テッポウユリは見栄えが良く、強すぎない香りも魅力的で、切花の万能選手と言ったところでしょうか。
また、鉢づくりや花壇に利用しても、その清楚で堂々とした存在感が際立ちます。
今回は、そんなテッポウユリの栽培方法をまとめてみました。
Contents
テッポウユリの栽培時期と育成条件
栽培時期の表
- 日当たり:日なた
- 土壌酸度:中性
- 植えつけ:株間10cm以上
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植えつけ・発芽後の管理
植え付けまでの管理
球根の植えつけまでの管理ですが、乾燥に弱いので適度な湿度を保ったまま涼しい日陰で保管しておきます。乾燥させて保存するチューリップの球根などとは全く異なるので、勘違いして球根をダメにしない様にしましょう。
球根の植えつけの時期は上記の表の通りなのですが、ひとつ気をつけなければならないのは、あまり早い時期に植えない事です。
と言うのも、耐寒性のあるロゼット状態を過ぎ芽が大きく育った状態で冬越しすると、霜害により枯死してしまうので、球根が手に入ったからと言って、例えば9月などの早い時期に植えてはいけません。地域差もありますが、温暖地では11月下旬頃が植えつけの目安と言われています。
植え付けの方法
地植えの場合、30cm以上深く耕した場所に、球根の高さの3倍の深さに植えます。
テッポウユリの球根は、例えば、ヒヤシンスなどの様に球根の上からは葉が出るわけではなく、球根から出た芽の部分から「上根」が伸長し養分を吸収します。
この上根をしっかり張らせることが、ユリのよい花を咲かせるコツです。間違って浅く植えない様に注意しましょう。肥料は、球根の根張りの部分に、マグアンプKなどを土とよく混ぜておきます。
ユリを育てるときのポイント
また、球根の下から出る下根は秋の間に伸長がはじまり、草丈が高くなる株をしっかり支える大切な役目を持っています。さらに、古い球根の上にできる新しい球根が、表土に露出してしまわないように、土中へと引っぱり込む役割を果たします。
地表部に大きな成長が見られない冬の間も乾かさないよう注意しましょう。これは、鹿の子ゆり、すかしゆり、カサブランカなどにも共通する特徴なので、取り敢えず、ユリの球根は深植えにすると覚えておきましょう。
鉢植えの場合も、同様に充分な深さを確保するために7号以上の大きく深めの鉢を使います。
土の準備とマルチング
用土は市販の園芸用、球根用などの一般的な物で大丈夫です。鉢植えの場合は、特に冬期の乾燥に注意して下さい。
厳冬期には、地域によっては敷き藁などによるマルチングにより、寒さ対策を行う方が良いでしょう。
敷き藁について
また、降雨や散水などによる地表部からの泥水が跳ね返りが病害の発生を助長しますので、必ず地表部は敷き藁などで被うようにしましょう。
敷き藁は、夏期には土壌水分の逸失を防ぎ、地温の上昇を抑える働きをします。ただし、敷き藁自体が汚い状態のまま放置してはなりません。病害虫の巣になるだけですから…。年に2回程度は交換して下さい。
支柱の設置
草丈が100cm〜120cm程度になり、花のボリュームもあるため、ある程度成長した段階で支柱を設置します。支柱設置の際には、球根を傷つけないように注意しましょう。
テッポウユリは、基本的に日なたが好きな植物ですが、あまり地温が高温になるのを嫌うので、鉢植えの場合には暑くなる5月頃から、適宜、鉢の部分に直射日光が当たらないように移動させるなどして管理します。
夏場の日盛りなどは、少し日を遮るだけでも、鉢の中の温度は劇的に変化します。
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テッポウユリの水やりについて
土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをしましょう。特に初夏から夏にかけての生育期から開花期は、とても水を欲しがります。
地植えの場合は、週に1回はホースで周囲に水たまりができるくらい大量にやって下さい。水で地中の温度を下げるイメージです。
- 鉢植えの場合には、より頻繁な水やりが必要となります。
- 開花期〜夏場は、朝夕にたっぷりと水やりしましょう。
- 葉や蕾がしおれないように、しっかり管理をしましょう。
肥料
追肥は芽が出た時期から花後まで緩効性化成肥料などを置き肥します。
また、葉が緑色の間は月に2〜3回くらいの割合で液肥を水やり代わりに施します。
病害虫
葉枯病
病気で一番多いのは梅雨期に発生する葉枯病です。
風通しの悪い場所では多発し、葉や蕾に白っぽい小さな斑点が現れ、やがて茶色に変色して広がり、株が枯れます。
降雨などによる泥のはね返りが葉に付着しないように、マルチングなどを施し、園芸用の殺菌剤をかけて葉に薬の皮膜をつくって防除します。
ウイルス病
ウイルス病は、葉に緑色の濃淡の筋が現れたり、葉が縮れたり株が萎縮したりします。最も厄介な病気で、発病した株は抜き取り処分します。
実はテッポウユリの球根は、ほぼ全てがウイルス病に感染しているのですが、正しく管理すれば発症しません。
アブラムシに注意!
