赤くてかわいらしい果実、「さくらんぼ」は甘くて人気の果物です。高価で収穫後に傷みやすい果実は、家庭で育てるメリットが大きいです。
おいしい「さくらんぼ」を育成するのは非常に手間がかかるのですが、慣れれば繰り返しの手作業です。毎年の収穫が楽しみな果樹になります。
Contents
さくらんぼの栽培期間
サクランボは3月以降に苗木を植え付けて栽培します。
収穫時期は6月~7月で、十分に色づいたものから順に収穫していきます。
植え付け:3月以降
花の管理:3月中旬~4月下旬(人工授粉)
果実の管理:4月(摘果 袋がけ)
枝の管理:5月(摘心)12月~2月下旬(剪定)
さくらんぼの植え付け
栽培に適している地域は、開花の時期である春に遅い霜がなく、収穫の時期の夏に雨の少ない地域が適しています。12月~2月の厳冬期を避けて3月以降に植え付けを行います。
鉢植えでの栽培も行えるサクランボですが、根詰まりを防止する必要があります。1年おきに鉢土の1/3ほどを崩して植え替えるとよいでしょう。
結実まで3~5年ほどかかりますが、日照管理や雨対策もやりやすくおすすめの育て方ができます。
サクランボの定植適期
厳冬期を避けて3月の気候が落ち着いた頃(遅霜のない)に行います。苗木は12月頃から出回りますので、鉢植えなどで仮置きしておくか、植え付け直前に購入しましょう。
成長してしまえば対寒気温-15℃と寒さに強いサクランボです。産地も東北の山形県を始めに寒い地域の生産が盛んです。
- 元肥:油かす130g
- 追肥(4月):化成肥料40g
- 礼肥(7月):化成肥料30g
※定植の前からの肥料の目安です
礼肥は少なすぎると翌年の結実が悪く、多すぎると美しい紅葉色に成らないので注意が必要です。
元肥:油かす20g
追肥(4月):化成肥料10g
礼肥(7月):化成肥料8g
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さくらんぼの定植のポイント
サクランボは水に弱い果実です。収穫直前に水がかかると果実が水を吸ってしまい割れてしまいます。そこで、本業のサクランボ農家はハウス栽培を行っています。家庭栽培なら袋をかけるか、鉢植えで育てると防げます。
サクランボは受粉が大切なポイントです。1本でなく2本以上を近くに植えると受粉もスムーズにいきます。基本的には昆虫類が受粉をしてくれますが、結実が悪い場合は人工的に行いましょう。
サクランボの特性
品種間の相性に注意が必要です。遺伝的に相性の悪い品種は避けてください。開花時期が同じような「香夏錦(こうかにしき)と高砂(たかさご)」の組み合わせのようにすると結実がよくなります。
一方で、暖地桜桃(だんちおうとう)の開花時期は早いので受粉樹には向きません。暖地桜桃は同種で相性が良いので、1本又は同種の定植で問題ありません。
さくらんぼの水やりについて
果実に水がかかるのは控えてください。水を吸ってしまい割れてしまいます。そこで、水やりは土が乾いたら根元に向かってたっぷり与えてください。
さくらんぼの栽培管理は「人工授粉」から「摘心」までとても栽培に手のかかるサクランボですが、余計に手がかかる分、収穫の際には嬉しさも倍増です!
