにすることがポイントです。
高植えとは
根の際が地面よりも少し高くなるように植えつけること。高植えをすることで、水はけが良くなり排水性に優れた環境を作ることができます。
植えつけが終わったら、シャクナゲが乾燥しないように、根元にマルチや敷き藁を敷いておきましょう。
シャクナゲの水やり
土の乾燥が激しい夏以外は、基本的に水やりの必要はありません。気温が高くなる夏場は、充分に水やりをおこないましょう。朝か夕方、どちらかの涼しい時間帯、株元以外に葉水も一緒におこないましょう。
また、冬場に乾燥しているようであれば、天気が良く気温が高い午前中に水をあたえてください。
シャクナゲの肥料
シャクナゲの肥料は、植えつけをしてから約1年間は必要ありません。
理由は、根付かないうちに肥料を与えると「根やけ」を起こす可能性があるからです。
株がきちんと活着するのが確認できたら、緩効性化成肥料または固形の有機質肥料を与えることが重要です。
肥料を与えるタイミングは、花が咲いた後の4月中旬から6月。
大きな株の場合は、夏の暑さが過ぎ去った9月下旬から10月くらいに2回目の肥料を与えます。
冬場の肥料は基本的に必要ありませんが、枝や幹の様子をみて必要であれば寒肥を施しましょう。
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シャクナゲの栽培管理
花がら摘み
シャクナゲの花が咲き終わったら、花茎より上部の花がらをハサミなどを使ってどんどん摘みとっていきましょう。花がら摘みをする時は、花びらだけでなくガクもきちんと取り除くこと。ガクが残ると種子ができることから栄養が他の花に充分に行き渡らなくなります。
また、花がらを処分しないままでいると、新しい枝が伸びずに新しい花芽がつきづらくなります。カビや病気の原因になることも考えられますので、清潔な環境を整えてあげましょう。
剪定
シャクナゲは枝の数が少ないので、基本的に剪定の必要はありません。
剪定をしてしまうと、芽が出てこなくなるので注意しましょう。ただし、枯れてしまった枝や混み合っている場合は枝を根元から剪定してください。
芽かき
芽かきとは、必要のない芽を排除すること。適期は4月中旬から7月中旬です。
シャクナゲは基本的に剪定の必要がない代わりに、芽かきをすることで樹形を整えることができます。1つの株に対して芽が多すぎると、株に負担がかかります。
突出して勢いの強い新芽や花が咲かなかった芽を中心に芽かきをおこないましょう。
シャクナゲがなりやすい病害虫
シャクナゲがかかりやすい病気には、カビが原因の白い粉がついたように見える「うどんこ病」、淡褐色の斑点が葉に現れる「褐斑病」、葉の斑点から始まり最終的には株が枯死する「ペスタロチア病」などがあります。
また害虫には、アブラムシやベニモンアオリンガ、ハマキムシ、グンバイムシなどの発生が多く見られ、どの害虫も春と秋に集中してあらわれます。これらの病害虫は、殺虫殺菌剤を散布しておくことで予防することが可能です。
シャクナゲの増やし方
シャクナゲを増やす方法は、挿し木と接ぎ木の2種類です。既述の通り、種から増やすこともできますが、花を咲かせるまでに約10年の長い年月が必要になるので、あまりおすすめはしません。
接ぎ木
シャクナゲの場合は、挿し木よりも接ぎ木の方が一般的に行われています。適期は2~4月。台木には、「赤星シャクナゲ」が多く使われています。
接ぎ木の手順は以下の通りです。
- 台木の茎を斜めに切り落とし、切り口から水分を出すため2日ほど放置する。
- 前年度によく生長した台木と同じくらいの太さの枝を8㎝ほど切り落とす。
- 葉は4~5枚残し、残した葉を2分の1にカットして発根促進剤の入った水に入れる。
- 水揚げが終了したら、テープを使って台木に固定する。
台木への固定が終了したら、上から袋を被せて湿度の高い状態を保ちましょう。半月経過したら袋に穴をあけて空気を通し、1ヶ月経過したら袋は取り外しましょう。
挿し木
挿し木に適しているのは6月または9月。
シャクナゲの挿し木は発根しにくいので、ガーデニング初心者には少し難しいかもしれません。用意するものは以下の通りです。
- 清潔なナイフ
- プランターまたは鉢
- 赤玉土または鹿沼土・水苔
- 発根促進剤
時期がきたら枝の先端から10㎝程度を清潔なナイフで切り落としましょう。水揚げをした後に、3枚から4枚の葉を残して他は全て排除します。残した葉は半分に切り、土に挿す側の枝を水の中でVの字型にしてから発根促進剤を塗りましょう。
用意した土の中に保水性を高めるための水苔を混ぜ、枝を挿します。日光の当たらない場所で管理しながら、発根までのあいだ乾燥させないように湿度を保ちながら水やりを行いましょう。挿し木全体をビニールや容器などで囲うと、保温と保湿性が高まります。
おわりに
シャクナゲには多くの種類があるので、品種を選ぶ時は自分の好みと同時に庭の広さや配置を考えて選択することが大切です。
本来シャクナゲは高山植物ですので、関東より西の暖かい地域で栽培する時は、暑さに対応可能な改良された品種を選ぶとよいでしょう。
大きく育つ品種なら単独で植えても立派な存在感がでますし、小さく育つ品種であれば樹木の寄せ植えなどにするとお庭が一層華やかになりますよ。