そのウイルス病の発症のトリガーとなるのがアブラムシです。ウィルスに冒された他のユリを吸汁したアブラムシが吸汁する事により発症します。
従って、アブラムシを寄せつけない事が最大の防御法です。蕾が着く前から浸透移行性のオルトラン粒剤を地表部に撒いて予防します。(また、アブラムシはてんとう虫が天敵ですので、見つけたら大事にしましょうね。)
それでもアブラムシがついてしまったら、見つけ次第、園芸用のエアゾール式殺虫剤をかけて防除します。不幸にしてアブラムシが蔓延してしまったならば、もう白旗を上げるしかありません。
ユリクビナガハムシ
また、ユリクビナガハムシも要注意です。5月〜6月にかけて発生し、もの凄い勢いで百合の葉や蕾を食べてしまいます。
葉を食べられた形跡があり、点々と小さな糞が落ちていれば、かなりの高確率で葉の裏に幼虫が潜んでいます。
幼虫は自らの排泄物を背負って身を隠しているので発見し次第補殺して、念のためスミチオンなどを散布しておきます。
花が咲いた後の手入れ
切り花として楽しむのか?そのまま愛でるのか?楽しみ方によって違ってきます。
切り花にする場合
茎の途中から葉を残して切ると、球根は肥大しませんが、翌年も花を咲かせることができます。
花壇や鉢植えのままで楽しんだ場合
花が咲き終わったら、雌蕊の子房部分を欠き取りタネをつけないようにします。葉には手をつけず、そのまま放置です。
その後は、水やりや肥料などを欠かさずに管理すること約4ヶ月、きっと球根は立派に肥大していることでしょう。
10月中旬以降、枯れ葉が多くなりはじめたら地上部を切除します。その際、地表部に残った枯れ葉などのゴミは徹底的に除去しましょう。これは、翌年の病気の発生リスクを下げるためには重要な事ですので、必ずおこなうようにしましょう。
地植えの場合は、3年程度は植え替えしなくても大丈夫なので、ここで一旦作業は終了ですが、水やりは忘れないで下さいね。掘り上げる場合は下根を残し、湿ったおがくずなどに入れ、乾燥しないように保管します。
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植え替え
テッポウユリに限らず、ユリ関係は連作障害を起こします。
自然界において、野生のユリは種子でも繁殖するので、生えている場所を少しずつ移動しながら生き続けるわけですが、球根に頼る栽培種は人為的に移動させてやらなければなりません。
前述した通り、地植えの場合は、一応3年程度は同一場所でも大丈夫とされていますが、鉢植えの場合には毎年の植え替えが必要と言われています。植え替えの際には、培養土を総取替し鉢も念入りに洗浄して、できる範囲で清浄な状態にリセットします。
シンテッポウユリ(新鉄砲百合)について
シンテッポウユリとは?
切り花として市販されているテッポウユリも、こんな作り方をしているのでしょうか?
実は、最近では種から栽培する「シンテッポウユリ」の栽培が盛んになっています。種から栽培することで、神経を使う球根の管理をせずに済むというメリットはかなり大きなものです。
シンテッポウユリは、テッポウユリとタカサゴユリの交配種です。シンテッポウユリは繁殖力が旺盛で、あまり手をかけなくても良く育つため、ユリ栽培初心者にもお勧めです。
通常、ユリはタネから育てると開花まで3〜4年かかるものですが、シンテッポウユリは、種をまいてから7〜8ヶ月で開花します。そのため、1月に種をまくと、お盆や秋のお彼岸の頃に開花するため重宝します。
シンテッポウユリの育て方
育苗箱やセルトレイに市販の播種育苗用土を入れ、種がやっと隠れるくらい極薄く覆土します。発芽が揃うまでの約1ヶ月間は、乾燥させないよう注意します。種まき1ヶ月後から、週に1度のペースで液肥を施します。
芽が伸びてきたら日当たりの良い場所に置き、葉が触れ合わないように間引きながら冬越しをし、4月頃本葉3〜4枚の頃に定植します。寒冷地では、遅霜の心配がなくなる5月上旬頃を待って定植すると良いでしょう。
その後の管理は、テッポウユリに準じて行って下さい。
おわりに
今回は、テッポウユリの育て方について、まとめてみましたが、いかがでしたか?
球根の管理や、植えつけ方法、病害虫対策など、少しハードルが高いかな…なんて思うところがあったかも知れませんが、実際にやってみると意外と簡単にできてしまうものです。
ぜひ、立派なテッポウユリを育てて下さいね。