さくらんぼの人工授粉と摘果
結実が悪い年が続くようなら人工受粉が必要です。開花中の花のうち開花直後の花を使用します。花粉を出す葯(やく)が開いた直後は花粉が豊富です。
摘んだ花とは別の品種の花にこすり付けて受粉をさせていきます。次は摘む木を変えて、他の品種の木の花に受粉を行っていきます。
摘果は必ず行わなければならない作業ではありませんが、果実が付きすぎている部位は行います。特に形の悪いものは摘果して、その養分を他の果実に集中させていくとよいでしょう。
さくらんぼの袋がけ
必須の作業ではありませんが、庭に植える場合は果実が割れるのを防ぐので、行ってほしい作業です。袋がけは病害虫や鳥害を防ぎます。果実が色づく前に行いましょう。
「さくらんぼ」の専用の袋が無い場合は、市販のリンゴやナシの果実袋の代用でも問題ありません。
雨水や害虫が入り込まないように針金でしっかりと固定しましょう。全てに行うと大変なので、やはり摘果で育てる果実の数を管理したほうが良いです。
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さくらんぼの摘心
翌年以降に結実する枝の成長を止める作業です。生育初期に先端を摘み取ります。日当たりや風通しが良くなります。枝が上を向いていて伸びていく可能性の枝を摘心しましょう。
摘心することで枝の成長に浪費される養分が葉の付け根の芽に回り、花芽がつきやすくなります。摘心は翌年果実をならせたい枝のみに行います。
さくらんぼの剪定
とても重要な栽培のポイントとなるのが「剪定」です。枝葉の成長が早いので放っておくと大変な巨木となってしまい、養分も吸い取られて果実も美味しくなりません。天に向かって伸びる中心の枝を剪定します。上へ伸ばすのでなく横に拡がるようにしていきます。
不要な枝(交差枝)などを間引いて風通しや日照を確保しましょう。病害虫の予防や果実の成長を促進します。長く使用した枝葉は枯れてしまいます。根元から切り落としましょう。
残った長い枝の先端を1/4~1/5に切り詰めて、若い枝の成長を促進します。剪定は葉が落葉した12月~2月に行うとやりやすいです。
枝を横向きにしましょう。垂直では結実しにくくなります。地面に杭を打ち込んでヒモを使って、枝が横を向くように引っ張ります。
さくらんぼの病害虫について
炭素病
果実が深く窪んで黒色に変色します。周辺の葉が落葉することもあります。
対策としては、被害果は見つけ次第除去する。剪定を行い、日当たりと風通しを良くしましょう。
灰星病
5月~7月の収穫直前に発生する嫌な病気です。果実に灰色の斑点が発生します。その後果実全体が灰色に変色しミイラ化してしまいます。
対策は被害果は見つけ次第除去することです。ミイラ化した果実を残すと翌年まで影響します。
オウトウショウジョウバエ
6月~7月に発生件数が増加します。成熟した果実に小さなハエの成虫が産卵します。ウジ虫状の幼虫がふ化して果実を食い荒らします。
被害果は見つけ次第除去します。残しておくと産卵場となり被害が拡大してしまいます。他の果実に被害拡大で、手の付けられない状態になります。
袋がけが病害虫対策に効果があるので、鉢植えでも行った方がよいと思います。
さくらんぼの収穫時期と収穫方法
開花後40日~50日前後の5月下旬~7月中旬が目安となります。果実袋をかけている場合は、はずして確認してみましょう。全体が色づいた果実だけを収穫しましょう。日照が足りないと美味しくなりません。
収穫が早いと酸味が強く、遅いと果実が柔らかくなって食感が楽しめません。せっかく育てた「さくらんぼ」なので、何回かに分けての収穫と割り切って丁寧に育成管理をしましょう。
収穫方法は果実をハサミで切り取る収穫方法で、枝を傷つけないよう果梗(かこう・果実の軸 )を手で軽く支え、上に持ち上げると簡単に収穫できます。
おわりに
さくらんぼの育て方について、定植の時期から収穫までご説明しましたがいかがでしたか?本当に手のかかるさくらんぼ栽培ですが、収穫の際に袋を開けた時の喜びは何事にも変えられません。初夏の直前に甘い果実を味わえる幸せでもあります。
枝葉の成長が早いので、剪定がポイントとなります。成長過ぎると枝の位置が高すぎて、受粉や剪定その他栽培管理や収穫が大変となります。苗もホームセンターや直売所で、12月頃から販売されています。手頃な金額で購入できるので気軽に育てられます。
難しい栽培でもありますが、1年間経験をすると、繰り返しの作業になりますので精神的な負担は軽減されます。高価で傷みやすい「さくらんぼ」を家庭で育てて、新鮮な状態で食してみませんか?