鮮やかな朱色のちょうちん袋が可愛らしいホオズキ(鬼灯)は、夏の風物詩です。
仏花としても親しまれている植物で、お盆の頃色づくその姿にノスタルジーを感じる人も多いのではないでしょうか。
鉢植えで売られていることも多いホオズキですが、じつは育てやすい多年性の植物。いったんお庭に植えつければ、夏が来るごとに目を楽しませてくれますよ。
Contents
ホオズキの栽培時期と育成条件
- 株の植え付け:3月~4月
- タネまき:4月~5月
- 開花時期:6月~7月
- 鑑賞時期:8月~9月
※鑑賞時期はちょうちん部分=果実を包む「がく」がオレンジに色づく時期です。
※タネから育てた場合、植え付け後に実がなるようになるまでは2年ほどかかります。
- 日当り:日なた
- 土壌酸度:中性~弱酸性
- 植え付け:地植えなら株間20~30cm・鉢植えなら15cm鉢に1本
ホオズキの育苗
ホオズキは株分けで増やすことのできる多年草です。
そのため既に何年か越している株があれば、そこから分割した株を植えつけるのが簡単なのですが、ここではタネから育てる方法もご紹介したいと思います。
ちなみにホオズキの種と鉢植えは販売されていますが、1年目の苗はなかなか見つからないというのが実情のようです。
- 発芽温度が20℃以上なので、種まきの時期は4月中旬~5月中旬ころになります。育苗箱や平皿に培養土、ないし種まき用土を準備します。
- 特に穴や筋などはつけず、5cm間隔程度で2、3粒ずつ点まきします。その上から土ふるいなどを使ってごく薄く土をかけます。
- 発芽までは薄日の当たる、風通しのいい場所で土が乾燥しないように管理します。発芽するまでは20日ほどかかります。
- 本葉が2~3枚の頃、込み合っているようであれば勢いの弱い芽を間引いておきます。
- 本葉4~5枚になったら植木鉢や庭に植えつけることができます。
ホオズキの栽培環境
苗を育てるにしても、株分け株を用意するにしても植え付け前にはホオズキがよく育つように環境を整えておきましょう。
下記に、特に注意が必要な栽培環境をまとめました。
育てる場所
ホオズキの栽培には日当りと水はけの良い場所が適しています。
また、ホオズキは連作障害が出やすいナス科の植物ですので、昨年・一昨年までトマトやナスを育てていた場所に植えるのは避けましょう。
鉢植えの場合も、年間を通して日当りのいい場所に置くようにしましょう。
ホオズキの土作り
鉢植えの場合は、園芸用の培養土を使えば問題はありません。自分で用意する場合は赤玉土:腐葉土:川砂を5:3:2の割合で混ぜ合わせたものを使います。
地植えであればまずは酸度調整のために苦土石灰を混ぜ込みます。これは植え付けの2.3週間前には済ませておきましょう。
石灰での中和が済んだら、植え付け1~2週間前には肥料を混ぜ込んでなじませておきます。完熟堆肥と化成肥料、水はけが悪いようならば腐葉土も一緒にすき込むようにしましょう。
1㎡あたりの目安としては完熟堆肥5㎏、腐葉土3㎏、化成肥料50gとなります。
【ハイパワー苦土石灰】
定植のポイント
苗から育てている場合、本葉が4~5枚のときに定植を行います。地植えの場合、畝は立てなくとも大丈夫です。苗と苗の間を20cm~30cm程度あけるようにし、根が収まる程度の穴を掘ってから植えつけましょう。植え付け後は乾燥しないようにワラなどで覆うのもいい方法です。
後述する株分けの方法で準備した株を植えつける場合も、植え付け間隔に大きな違いはありません。株全体が埋まる程度の深さに穴を掘り、その中に根株を置いたら土をかぶせていきます。
鉢植えの場合は4~5本の株を一緒に植え付け、芽が出てきてから込み合ったところを切り取るようにします。
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ホオズキの栽培管理
水やり
ホオズキは日なたを好む植物ですが、夏場の乾燥を嫌います。土の表面が乾いていたら十分に水を与えるようにしましょう。乾燥防止のため敷きワラやマルチシートをかぶせてもOKです。
