そもそも、園芸店で販売されているカエデとモミジはどう違うのでしょうか?
どちらもムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属で多くが落葉小高木(例えば沖縄諸島に自生するクスノハカエデなどの常緑樹もあります)で、学術的に更に細かく分類してもイロハモミジ節にはハウチワカエデやノムラカエデ(ノムラモミジ)が入っていたりします。
実は、カエデとモミジの線引は園芸上の習慣的な分類であって、葉が5つ以上に別れていて、その切れ込みが深いものをモミジ、それ以外をカエデと呼ばれているのです。ちなみに、カエデの仲間は世界に150〜200種存在するといわれ、日本には約28種(諸説あり、まだ厳密に定まっていない)が自生しています。
今回は、最も流通量が多く入手が容易なイロハモミジあたりを中心にお話を進めてまいりますが、オオモミジやサンゴモミジ、ノムラカエデ、出猩々などもほぼこれに準ずるとお考え頂いて良いでしょう。
Contents
カエデ(モミジ)の栽培時期と育成条件
日当たり:半日陰〜日なた
土壌酸度:中性〜弱酸性
紅葉時期:10月下旬〜11月頃
カエデ(モミジ)の流通形態
庭に植える事を考えるなら、40cm程度の苗木から2m程度の単木や、また、既に形が整った株立の2.5m程度の樹高の物まで流通していますが、あまり大きな物だと素人が片手間に植えつけ作業をするのは難しいでしょう。おそらく樹高1m程度の物が限界になると思います。
他に、本格的な盆栽用途や最近流行りの所謂インテリア盆栽・ミニ盆栽用の小さい苗や、ある程度でき上がった形での鉢植えも多く流通しています。
更にもっと道楽路線を突っ走るのならば、秋の落葉する頃に「竹トンボ」みたいに舞うタネを拾って来て蒔いてみると言う手もあります。
カエデ(モミジ)の植えつけ場所の準備
基本的にどこにでも普通に自生している植物なので、特に土壌酸度などに神経質になる必要はありません。ただし、乾燥に弱いのですが粘土質だけは根腐れを起こしやすいので避けて下さい。
また、日当たりを好むのですが、特に夏期の強烈な日差しによって葉が痛めつけられ続けると、肝心の紅葉の時期にキレイに発色しないなどと言う事にもなります。
可能ならば、家屋などの陰になって西陽を避けられる場所が好ましいかと思われます。地植えの場合は、1ヶ月程度前に深めに耕し腐葉土と堆肥を入れて、あらかじめ馴染ませておくと良いでしょう。
鉢植えの場合は、赤玉土を基本にして腐葉土を2割〜4割程度加えてやるか、面倒ならば市販の山野草の土を使えば大丈夫です。要は鉢の中を通気が良い状態に保ってやろうと言う事です。
種から楽しみたい場合
タネからの実生を楽しみたいと言うチャレンジャーの方は、まず、確保してきたタネの下ごしらえから始めなくてはなりません。羽根の部分を取り除き、水に1時間くらい浸します。その際、軽く揉んだりして、敢えて、タネの表面を軽く傷つけると発芽率が上昇する事が多いといわれています。
実際のところ、歩留まりはかなり悪いので、成功を期す場合には相当な数のタネを入手した方が良いでしょう。とは言うものの、散歩中に拾ったタネで「出るかな?出ないかな?」と考えながら来春まで過ごすなんてのも、これもまた密かな楽しみですが…。
潅水などの管理は大変になりますが、丈の低い盆栽用植木鉢にまとまった数を植えたりするとかなり映えますよ。
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カエデ(モミジ)の植えつけ
カエデ(モミジ)の植えつけなど根に負担を掛ける作業は、冬の休眠期に行うようにして下さい。ただし、特に温暖な土地を除いては、厳冬期を避けて紅葉直後の10月下旬〜11月頃に作業する事が望ましいです。
他の樹木も同様ですが、植えつけ直後は根が弱いので、予想外に急に寒くなってしまい地面が凍結しそうな場合には、マルチなどを用いて保温してやると良いでしょう。
植え付け穴の目安ですが、根鉢の1.5倍の直径と深さ程度を掘ります。根鉢を1/3ほど崩し根の先を切り詰め、また、必要に応じて傷んだ根を取り除いてから植えつけ、土を戻して充分に潅水して作業は完了です。
鉢植えの場合も基本的には地植えに準じた作業となりますが、特に凍害などの被害が出やすいので、鉢は寒風が当たらない場所に置くようにして下さい。
カエデ(モミジ)の水やり