鉢植えの場合は水切れを起こしやすいので、極端に直射日光が強い場所は避けたほうが良いでしょう。暗すぎるところでなければ半日陰程度でも十分に育ちます。
追肥(おいごえ)
土作りの段階で元肥をキチンと入れていれば追肥をしなくとも育ちます。しかし、実を多くつけたいならば追肥用に緩効性の化成肥料を用意しましょう。
与える時期は5月~7月の開花の時期までの間で、固形肥料なら1ヶ月半に1回、液体肥料なら2週間に1回程度のペースが目安となります。
剪定
ホオズキはわき芽が多く、そのまま伸ばし放題にすると見た目にもモッサリと混み入った感じになってしまい実の数も少なくなってしまいます。
そうならないよう、一週間に一度くらいのペースでわき芽かきを行い、ついでに余分な葉も落とすようにしましょう。
わき芽かきは最初の花が咲いた頃、6月半ばくらいから始めます。伸ばしたくないわき芽を手で摘み取るか、ハサミなどで切り落としていきます。茎や大きい枝にダメージを与えないよう気をつけましょう。
6月下旬から7月にかけ、花芽が10個前後ついたら茎の先端、頭頂部を切り取って生育を抑制し実に栄養が行くようにします。
倒伏対策
ホオズキは品種によっては草丈がかなり高くなります。そうなると倒伏の危険がでてきますので、背が伸びる5~7月には支柱を立てておいたほうが良いでしょう。
園芸用の支柱を立てて麻ヒモなどでゆるく固定するか、地植えならばフラワーネットを水平に張るのもいい方法です。
冬越え
冬になると地上部分は枯れてしまいますが、完全に枯れてしまうまでは折り取ったりせずに放置するようにしましょう。
完全に枯れてしまったら地際で刈り取り、地下茎は土の中で冬を越させるようにします。
寒い地域では凍結防止に敷きワラをしておくと良いでしょう。
ホオズキの株分け
上で何度かお伝えしたとおり、ホオズキは「株分け」で増やすことが可能です。株分けとは宿根草の地下茎を分割し、その分割した株から新しい芽を育てる方法です。
ホオズキの株分けは3月~4月に、以下の手順で行います。
- 地下茎を掘り出す(鉢植えの場合は鉢から取り出す)。
- 地下茎をほぐし、一本を3~4節ごとに切り取る(20~30cmくらい)。
- 畑や植木鉢へ植えつける。
ホオズキの地下茎は成長が旺盛なため、地植えにすると他の植物のテリトリーにまで伸びていく可能性があります。
これを予防したい場合は地中に板などで仕切りを作るなどの対策をしてください。
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ホオズキがかかりやすい病気
白絹病(しらきぬびょう)
症状:カビ菌による伝染性の病気で、発病すると感染した株の根元から周りの土にかけて光沢のある白い糸状の菌におおわれます。これを放置すると茎や枝がしおれて腐ってしまいます。
原因と対策:25℃以上の高温と多湿による原因菌の繁殖により引き起こされます。発病してしまった場合はその地下茎ごと抜き取って、畑の外で焼却処分するしかありません。また、原因菌は土の中で数年生息するとされています。予防のためには殺菌剤を用いて土壌を殺菌しておくのが最も確実です。
ホオズキの害虫対策
カメムシ
カメムシはホオズキにとっての天敵といえるほど、ホオズキによく発生します。他の植物と同様、汁を吸われることで弱ってしまいます。また、悪臭も放つので単純に発生して欲しくない害虫です。
対策:成虫は見つけ次第捕殺します。薬剤ではベニカ水溶剤が効果的ですが、一度の散布で完全に駆除することは難しいので発生状況に合わせて繰りかえし使用します。
おわりに
色づいたホオズキには自然と目を引き寄せられますが、ホオズキは鑑賞用するだけでなく子供の遊びにも使われていました。
ホオズキの実を「ギュッ、ギュッ」と鳴らす遊びは江戸時代の昔からあったということ。ずっと引き継がれてきた遊びを子供たちに伝えるためホオズキを育てるというのもありかもしれません。