地植えの場合、完全に根づいて安定してしまえば、夏の高温期で極端に乾燥する時期以外には特に水やりの必要はありませんが…
ただし、これは植物の生育上必要な水分を根から取り込んでいると言うだけの話で、特に夏の乾燥する時期には早朝などに優しくシャワー状に潅水してやり、葉面が乾き過ぎて傷まないようにすると良いでしょう。
鉢植えの場合には、夏は朝と夕方、春と秋は1〜2日に1回程度、冬は乾燥したらと言う具合にメリハリをつけて水やりします。また、夏期は日陰に置いて管理することと、適宜、霧吹きを行って葉面の湿度を保つようにしましょう。
紅葉の名所などを思い浮かべると、山沿いなどで気温の高低差があり近くの清流からの朝靄がかかり、びっしりと苔むしているなんて感じではないでしょうか?夏の湿度維持に成功するか否かが重要なポイントになってきます。
カエデ(モミジ)の肥料
地植えの場合は、寒肥として2月、4〜5月の成長期辺りに汎用の粒状肥料を適量ばら撒く程度、あまり大きく成長する事を望まないのであれば施肥は不要です。逆に夏以降の施肥は紅葉の色上がりが悪くなるので避ける方が賢明です。
鉢植えの場合も地植えに準じますが、サイズが小さい盆栽風の鉢植えなどは液肥だけでも充分です。2000倍ほどに希釈したハイポネックスを数日おきに灌水代わりに与えてください。
なお、地植え・鉢植えともに肥料を与え過ぎると予想以上に枝が徒長してしまうので控えめを心掛けましょう。
カエデ(モミジ)の剪定
芯を止めずに放置しておくと、品種によっては20m近くまで育ってしまうので、早い段階から計画的に剪定していかないと大変な手間やコストがかかる事態となります。素人の管理が行き届くのは、せいぜい2m程度までなんじゃないかなと思います。
それ以上の高さになると、例えば、家屋に近接した形で植えてある場合には雨樋への落葉などが飛躍的に増えますし、脚立に上っての剪定なども素人には敷居が高いものがあります。
小ぶりでもカッコ良く庭で映えるように剪定するのがセンスの見せ所です。
樹形を整える本格的な剪定は、冬の落葉後に行うと樹液が止らず枯れることがあるので、落葉前か、芽出し前の2月下旬〜3月に行って下さい。基本的に落葉前に大規模な剪定を行い、春先に物凄い勢いで徒長する枝を剪定する段取りが良いでしょう。なお、生育期に剪定を行うと、切断した枝の直下から細い枝がたくさん出て来てしまって手に負えなくなるので御用心。
鉢植えの場合も同様に考えれば良いのですが、盆栽風の小さな鉢植えの場合には、3〜5月頃に「芽摘み」と言うテクニックが使えます。これは、春から伸びた新芽を根元の新葉を2枚残して真ん中の稚児芽を指やピンセットで摘み取る方法です。あまり成長し過ぎると節が伸びてしまうので、節間が短い内に芽摘みをすることがポイントです。
毎日のように新しい芽が伸びてきますから、伸びてきたものからこまめに芽摘みをしましょう。この場合も闇雲に摘み取るのでは無く、全体の樹形をデザインして作業を行う事が肝心です。
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カエデ(モミジ)の植え替えと増やし方
地植えの場合には植え替えは不要です。
鉢植えの場合には根の成長が早く根詰まりしやすいので、若木や小さいものは毎年植え替えをします。成木は2年に1回を基本にして下さい。特に盆栽風に仕立てようとする場合、モミジは八方に伸びた根張りも見所の1つとなるので、太くて長い根は短く切り浅い楕円鉢などに植えると見栄えがします。
増やし方は、前述したタネから増やす方法の他に、ヤマモミジ系の品種などは挿し木の成績が良いので、興味があれば試してみて下さい。
カエデ(モミジ)の病害虫
病気としては「うどんこ病」「すす病」に要注意。風通しを良くする事によって発生を予防します。
害虫としては「アブラムシ」と「テッポウムシ(ゴマダラカミキリ)」が問題となってきます。新芽や若い葉にアブラムシ類が発生します。また、幹をテッポウムシが食害し致命傷になることがあります。いずれも薬剤の散布で対処して下さい。
おわりに
庭木として、また、盆栽などの鉢植えとしても見栄えがして、栽培自体も面白いのでチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
意外と洋風の庭にワンポイントで置いてみるのも趣があるかもしれません。
以上、カエデ(モミジ)の育て方をまとめてみました。